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収納ってなんだろう!  作者: 焼納豆
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(138)ミルロンとエルロン②

 ミルロンが大森林に逃げ込むかなり前、王国シャハのサミット国王の護衛であるネラの機転によって仕留めるべき相手であるスロノや【黄金】が大森林に向かったと思わされていたエルロンは、大森林に侵入していた。


 嫌でも不気味な気配は掴んでいるのだが、スロノ程度(・・)が入れる場所に自分が入れないわけがないとプライドが邪魔をして正確な判断が出来ていないまま、森の奥に入り込む。


 侵入直後は攻撃を受ける気配だけは感じる事はなかったのだが、スロノや【黄金】を探しに奥に進むにつれて明確な殺気を感じている。


 既にグローブと棒まで装備して万全な迎撃態勢を整えつつも、殺気が多方面から来ているので流石に身に危険を感じて開けた場所を目指す事にした。


 開けているからと言って敵が視認できる保証はどこにもないのだが、森の中では動きに多少なりとも制約が出るので不利な部分を少しでも排除しようとしたのだが、暫く周囲を確認してもそのような場所が見当たらず、短時間で目的の場所を探し出す事は不可能だと判断した。


 次にできる行動と言えば二つの選択肢があり、撤退するか自らの手で開けた場所をつくるかだ。


 流石のエルロンも一瞬撤退が頭をよぎったのだが、スロノや【黄金】の子バカにする様な笑い声が聞こえた気がして選択肢から外れていた。


 冷静であれば奥に侵入した時点で周囲の景色に変化が全くなく、どの方向に向かえば森から脱出できるのか分からなくなっている事に気が付いたはずだが・・・エルロンは次の選択肢を即実行していた。


 次の選択肢と言えば自らの力を使って広い空間を作り出す事であり、棒を勢いよく振り回して暴風を巻き起こすと、周囲の木々を吹き飛ばす。


「これで良いだろ。いつでも来やがれ!」


 正直自分の希望した範囲よりもはるかに小さい範囲の木だけしか吹き飛ばす事が出来なかったのだが、今は空から光が地上に差し込むだけの空間が出来ている。


 背後や地中、空も気を付ける必要があるのは理解しつつも、森の中で戦闘を行うよりもはるかにましだと思い気合を入れ直していたエルロンだが、獰猛な笑みは一瞬で消えて眉をしかめる。


 何故か吹き飛ばしたはずの場所から木々があり得ない勢いで成長し、あっという間にエルロンの手によって破壊されたはずの環境が復元されてしまった。


「何だこりゃ!ふざけやがって!!」


 今起きた現象に納得できないながらも、同じ事を繰り返しても自分の体力が奪われるだけだと理解したエルロンはここで初めて明確に逃走に意識を向ける。


 流石にこのような場所で雑魚と認定している【黄金】やスロノが生存できているわけがないので、物言わぬ相手を探し出しても仕方がないと割り切ったのだが、当然こちらも時すでに遅く、自らが移動した事による痕跡も完全に修復されてしまったのか、自分の位置すら把握できない。


「こうなりゃー、これしかねーだろ?」


 一気に近くの木に登り、そこから飛び上がって周囲を確認しようとしたのだが・・・木の頂部近くには何故か枝が無く足場が無いので、エルロンが全力で飛び上がっても森の端部が見えるのかは良く分からない。


 更に今更ながら気が付いたが空には飛翔種の魔獣が相当数飛び回っており、数体であれば対処できる自信はあるが、あれだけの数の魔獣をある意味無防備状態で処置するのは不可能だと悟ってしまう。


「・・・ヤベーな」


 主に荒れ狂う苛烈な性格とその行動によって着いた二つ名、“暴風エルロン”ですら身の危険をヒシヒシと感じているこの森。


「持って・・・一月行けるか?」


 一月も生存できると判断できる所は流石に元Sランカーだが、逆に言えば頂点と言える存在でも一月が上限とも言える。


 簡単に諦める訳には行かないので、動ける内に目印など無いまま体の感覚だけを頼りに一つの方向、これも特段何かを目指しているわけではないが、途中で方向を変えずに突き進めばやがては森から出られるとの思いから只管進む事にした。


 早速元来た道・・・の様に感じる方向に進むのだが、勿論何処に向かっているのかなど分かる訳も無く只管歩いている。


 流石に身体能力が上昇する能力持ちなのか、数時間道なき道を歩き続けても一切疲労の色を見せないのだが、周囲からの殺気は増すばかり。


「これなら何とかなるかよ?」

 

 今の今迄直接的な攻撃を一切受けていないので、殺気は増えても襲われなければ何とかなる可能性が高いとエルロンは真っすぐ進む。


 当然日の光などないので時間感覚も無いのだが、体内時計で休息が必要と思った際に周囲を警戒しつつ座って休む。


 何かあれば即反応できる程度の睡眠なので完全に疲労が取れるわけではないが、この程度はSランカーに至るまでに何度も経験しているので特段問題とは思わない。


「こんな時にミルロンが居りゃー、助かるんだがな」


 <操作>で森に生息する魔獣を支配下に置けば方向も把握できるはずだし、休息中には見張りをさせる事も出来るので相当楽が出来ると愚痴を零しながら休んでいる。


 移動中に水や果物が発見できたために食料を心配する必要が無かったので、このまま行けば脱出できると強く(・・)思い始めた頃・・・体感で数週間が経過した頃に初めて魔獣からの襲撃を受けた。


「今更来やがって、すり潰してやるぜ!」


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