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収納ってなんだろう!  作者: 焼納豆
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(100)暴風エルロンとミルロン②

 冒険者登録をして高レベルの<魔術>を使いこなし、その上で最底辺の依頼しか受けていないスロノに関する情報を聞いたエルロン。


 冒険者が力を公にしたくないので情報を秘匿する事はままあるが、未だに最底辺の依頼しか受けていないのはどう考えても違和感がある。


「その理由は何だ?<魔術>の制御できねーから怖くて依頼を受けられねーのか?稀にそう言った奴が存在するのは事実だからな。それとも、<魔術>を持っている事を知られたくねーのか・・・」


「確かに制御は甘そうだが、暴走するほどではないからな。獣が怖くて依頼を受けねー訳じゃねーだろ?いや・・・ひょっとして、血が怖くなったか?」


 遠く離れたテョレ町に近接する人気の無い場所の出来事も、何故か正確に手中に収めているミルロン。


「そうそう、追加の情報だが・・・スロノは依頼実行時に<収納>の能力を使っているらしいぜ?コレは納品の際にも使っているから、ギルドも把握している事項だ」


「は?二つの能力を持っていやがるのか?確かなのか、ミルロン?」


 世界の常識では、二つの能力は非常に稀な上に能力が伸びるのは一つだけ。


「そのようだな。俺の想像になるが、本来の能力は<魔術>で二つ目が<収納>だから、未だに獣一体程度しか収納できねーんじゃねーの?」


「成程。そうかもしれねーな」


 エルロンは本来持っている<闘術>を活かして必死で<棒術>を持っているかのような実力を身に着けたのだが、それでも<棒術>は発現していない。


 それほど二つ目の能力を得るのは難しいのだが、何故有用な能力を完全に(・・・)秘匿して小間使い程度にしかなり得ない<収納>を公にしているのかは理解できない。


 能力を隠蔽するところだけならば理解の範疇だが、冒険者としての地位の上昇を完全に放棄してまで全てを隠蔽すべきかと言われれば、答えは否だ。


「良いじゃねーのよ、兄貴。スロノとか言う奴が<魔術>を、それもレベルSの能力を持っているとだけ理解しときゃー良いんだよ。いつか敵対した時の為に、きっちりと対策を取っておけば良いんだよ!」


「だな。分からねー事を悩んでいるのは俺達らしくねーからな」


 机の上に並べられている食料や高価な酒を飲み食いしつつ、全く関係のない話に移行した兄弟。


 宣言していた通りにエルロンは招集に応じる気は一切ないので、暫くは弟ミルロンの屋敷で気楽に過ごすつもりでおり、ミルロンの能力があれば屋敷に籠っていても情報は難なく入手できると知っている。


 史上初と思われるSランカーの招集と言う通常とは異なる大きな流れが発生したために、敢えて行動を控えているエルロンの元に、数日後弟ミルロンから新たな情報が提供される。


「兄貴、どうやら兄貴の他にも欠席者がいるみてーだぜ?」


「予想通りっちゃ予想通りだな。俺達みてーな奴らが大人しく言う事を聞く方がおかしいんだよ。で、誰がバックレたんだ?」


「今のところ、ギルド本部に移動している情報を掴めてねーのは兄貴の他には一人だけ、陰のソルベルドだ。あいつは王国バルドに留まるようだぜ?」


「・・・そう言やぁ~、あのクソ野郎(ソルベルド)はあの国で訳の分からねー事を言っていたな。確か、恋のソルベルドだったか?」


「プッ・・・ギャハハハハハ!おいおい、何の冗談だ?Sランカーにつけられる二つ名じゃねーぞ?」


 ミルロンが、普通の人ならばそう反応するだろうと言うごく一般的な反応をしたのを見て、確かに情けなく恥ずかしい宣言だったと今更ながらに気が付き、つられる様に大笑いしてしまうエルロン。


「は~、久しぶりに笑ったぜ。で、クソ野郎(ソルベルド)が国内に留まる理由は分かったか?ミルロン」


「なんでも、ミューとか言う王女の護衛騎士と恋仲になる為に必死らしいぜ?俺の記憶によれば、陰のソルベルドは冷静沈着に行動して搦手で相手を仕留める強者だったはずなんだがな。腑抜けたようだな」


 今一つ恋仲だのなんだのの話は理解できないながらも、直接対峙してその実力は本物だと知っているエルロンは、邪魔な存在である他のSランカーが不在の内に再戦するのも悪くないと思い始める。


「他の連中はギルド本部に向かっている。間違いねーな?」


「っと、おいおい、アイツ(ソルベルド)()るつもりかよ?兄貴。相手もSランカーだぜ?一戦交えてその実力は理解しただろうよ?状況が良くねーから撤退したんだろ?俺は仕事があるから手伝えねーぞ?」


「確かに一度撤退したがよ?あの時は余計な連中がいたからな。一対一なら負けねーよ」


 暫く大人しくしていた反動か破壊衝動が抑えられなくなってきたので、自らの奥の手を世に晒す原因となった憎い相手が単独でおり助っ人になる可能性が高い同格も遠く離れたギルド本部にいるのであれば、ここが再戦の時だと思っているエルロン。


「止はしねーがよ、もう一つ情報だ。先日話題に出したスロノの件だがよ?どうやら<魔術>Sとしてギルドに登録するみてーだぞ?ひょっとしたら今回の招集はその件なんじゃねーの?いくら俺でもその辺りの正確な情報を掴めなかったからよ」


 ミルロンの能力は<操作>Sであり、多数の獣やら魔獣やらを使役しているので情報収集はお手の物なのだが、流石に今回の招集の真の理由までは掴む事が出来ずに間もなく招集日になる。


 今後の為に新たなSランカーを認識しておくことは言わず共重要であると知っているので、ソルベルドとの再戦を取るか、今後の安全にもつながる情報を得るためにスロノと直接相対できる招集に応じるのか、悩み始めるエルロン。


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