サウルside
困ったことになった••••••。
目の前には第二王太子のクラース様とその従者らしい長身で黒髪の青年が座っている。
「では、このハーブティーはコンティオラ家から街の人々へ配られたもので間違いないのですね?」
「ええ••••••」
「これを作ったのはメイドのスヴィーだと聞いていますが、スヴィーには聖女の力はなかった。 誰か他にこのハーブティー作りに携わっていた方に心当たりはありませんか?」
「••••••すみません、家の事は使用人に任せきりなもので。 聞けば聖女様も病に良く効くハーブティーを作って配っていたそうじゃないですか。 ハーブティーなんて似たような物ですから、街の人も聖女様から戴いたものとうちの物を勘違いしてしまったのでは?」
黒髪の青年が、切長の瞳でこちらを見詰める視線が辛い。
「••••••そうですか。 コンティオラ家当主のサウル様なら何かご存知かと思ったのですが、私の思い違いだったようですね。 今日は突然の訪問に対応していただき、ありがとうございました。 何か分かった事がありましたらご連絡お願いします」
クラース様はそう言って立ち上がると、黒髪の青年を連れて帰って行った。
いきなりクラース様と従者が屋敷に来て、コンティオラ家のハーブティーについて聞きたいと言ってきたのでヒヤヒヤしたが、意外とあっさり帰ってくれて良かった。
しかし、ディオーナ様が聖女として現れてくれた時は本当に助かったのだ。
周囲の注目は全て彼女へ行き、ハーブティーの件も全て彼女がやったことになったからだ。
周囲の人々が困っているからとついハーブティーを配ってしまったせいで、こんな事になってしまった。
クラース様は街の人の話を聞いて、ヨハンナが聖女だと思っているのだろう。
しかし、ディオーナ様が居る以上、他の者を聖女として調べていることが周囲へ分かればクラース様の立場も悪くなる。
あまり表立って調査することもないと祈りたい••••••。
それは聖女お披露目パーティから3ヶ月程経った頃だった。
クラース様からはあれから音沙汰もなく、私は安心し始めていた。
ヨハンナは、ライラ様がスヴィーの代わりに侍従として学園へ同行するようになってからは目立った嫌がらせはされていないようだ。
今日は学園での魔法試験が行われるが、女子生徒は火をつける、水を出す等の生活魔法の試験なので、魔法の得意ではないヨハンナでもなんとか合格できるだろう。
しかし、そろそろ試験も終わり帰宅する時間になっても二人はなかなか帰宅して来ない。
まさか試験の出来が悪くて落ち込んでいるのだろうかと嫌な考えが過ぎる。
すると、学園から連絡を受けたスヴィーが報告に来た。
「旦那様! たった今、学園から連絡が来たのですが、試験で使用する魔物が檻から逃げ出して学園内を暴れ回っているようです。 生徒達は教室内に避難していて今のところ無事だそうですが、まだ魔物が捕まっていないとかで、間もなく騎士団が派遣されると連絡が来ました」
「試験用の魔物が逃げただと!? あれは騎士コース履修生徒の訓練用に野生の魔物よりも弱く、凶暴性も低く改良されているはずだ。 あの程度の魔物なら教員だけでも対処できるはずなのに、まだ捕まらないのか?」
「初めは教員達で捕まえようとしたらしいんですがどうも上手く行かなかったそうです。 お嬢様大丈夫かしら•••」
「どうも心配だな。 ちょっと行ってくる。 留守を頼むぞ」
お読みいただきありがとうございます!
なかなか更新できませんでした••••••。ゆっくり頑張ります。