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気になる

作者: 仙人掌

図書館の片隅に毎日いる女の子。


図書館なのに本はテーブルの上に開く事なく置いてある。


最初は変わった子だなと思ったぐらい。


その内に来ているか確認する為に、俺も毎日図書館に通うようになった。


ちょうど調べたい事もあったし。


その女の子はぼんやりと外を眺めている。


毎日変わり映えのしない外をだ。


図書館が閉館するまで彼女はほとんど動かずにそこにいる。


俺が気がついてから一年ぐらいたった。


この一年その女の子はそこにいた。


帰りは俺の前をその女の子が歩いて駅のホームの改札を抜けて行く。


俺は少し離れた場所から見送る。


勝手にボディーガードな気分。


知らない人が見たらストーカーに間違えられそう。


そんなある日その女の子はいつもと帰りのコースが違った。


途中にある公園のベンチに座る。


何かあったのかと心配になった。


声を掛けていいものなのか。


30分たってもその女の子は帰る気配がない。


思わず側に行く俺。


人の気配に顔を上げる女の子の不審者を見るような表情が街灯に照らしだされている。


好きです。


俺の口から素直に出た言葉。


その女の子は好きって分からない。


私に構わないで。


放っておいて。


と俺を突き放す事を言う。


俺の事も知らないなんて。


まあ勝手に一年間見ていて、挨拶すらした事ないもんな。


女の子からしたら知らない男に好きって言われた。


嫌なんですけど。


だよね。


でもごめん。


お前の事をもっと知りたいんだ。


なんで毎日図書館に来ているのとか。


こんなに遅くに帰っても大丈夫なのとか。


聞きたいけど聞いてはいけない雰囲気。


放ってはおけない。


俺は見つけてしまったから。


突然の告白の次の日も変わらず図書館に来てくれたんだね。


俺に気がつかないふりをしてるのかなぁ。


それとも本当に気がつかない?


今日も帰りの見守りはさせてね。


あれからひと月ほどたったある日、あの女の子が俺に初めて声をかけてきた。


放っておいて。


空気でいさせて。


そんなことを言う。


空気でいたいではなく、いさせてって何?


辛い人生なの?


一度も笑った顔を見てないけど、そういうことなの?


俺が笑顔にさせてあげるよ。


すぐには無理でも。


きっと絶対近い未来に。





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