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収納ってなんだろう!  作者: 焼納豆
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(129)立場の変化

 ネラも元Sランカー暴風エルロンや弟であるミルロンの存在については把握しており、兄弟揃って危険な思想と実力の持ち主であるとも理解していた。


 直近で調査していた為にあまり詳細の情報を得ていないミルロンの話が出たので、事情聴取ついでに敵になる可能性が高い存在について詳しく聞く事にしている。


「では、ミルロンからの依頼でソルベルド殿を襲撃したとの事ですが、ミルロンとは暴風エルロンの弟と言う事で良いですね?」


「そうだ。その男は俺の知る限りでは<操作>Sを持っている。ひょっとしたら既にアンタ達はその情報を持っている為に、魔獣や獣の視線にも対応しつつ移動していたのではないか?」


「流石ですね。少し前に明らかに<操作>の影響下にある飛翔種と接触したエルロンを監視しておりましたので、その可能性が高いと思い行動していました」


 ネラは目の前の存在がこの状況でもしっかりと周囲の状況を把握できている事に対して素直に感心し、称賛している。


 エックスは今更この程度で称賛されても何とも思わないのだが、ついでとばかりにこの短い時間で考えていた結論を告げる。


「あの動きであれば警戒しているのは明らかだからな。俺が察するに、アンタ達はソルベルドの側に立っていながらも王国バルドとは直接的な関係はない。となると、あまり公にはなっていないが国家重鎮が友好関係にある王国シャハ所属か?」


「・・・そこは御想像にお任せしますよ」


 立場上所属までは自分から明かすわけにはいかないので、肯定も否定もしないネラ。


「そうか。まぁ、あの国(王国シャハ)は比較的他種族が生きやすい国だからな。俺でも真面に歩ける可能性があったのかもしれないな」


 種族差別の激しい国で必死に生き延びたエックスなので、願望として周囲の環境が良い国であればここまで拗れる事はなかったと本音を漏らしながら、フードをとる。


 人族ではあり得ない耳が頭上に存在し、漆黒と言っても良い色の目と同じ色ながらも短く綺麗に切りそろえた顔が露わになる。


「女性の方でしたか。失礼しました、こちらをどうぞ」


 配下の者達は警戒の為に立っているが、ネラとエックスは互いが向き合った位置で地面に直接座って話をしており、実はエックスが獣人と把握していたネラは顔が見えた際に女性だと理解して懐から布を取り出すと、その上に座るように優しく勧める。


 今までの人生でこのような扱いを受けた事があるはずも無く、獣人族と明かして尚全く態度や表情に変化が無いネラに驚きながら、何故か少しぎくしゃくしながら座り直す。


 この大陸では人族の割合が極めて多く、獣人族が生きるには王国バルドを始めとした少数の獣人族国家か、王国シャハの様に種族差別が比較的無い国にいない限りは苛烈な環境で生活する事になる。


 これは大陸共通の認識なので、獣人族と理解しただけで相当過酷な環境で生き抜いてきたのだろうと判断し、その後は更に食事やら飲み物やらを勧めながらまるでお茶会の様に話が進む。


 一部世間話を含めて会話は続くのだが、ネラは任務を忘れていないので所々で必要な情報を得るための質問を混ぜ込んでおり、目の前の獣人族の女性当人の情報も得る事が出来ている。


「成程。お名前はエックスと名乗っているだけで、本名は分からないのですね。状況から表の存在に思いがあるのは理解できますが、表は表で色々な悩みや苦労があるのですよ?」


「あのソルベルドも?そうは見えないけど」


 相当打ち解けた上に素顔を晒して性別も明らかになっているので、今は素の声で話しているエックス。


「う・・・確かに今のソルベルド殿には私も少々思う所がありますが、あの状況ならではの苦労がある・・・はずです」


 お花畑満開のソルベルドを確認しているネラなので、苦悩や苦労があるのか疑わしいと思わざるを得ない事から曖昧な返事しかできない。


「でも、羨ましい。隠れる事なく幸せになれて・・・誰かの為に必死で行動できる。それだけで恵まれている」


 改めて自分と比較してしまったのか、落ち込むエックスをみてネラはとある覚悟を決める。


「エックス殿、今一度確認します。今の貴方を縛る制約や契約は存在しない。更に主従関係にある存在も無い」


「そうよ。むしろミルロンにこき使われていた分、お返ししてやりたいくらいだわ」


「結構です。その上で、貴方の能力は<隠密>S。これも事実で良いですね?」


 何故再度このような確認をされるのか分からないエックスは、不思議そうな顔をしながらコクリと頷く。


「貴方の処遇は私達の主に一任したいと思いますが、今お話を伺った限りでは悪いようにはなりませんよ。ですが、我々はあと数日王国バルド周辺で警戒する必要がありますので、大人しくしていただけると助かります」


「拘束はしないの?」


 通常であれば捕縛の上行動を厳しく制限させるのだが、その素振りが無い事に訝しんでいる。


 エックスの問いに優しい笑顔だけを向けると、ネラは立ち上がり再び警戒していた位置・・・王国バルドに近接するように移動を初め、配下の者もエックスの動向を多少気にしつつも行動に制限をかける様子も無く移動する。


 何故ここまで敵対する可能性が捨てきれない存在を信用して好きにさせているのか、今までの経験から全く理解できないながらも悪い気がしているわけではないので、エックスも改めてフードを被ってネラ達と行動を共にした。


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