(97)【黄金】の補強
【黄金】男性陣三人に対しては、夫々が持っている武器の補強を行える希少な魔石がソルベルドから提供され、今更だが魔術に対しても有効に働く武具があると聞いて自分も手に入れるべきだと思っていたミランダ。
スロノはこの話になった時に、リューリュとリリエルからミランダに対して渡す様に言われた品があった事を思い出し、ソルベルドから渡された箱と同様に収納していた箱を取り出す。
「これって、私に?」
「はい。リリエルさんとリューリュさんがミランダさんに渡すように言っていましたよ。俺は中身を知りませんので、開けてみてください」
【黄金】の男性三人がソルベルドからの品と聞かされて中々開けなかった時とは違い、嬉しそうに直ぐ箱を開けるミランダ。
そこにはブレスレットが仕舞われており、即ドロデスが反応する。
「そいつは・・・あの二人がつけていたのと同じに見えるぜ?」
正に今ミランダが最も欲している品だったので、嬉しそうに箱から取り出して自らの腕に装着するミランダ。
「不思議・・・」
腕とブレスレットの大きさが合わずにブカブカだったのだが、腕に通した直後に程良い大きさに瞬時に変化し、その後は腕を振っても動く事無く邪魔になる事はなかった。
「ミランダ、何か変化はあるかよ?」
ドロデスや他の面々も興味津々にミランダを見ており、そこにはスロノも含まれる。
正直スロノであれば自らに<鑑定>を付与すればある程度その力は分かりそうなのだが、【黄金】に対して勝手に情報を抜くような事をしたくないので、幾ら益になる行動だったとしても余計な事はしない。
このブレスレットを準備したのがリリエルとリューリュなので、悪い方向には行かないとの信頼もある。
「良く分からないけど、なんだか体が軽くなった・・・のは気のせいね。スロノ君、二人から何か聞いていない?」
喜びつつも相当冷静だなと思いながら、聞かれた事に答えるスロノ。
「ごめんなさい。ミランダさんの役に立つ品だとだけは聞いていますけど、詳細は分かりません」
「じゃあ決まりだな。俺達はシャールに武具の製作依頼を、ミランダとスロノはそのブレスレットの効果を試す為に今日の依頼は受けねー。良いな?」
こうして二手に分かれて行動するのだが、ドロデス、ジャレード、オウビはギルドで行動する為にこの場に残り、ミランダはブレスレットの検証を行うべくスロノを伴って町を出る。
ミランダレベルの魔術行使を町中で行っては制御しても大災害になりかねないので外に出るのは当然だが、同じく<魔術>Sを持っているスロノと行動する事でブレスレットの効果について色々検証できるかもしれないと思い、軽い気持ちで人気の無い場所に向かう。
「ミランダさん。効果を見るには道具の有無で比較しないとダメだと思いますよ?」
ひたすら道具を装備した状態で魔術を行使しても意味がない可能性があるので、道具の有無によって比較する方が効率的だと告げるスロノ。
「そうね。ブレスレットを装備していない状態は把握しているつもりだけど、改めてこの場で比較した方が良いわね」
違和感は一切ないが腕にしっかりと装着されているので、どうやって外せばよいのか分からないながらも、外したいと思いながら動かすと簡単に取れた。
「凄いわね。とりあえず装着していない状態で試すわ」
手に持っている時点で効果があるのかもしれないので、ブレスレットをスロノに渡して軽く魔術を行使するミランダ。
「いつも通りね。同じ感覚で同じ術を行使してみれば良いのよね?」
ブレスレットを装備して術を行使するのだが、術自体の威力や精度に全く影響はなかったように見えたスロノは思わず正直に見た感じを伝えるのだが、ミランダの反応は嬉しさが抑えきれないようだ。
「えっと、ミランダさん?俺には変化が無いように見えましたが、どうですか?」
「スロノ君・・・凄いわ、コレ!」
何が起きたのか、今自らには<魔術>Sしか付与していないのでわかり様が無く、ミランダからの説明を待っているスロノ。
「これって、魔術の行使に必要な魔力の消費を抑えてくれているのか・・・もしくは魔力そのものを補ってくれているのか、どちらかは分からないけれど、私の許容以上に連続して魔術を使えるのは間違いないわ!」
近接戦闘系であればその武器自体の強度等が上昇し、則ち持ち手の戦闘能力が上昇しているのだが、今回のブレスレットに関して言えば持ち手である<魔術>持ちのミランダの持続力を大幅に底上げする品だった。
本来レベルAの<魔術>を持っている時点であり得ない存在ではあるのだが、ミランダにとってみれば目の前のスロノも<魔術>Sを持っているし、熟練のリューリュの実力も目の当たりにしており、自分の力がまだまだ上げられる事に歓喜する。
「そっか・・・補助的な品を装備する事でより強くなれる。当然の結果ではあるな」
喜んでいるミランダを見て、同じく本物の実力を体感したスロノも経験だけではなく何らかの補助的な物が必要だと感じていた。
その後スロノもブレスレットを借りてその効果を体感し、必要性を再認識していた。