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収納ってなんだろう!  作者: 焼納豆


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(107)獣人国家、王国バルド

「ミューはん、ミューはん、今日もえらい綺麗やわ!ハルナ王女もそう思うでっしゃろ?あの綺麗な朝日なんぞ比較にならんほどの後光が差しとるわ!朝から気分えぇわ~。最高の一日の始まりや!」


 ここは獣人国家である王国バルドの、王宮の一角。


 一般的に言われている事として獣人族は人族を嫌悪し、人族は獣人族を嫌悪しているのだが、【黄金】等一部の面々に関しては当てはまらず、その中に現役Sランカー“陰のソルベルド”改め自称“恋のソルベルド”も含まれる。


 ハルナ王女の近衛騎士になっているミューに一目惚れしたソルベルドは、外敵対策要員兼ミューの恋人〔になりたい〕として、王国バルドで活動している。


 活動と言っても以前の様に各種情報収集や冒険者としての活動は一切行っておらず、ミューの護衛、則ちハルナ王女の護衛を行う名目で朝も早くから異常に高いテンションを維持しながらミューに絡む。


「えっと、そうですね。ソルベルド様も今日もお元気そうで、良かったです。ね?ミュー様?」


「はい。いつも私達の為、国の為に尽力いただいている事、感謝致します!」


 今の(・・)ソルベルドの人柄を知って、毎日毎日歯が浮くような称賛を真剣に投げかけてくるので少々恥ずかしくなっているミューは、形式ばった答えをしてしまうが顔は真っ赤で、照れているのは丸わかりだ。


 ソルベルドの存在があるおかげでミューは防御に優れたアイテムである覆面をせずに毎日過ごしており、素顔を曝け出している。


 頭上の獣耳は激しく動いているので、少なくとも平常心ではない事だけは明らかだ。


「こちらこそや!ホンで、今日はこんなんをお二人に持って来たんや!」


 相当な数の国で活動していたソルベルドなので、王国バルドでお目にかかれないような品々も数多く持っている。


 残念ながら本人は<収納>の能力を持っているわけではなく、ある程度の物量を仕舞える道具によって手元に置いており、他の品々に至っては自らが購入している広大な土地に隠して保管している。


 今はミューの元を離れる訳には行かないので取りに行けないのだが、やがて何らかの方法で物資を持ってくる予定にしているソルベルド。


 【黄金】三人に対してお詫びの品として贈った魔石は手持ちに有ったので直ぐに送付できたのだが、実は毎日毎日同じようなセリフで貢物をしているので、間もなく手持ちの物資は尽きてしまう。


「今日はこれや!」


 ソルベルドが収納の道具から取り出したのは綺麗な花束二つであり、以前のソルベルドからすればあり得ない用途の品ではあるのだが、行商人に扮して行動をしていた際に手に入れていた貴重な品になる。


「実は、この花は燃やすと体と心を癒してくれる成分が出るんや。普通は燃やすと害にしかならんモンしか出ーへんのが一般的な考えやが、これだけは異なるんや!」


 世間一般常識とは大きく異なる内容なのだが、今のソルベルドであれば疑う要素は何一つないと思えるほどに信頼を勝ち得ているので、嬉しそうにハルナとミューが受け取り、その姿を見てソルベルドも幸せそうにしている。


「実は、今日は折り入ってミューはんにお願いがあるんや。その、何時でもミューはんを感じていたいさかい・・・いや!勘違いせんといて!ワイは変態やないで?」


 一人モジモジし一人慌てているソルベルドなので、何だか可笑しくなって自然と笑顔になるミューとハルナ王女。


「その・・・言いにくいわぁ~」


「えっと、ソルベルド様?私は少し離れますので、頑張ってくださいね?」


 幼いハルナ王女に気を利かせてもらった以上、今更感は否めないながらも体面を保つために思い切ってミューに向き合う。


「ミューはん。その・・・ミューはんが使っとった覆面やけど、ワイに貰えんやろか?アレが安全に関する道具なんは知っとるが・・・」


 過去にミューを攻撃してしまった際にちぎれた覆面の一部を後生大事に持っているソルベルドだが、ミューが使用した一切損傷の無い完全体の覆面をどうしても手に入れたい欲望が抑えきれない。


 ここだけ聞くとドン引きなのだが、実は邪な気持ちは一切なく神が与えたもうた極上の品とでも言うのか、崇める品として入手したいと思っているソルベルド。


 覆面が持っているあり得ない回復術に対して興味がない訳ではないが、それよりもミューが使って神々しさが増している覆面を、お守りとして常に持ち続けていたいのだ。


 ミューではこの覆面がどのように作成されたのかは知る由も無く、事情を知っているハルナ王女がスロノに同じ品を依頼したとしても、回復術を行使できるリリエルがスロノの近くにいないので同じ効果を持つ品を直ぐに入手する事は出来ない。


 ただ、安全に関する付与がなされている覆面とは理解しているので一瞬悩むのだが、良く考えれば今は安全が確保されているので覆面を装着していない事に思い至り、覆面以上に傍にいてくれるソルベルドを信用し、申し出を受ける。


「わかりました、こちらです。ソルベルド様が被ってはダメですよ?」


 少し冗談を言う余裕も出てきているミューは、嬉しさからか涙目になりながらフルフル震えているソルベルドの手を取って、優しく覆面を渡す。


「おおきに!ホンマおおきに!!」


 これが国家転覆まで行える力を持つと言われるSランカーと言っても誰も信用しないな・・・と漠然と思いつつ、遠目でこちらを見ているハルナ王女の嬉しそうな視線を感じて軽く一礼しているミュー。


「いや~、今日はこれ以上ない程最高の日や!」


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