表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
収納ってなんだろう!  作者: 焼納豆
1/213

(1)現状と過去の出会い①

久しぶりの投稿です!

「おーい、ウスノロ(・・・・)!さっさと荷台に積んでおけ!」


 森の中で、今日の稼ぎになる獣達を始末し終えたメンバーのトレンが一人の男性に向かっていつも通り騒いでいる。


「本当に、早くしてくれないかしら?私、急いで帰ってお風呂に入りたいの」


 このように言っているのは、栗色の髪の毛で小柄、クリッとした茶色の目が可愛らしく見えるリノと言う女性。


 本来はウスノロと呼ばれている黒目黒髪の男性と二人でパーティーを組んでいたのだが、いつの間にかトレンと言う男が加入してから、気が付けばこうなっていた。


 こう(・・)とは、ウスノロと呼ばれている男性だけがお荷物的な存在で、パーティーの異物だと思われている。


 冒険者として活動している以上は統括する組織のギルドに登録する必要があり、形上は今でもウスノロと呼ばれている男性がこのパーティーのリーダーになっているのだが、実際は全ての雑務を押し付けられている奴隷の様な扱い。


「早くしろって。お前は<収納>Eだろ?これだけ薄汚れた物も難なく保管できるのが唯一の力じゃねーか。俺はリノと一緒に早く風呂に入るんだから、すぐに取り掛かれよ!」


「え?も~トレン!恥ずかしいじゃない?それにあの人の能力じゃ収納は無理よ?」


「はははは、今更何を言っているんだ?っと、ウスノロ!お前の能力じゃ確かに収納するのは無理だが、さっさとしろ。それと、帰ったら覗いたりするんじゃねーぞ?」


 誰が覗くか、クソ野郎が!それとリノもあれだけ弱っていたのを助けてやったのは誰だと思っているんだ!と言うよりも・・・・・・同じことをされて弱っていたところを救ったのが俺のはずなのに、すっかりその事は忘れて逆に加害者側に回っているのだから人って救えない・・・・・・と思いつつ、目を覆いたくなるような惨状とも言える現場の素材を集めている黒目黒髪の男性。


 もう一つ付け加えるなら、彼の名前はウスノロではなくスロノだ。


 指摘すると余計面倒になるので黙っちゃいるが、そろそろ潮時かと思いつつ手を動かしながらも、“は~、あの時にあいつ(トレン)を加入させなければ、いや、もっと言うならば変な情に流されてリノに手を差し伸べなければよかった”と後悔していた。


 あの時とは・・・


「おい、リノ!お前って<回復>Eだろ?悪いけど、そのレベルならば粗悪品の回復薬で事足りるんだわ。ま、回復薬を持ち歩く事や破損のリスクはあるけど、各自が一気に使用する事ができるメリットの方が大きいんだよね。それに、少し贅沢をすれば遥かに効果の高い回復薬もある。悪いけど、お荷物になっている以上はもう面倒見切れない。少しでも力が上がるかと待ち続けていたけど変化がない。これ以上は負担になるから、自分から潔く抜けてくれないか?」


 とあるパーティーのリーダーらしき男が、リノと言う少女に対してこう告げていた。


 内容は事実ではあるのだが、実際には痴情のもつれが多分にある。


「ねぇ、ロイロイ!随分と優しい言い方じゃない?こんなお荷物にはしっかりと現実を見せてあげないと、いつまでも纏わりつかれるかもしれないわよ?」


 このリーダーの名前はロイハルエスと言い金目金髪の美男子である為か、はっきり言って女性からの人気はあるのだが、冒険者としての実力が高いかと言うと決してそのようなわけではない。


 自分に惚れている女性の能力を無駄に使用させて、時には危険な場所に置き去りにして依頼を達成して生計を立てているクズなのだが、過去にとある女性を囮にして逃げている最中に傷が悪化して倒れていたところリノが発見して癒してくれたので、丁度良いとばかりにパーティーに入れた経緯がある。


 暫くは大人しく生活していたのだが、やがて生来の性格が出て手当たり次第に女性をパーティーに入れてその中の一人が露骨にロイハルエスと恋仲だと主張した結果、敢え無くリノは追い出される事になる。


「そんじゃあよ?あの時は少しだけ助かったけど、その分は俺と共に生活できた事で良い思いをしたはずなので借りは返したぞ?」


 共に生活したと言っても生活に係わる仕事は全て大人しいリノにさせていただけなのだが、自分に奉仕できる事が女性にとっては最大の報酬になると信じて疑っていないロイハルエスなので、このような物言いになっていた。


 その後はリノだけを残してギルドを後にしようとする、ロイハルエス一行。


 ギルドで無能だと主張した上で追放宣言を行っておけば他のパーティーに勧誘される可能性が低く、自分が捨てた存在であったとしても次に誰かに拾われるのは面白くないと言うとてつもなく小さい感情からの行動だ。


 見返りを求めずに善意から助けた存在、その後散々尽くした存在にあっけなく切り捨てられてしまったリノは、力なく頷くしかできなかった。


 悲しげなリノの表情を見て、その場にいたスロノは思わずこう声をかけていた。


 冷静になれば、かけたと言うよりもかけてしまった・・・の方が正しいか?


「そっか。それじゃあ、早速俺と一緒にパーティーを組まないか?丁度回復ができる人を探そうと思っていたんだ!俺はスロノ。な?そうしようぜ?」


 これがスロノとリノの出会いであり、本来は全く回復を使える人材など必要としていなかったスロノが、リノをギルドと言う冒険者の視線が多数ある中助ける事でひょっとしたら有能なのかもしれないと思わせる事ができる為、仮にリノが今後独立しても不当な扱いを受けることは無いだろうと瞬時に考えて行動した結果だ。


 ロイハルエスとしては捨てた存在が一瞬で救い上げられた事が面白くないのだが、ここで喚いては逆に自分の価値を下げる可能性があると無駄に頭が回っている事、ギルドからはパーティーメンバーの失踪率が高い事から目をつけられていると知っているので、ギルドでもめるのは得策でないと理解しており、黙ってこの場から出て行く。


 と言っても内心面白くない事は変わりないので、同じような思想の持ち主であるトレンと言う男に相談し、スロノとリノのパーティーに入り込んでパーティーを破壊させることにしていた。


 その報酬は女性を差し出すと言うゲスの極みだ。


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ