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収納ってなんだろう!  作者: 焼納豆
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(125)踊らされた事実

 元Sランカーのエルロンですら懇意にしており、そこから得られる情報は値千金だと思われている情報屋がテョレ町にいるのだが、実はその情報屋はテョレ町を管轄している王国シャハのサミット国王の手の者だ。


 いくら凄腕の情報屋であったとしても一個人の情報を即座に掴んで開示できる実力がある事に何かしらの疑いを持つべきなのだが、エルロンは情報が得られればそれで良く、仮に自らの行動に対して障害になるのであれば消せば良いと考えていた。


 この情報屋に扮している国王と王妃の護衛、厳密に言えば王妃の配下なのだが、エルロンからスロノの所在に関して聞かれた際に高い確率で王国バルドに向かっていると知っているので、信頼関係を維持しておくためにもその旨正直に伝えており、その後サミット国王の判断に従い必要に応じて対処すれば良いと認識している。


 全ての情報を報告した際、サミット国王からは祝い事に水を差す行動は止めるように指示を受けていたので、王妃の了解を取った後に情報屋としてテョレ町を拠点に活動している配下の一部を引き連れてエルロンを追っている。


 配下もサミット国王に忠誠を誓っている存在であるのだが、実力的には残念ながらこの男には及ばない。


 周囲に気が付かれない様に慎重かつ高速で移動をしており、やがて配下の者から報告が来る。


「ネラ隊長。間もなく対象の警戒範囲に入ります」


「散会してくだ・・・いいえ、少し待機をお願いします」


 エルロンの警戒範囲に入ると明確に告げているのだが、逆に言えばエルロン以上に周囲の気配を正確につかめる実力者であると言える。


 エルロンは<闘術>Sであり、ネラと呼ばれた一行は全員がレベルは異なるが<隠密>を持っているので、探索範囲はそもそもの能力の絡みもあって異常に広い。


 <隠密>Sを持つ存在と言えば、全く公にはなっていないがミルロンと協力関係にあるエックスと名乗る存在が上げられるが、公になっているランカーは存在していない。


 通常の流れであれば散開して多方面からエルロンを監視しつつ作戦を実行するのだが、この中で最も周囲への探索範囲が広く精度も高いネラが停止を命ずる。


 間もなく危険なエリアに侵入する直前とも言えるので、隊長の真意を訪ねて余計な対応に時間を取られないようにしたのか、配下の誰もが何も言わずに気配を消して次なる指示を待っている。


「厄介ですね」


 配下に聞こえた声は指示ではなかった為、ネラが見ている方向を全員が確認すると・・・非常に遠くを野生の獣や魔獣ではあり得ない状態で動いている様子が確認された。


 まるで情報を伝達している様に、とある飛翔種が来るのを一カ所で停滞して待ち続け、接触直後再び次の位置にいる飛翔種に向けて全力で飛翔し、情報を伝達しているかのようだ。


 非常に遠くから視認できる能力があるからわかる状況だが、どう考えても<操作>の支配下にある魔獣か獣が限界近い速度で情報伝達しているようにしか見えず、その目的地が既に補足しているエルロンである可能性が高い事も理解している。


 誰しもが全てを理解した上で、ネラからの指示を待っている。


「恐らくですが、陰のソルベルドが生存していた事を伝達しているのでしょうが・・・正確な所は分かりませんね。ですが、あの動きはエルロンの弟のミルロンによる操作である可能性は高いでしょう。そのつもりで動く必要があります」


 ネラはエルロンがソルベルド死亡と言う誤った情報を持ち続けていた事を知っているのだが、今この場で伝達されている情報がその訂正の可能性は高いと思いつつも断定する術はなく、エルロンの行動が変化した場合に備える。


「脳筋故に、どの様な行動を起こすのかがわかりませんからね。各自予定よりも距離をとって包囲」


 突然とある方向に突進された場合にも対応できるように、何時も以上に距離を開けて追跡・監視するように指示を出したネラは、直後に姿が消えると危険な相手に近接すべく単独で行動を始めた。


 飛翔種からの情報は暗号なのか普通の手紙なのか、何かを渡しているようには見えたが具体的な内容までは判別出来なかったので、直接その目で確認し、あわよくば情報も得ようと目論んでいる。


 配下の者達も飛翔種からの監視を受けない様に慎重に行動しており、一応能力の<隠密>を使用しつつも野生の勘も侮れない事から動きはいつもに比べると遅い。


「あぁ?」


 やがて一体の飛翔種がエルロンの元に到着すると、エルロンは嘴に咥えていた小さな球を握り潰して紙を取り出し読み進め、弟のミルロンから得た情報に対して露骨に不機嫌な表情になる。


 残念ながらネラも非常に慎重に行動していた為に紙に書かれた内容を把握できる距離には到達できなかったのだが、伝達された情報はエルロンの態度を見てソルベルドの一件だろうと判断した。


 こうなると移動速度を上げてスロノが王国バルドに到着する前に仕掛けるのか、逆にスロノを無視して王国バルドに向かってソルベルドと対峙するのか分からないので、慎重に次の動きを観察している。


「あのクソ野郎、生きていやがったか。これで楽しみが二つに増えたわけだな?良いじゃねーのよ!先ずはスロノを始末した後にデザートでソルベルド。楽しみだぜ!」


 敵が増える事を把握した上で露骨に歓喜しているので、やはり自分には理解できない脳を持っていると思いつつ、この言動から当初の想定通りスロノを的にかけると理解したので、新たな作戦を急遽実行する事にしたネラ。


 当初の作戦は一部の犠牲を覚悟のうえで直接的に配下の者と共にエルロンを攻撃する予定だったのだが、今の状況であれば新たな策が効果的だと即行動に移す。


 やがて聞こえてきたのは、不満そうなエルロンの声。


「あぁ?スロノと【黄金】の野郎、大森林に向かっただぁ?」


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