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収納ってなんだろう!  作者: 焼納豆
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(102)議題

 明らかに冒険者の禁忌を侵しているエルロンは、今回の招集が自分の能力の確認だと判断して少々力が抜けている。


 同格が招集されたのはどう考えてもギルド側の安全担保としての戦力としか考えられず、同時にスロノと言う新たなSランカーが紹介されたので、用件はこれで終了だと偉そうな態度を崩さないまま寛ぐのだが、総代の言葉を聞いて鋭い目つきがより鋭くなる。


「これで新たなランカーとエルロンの登録能力の修正(・・)は終了したので、次の話しに移りたい。今後のギルドの運営、冒険者達への影響力、色々と考慮した結果、Sランカーとしての席は上限を設ける事にした。今迄は能力だけで判断していたのだが、冒険者の頂点、目指すべき頂きとしての行動が伴っていない人物は空席があっても認定しない事も併せて決定した」


 どう考えても自分が排除の対象になると考えているので、より攻撃的な圧力を撒き散らしているエルロン。


 自分勝手な人物にありがちだが、自分から立場を放棄するのは良いのだが、相手(ギルド)側から排除されるのは許容できないと考えている。


 事前に秘書官のミミが退避したのは今日の議題を予め聞いていたので、事前の打ち合わせでこの雰囲気に体が耐えられない事を予測した総代シュライバによって、鑑定終了後に退席する様指示を受けていた。


シュライバ(・・・・・)、テメーは何が言いてーんだ?」


 より圧を局所的に総代であるシュライバに向けているエルロンと、実力的には格下の為に圧を直接受けては全く動けなくなってしまうシュライバ。


 そこに割って入るように席から立ち上がって移動したのは聖母リリエルであり、自らの背後にシュライバが来るようにして保護しつつ、位置的に直接圧を受けながらも能力を使って対処しているので平然としている。


「リリエル・・・助かった」


「いいえ、全く問題ありませんよ?あのような狂犬が冒険者の頂点ではギルドの品位が疑われますからね。私としても今回のギルド本部の英断を積極的に支持致します。首輪を付けられない狂犬がどうなるのかは考えるまでもありませんが、そこはおいおい対処すれば良いでしょう」


 シュライバがエルロンを排除するところまでは明言していない段階で、排除が決定したと断定した物言いで話を進めるリリエル。


「そうよね、首輪があろうがなかろうが狂犬は狂犬だもんね。そんな奴に経費が掛かるのもバカバカしいわね!これでギルドも品格のある組織に生まれ変わるんじゃないかしら?」


 当たり前のようにリューリュが追随すると、エルロンは有無をも言わさず<闘術>を活かした体の動きで背後に総代であるシュライバを庇って動きに制限が出るリリエルに襲い掛かる。


 リリエルが持っているのは無条件で身体能力が補強されるような能力ではないのだが、レベルSまで引き上げた<回復>を自らに行使して反射速度や筋力自体を調整し、普通の冒険者・・・Aランカーの身体能力強化系統の能力持ちよりも早く動く事が出来るが、Sランカー相手では大きく見劣りする。


 この流れで行けば負傷はしないながらも容赦なくリリエルは吹き飛ばされるはずなのだが、エルロンの攻撃が届く前に二人の間に炎が立ち上がる。


「チッ、クソ虫が!邪魔すんじゃねーぞ?テメーから血祭りにしてやろうか?リューリュ!」


 ギルド内部の騒動、それも本部での騒動はこれ以上ない程の禁忌であり証人が総代を含めてこれだけいるので、ここまでしてしまえばどの道冒険者資格は剥奪だと理解しているエルロンは、このまま戦闘が継続されては敗北必至と冷静な判断をしつつも最低でもここに至った原因と思っているリリエルに一撃入れておきたい気持ちもある。


「はっ、やれるもんならやって見なさいよ?アンタとの相性は悪くないから、気の済むまで相手になってやるわよ?」


 リューリュの言う通りにエルロンは少々<魔術>による攻撃を苦手としており、暴風を起こしても関係ない程に広範囲で攻撃をされて攻撃を継続したまま範囲を縮小されては手も足も出なくなる。


「因みに俺も、喜んで相手になりますよ?」


 そこに新人とも言えるスロノまで参戦すると明言しており、こちらも実力をその目で確認したわけではないが明確に<魔術>Sを持っていると宣言していたので、相性は最悪だと認識する。


「はっ、コイツはチット分が悪ぃ~な。おい、ビョーラ。お前はどちら側なんだよ?」


 <弓術>Sを持っている流星ビョーラを味方に入れれば多少は状況が好転するので、今までの態度から望みは薄いながらも意図を確認するエルロン。


「俺は争いには興味はない。中立だ」


「・・・だったな。この場限りの共闘で虹貨1000枚(10億円)でどうよ?」


 エルロンも流星ビョーラがお金で動くとの情報を得ていたので、先ずは様子見として今この場だけの同盟として報酬を提示する。

 

「・・・断る」


 即味方になるとは思っていなかったので、短いながらも明確な拒絶を受けても平然としているエルロン。


「まぁ、そうだろうな。同格を相手にするのにその程度じゃぁ足りねーのは明らかだ。自分を安く売らねーのは気に入ったぜ?だがよ・・・このまま俺の依頼を断ったら、テメーが大切にしている連中がどうなるのか見ものだな?」


 Sランカーに対しての情報はなかなか得られるわけではないながらも、弟の力を使って流星ビョーラに関する詳細を手に入れていたエルロンなので、第三者が聞いても明らかに脅迫と取れる内容の言葉を口にする。


 もはや冒険者ギルドに所属していることやSランカーとしての立場も維持できないと悟った上での開き直りなのだが、殊の外ビョーラには効果があったらしく明確に狼狽えている。


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