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収納ってなんだろう!  作者: 焼納豆


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(114)王国バルドの騒動

 相変わらず朝も早くからミューを伴うハルナ王女に付き纏っているソルベルドだが、真剣に護衛しているのだけは間違いない。


 ふざけた話し方や態度ではあるが、視線だけは絶えず周囲の僅かな異変を見逃さない様に動いており、それでいて護衛対象のミューとハルナには警戒していると悟られないようにできているのだから、やはり実力は相当だ。


 惜しむらくは、この頃になると手持ちの価値ある品々は底を突いているので、ミューに対して贈り物が出来なくなっている事だろうか?


 だからと言ってミューやハルナの態度が変わる訳も無く、当初は贈り物が出来ないと謝罪しているソルベルドを必死で慰めていたりする。


 すっかり関係性が良くなっているのだが、ある日王国バルドに在るギルドの使いがソルベルドの元に来て、エルロンがテョレ町に侵入しており、恐らく狙いはスロノで・・・同様に他のSランカーも狙われている可能性について通達があった。


「ちっ、あの時にしっかりと油断せずに仕留める事が出来んかったワイの責任やな」


 この国、この王宮の庭園でエルロンと対峙していた時の事を思い出し、不覚にも大ダメージとなる一撃を受けてしまった事を思い出したソルベルド。


「わかった。情報おおきに。何か聞かれたら、こっちは問題ないと伝えておいてや」


 一瞬剣呑な雰囲気が出てしまうがすぐに霧散し、何時もの雰囲気で使いの者にこう伝えて部屋から出ると、近くに待機しているミューとハルナ王女の元に小走りで向かって行く。


 今聞いた情報ではミルロンはスロノを狙う為に過去のパーティーメンバー迄拉致しているとの話だったので、過去の自分と同じく搦手を容赦なく使うのであれば、ミューやハルナも相当危険だと改めて気を引き締めているソルベルド。


「あのエルロンが・・・考えられんほど追い詰められているっちゅう事か?」


 ソルベルドの知識では、エルロンは直情型で策など講じるイメージが全くなかったので、冒険者資格剥奪の影響もあって趣旨替えでもしたのかと思っている。


「あっちは・・・【黄金】の補強も終わっとるはずやし、大丈夫やろ?」


 自らが謝罪の意味もあって提供した魔石があれば【黄金】男性陣の戦力は相当上昇する事を知っている上、リリエルやリューリュが紅一点のミランダに同様の道具を送っている事を知っているので、エルロン単体程度は対処できるだろうと意識をハルナとミューの護衛に完全に切り替える。


 補強済みであってもAランカー単体でエルロンに勝利できるとは思っておらず、四人の【黄金】とSランカーのスロノが力を合わせれば撃退は出来るだろうと判断していた結果だ。


 過去にスロノの魔術をその身に受けた経験があるソルベルドは、正直Sランカーに成っているとは言えスロノ単体ではエルロンに勝利する事は出来ないと確信しているのだが、仲間がいれば大丈夫だと、過去の自分では想像もできないような事を考えていると思いつつ護衛を始める。


 この日は特に何もなかったのだが、翌朝何やら肌で感じる雰囲気がいつもと大きく異なる事を敏感に察知したソルベルド。


 経験豊かなSランカーが持つ第六感と言っても良いのだが、過去にもこの雰囲気を感じ取って警戒して命が助かった経験がある事から、護衛を始めてから類を見ない程に警戒度を上げる。


 当然ハルナやミューに対して余裕の態度を見せるほどの余力はなくなるので、正直に事情を説明する。


「あのエルロンが事を起こそうとしている事は間違いないよって、今日は申し訳あらへんがこの部屋でワイと共に大人しくしとってんか?」


 これほど真剣な表情のソルベルドを・・・ある意味余裕のないソルベルドを見た事が無いので非常事態だと認識した二人は、黙ってその指示に従う。


 数時間後・・・部屋の外、王宮内部が相当にざわつき始めたので、二人の近くで自然体の姿勢で待機しているソルベルドは漆黒の槍をその手に顕現させる。


 扉が開いて見知った使用人が慌てた様子で部屋に入り、間髪入れずにざわついている原因を教えてくれた。


「皆様!東門で大量の獣やら魔獣やらの襲撃を受けております。現在ギルドと騎士で対応しておりますので、暫くこのお部屋でお待ちください!では、失礼します!!」


「ミュー様。私はこのような現象は初めて聞きましたが、ミュー様は同様の話を聞いた事がありますか?」


 この国に来てそう時間が経過していないソルベルド同様、ハルナも王宮では自由が無く命の危険があった為に逃亡していた経験を持つので、過去に王国バルドが襲撃を受けた事があるのかを聞いている。


 警戒しつつ、この騒動は何らかの陽動の可能性が高いと思っているソルベルドもミューの説明に耳を傾けている。


「ハルナ王女。私の知識では多少の襲撃はあったと記憶しておりますが・・・これほど慌てて対処しなくてはならない事態はなかったはずです」


 ミューの言葉を聞いて、やはり陽動だと思って行動すべきと判断したソルベルドだが、相変らず心が洗われるような素晴らしい声だな・・・と、一部どうでも良い事を考えられるほどの余裕も見せている。


 この騒動は、ミルロンが手配した刺客であるエックスがソルベルドを攻撃し易くするべく助力の意味もあって起こした事態であり、実はすでに王宮内部にエックスは侵入済み。


 かつてない国家の危機として認識されている今回の騒動なので、王宮内部はハチの巣をつつく大騒ぎになっており・・・通常状態でも難なく王宮に侵入できるほどの能力を持つエックスにとってみれば、この陽動のおかげで散歩でも行くレベルで容易に侵入を済ませており、今は慎重にソルベルドの気配を辿っている所だ。


 彼か彼女かは不明だが、このエックスと名乗る人物の能力は<隠密>Sであり、侵入、暗殺、情報収集に長けた能力で直接的な戦闘を行うような能力ではなく、何らかの事情でその姿を認識されてしまった場合にはその力の優位性は激減する。


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