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第一章 三話 ライフブレイカー、そしてスミレの妹

「僕のフィールドにカードは無いし、スミレのフィールドにはファイターカードが12枚。

 守護隊はアタックできないけど、ディオが2回攻撃出来るっぽいし、

 仮にそうしなくても次にドローしそうなファイターカードをエンターさせれば終了。

 これは笑えないな。」


「覆して見せて、この状況を。」


「やってやる!

 スタート、トロウをドロー。そして、もう1回(ワンス・アゲイン)ドロー!!

 …来たよ、護衛兵とかを処理できるカードが。」

そう言いながらにやりとして、すぐにまた構える。


「エンター、『友の墓を紡いで』、コスト60、紫のゾーンカードだ!

 エンター時に『友導』カードでもあるトロウを手札から除外して、

 除外したトロウのコストの合計まで、相手のファイターカードを破壊する!」


「ということは、60まで好きなだけ!?」


「護衛兵はコスト1、優等兵はコスト2、それら8枚でもコスト合計は11だから、

 コスト26のディオ、コスト6の賢者、コスト10の守護隊、合計53コストのカードを破壊!」


「計11枚を破壊かぁ、でも、ディオの効果と守護隊の効果が使えるんだよね。

 守護隊の効果で2枚ドロー、守護隊が手札にあるならタダでエンターできるけど、今回は無しで。

 そしてディオの効果で、相手のカード1枚を破壊して除外!」


「これはライフとかデッキのカードでもいいんだよな?」


「そう。でも今回はフィールドの『友の墓を紡いで』を破壊して除外する!」


「待った、『友の墓を紡いで』の効果!

 1ターンに1回だけ、トラッシュから『友導』カード1枚、トスクを除外して、その破壊を無効にする。」


「成程ね、破壊出来ないと除外も出来ないことも分かってたんだ。

 おっと、今回は本気で除外しようと思ってたからね、11枚破壊された時にやっと分かってきたから。」


「それじゃあ、有難く『友の墓を紡いで』のもう1つの効果を使うよ!

 スミレのトラッシュにあるカードが16枚、つまり15枚以上なので、このカードを実行して3枚ドロー。

 僕のトラッシュには14枚、つまり15枚以下なので、さらに僕のデッキの上から4枚破棄。」


「『桃色の天兵』が2枚破棄されたちゃったから、その2枚は効果で新たなライフになるね。」


「その通り。更に『旧友への彼岸花 グドウ』をエンター!

 エンター時効果で、トラッシュの『友導』カード、トスク1枚を除外することで、

 このターンの間、グドウはファイターカードにブロックされない!」


「あれだけ言っておいてこれだけなんてことは無いよね?」


「それはそうだ。グドウは【ライフブレイカー:1】を持ってるんだけど、

 グドウのアタック時に好きなだけディヴォートしている『兵士』カードを実行できる。

 そしたらそのターンの間、実行した分だけその数値がアップする。

 『兵士』カードしかディヴォートしていないから、基本的には関係無いな。」


「今はあと6枚あるから、1回のアタックで7枚削れるってことだね。」


「その通り、じゃあ、グドウでアタック、そしてアタック時に6枚実行する!」


「ブロック出来ないし、受けるよ。」


「ターンエンド。」


「スタート、2枚ドロー。」

(手札はゾーンカード『村の神の像のある地』5枚と『村の民家地』3枚、

 そして『村の結束』2枚と、『チャージ・フィーバー』1枚。

 これはもう、勝負が着いたね。)

「仕方ないね、ターンエンド。」


「じゃあ僕のターン、2枚ドローして、手札からもう1枚のグドウをエンター。

 トラッシュから最後のトスクを除外して、このターンブロックされない状態に。

 そしてブロックされないグドウでアタック、7枚実行させてライフを8枚削る!!」


「今私のライフは6枚しか無いから、そのすべてが手札に加わる。

 そして、私のライフは0、よって君の勝利だよ、クォーデ。」


「とりあえずは、合格か。」


「あ、そうそう、一つ確認しておかなきゃいけないんだけど、

 『決闘の暁』って知ってる?」

試合中に出ていた諸々は消え去り、カードはお互いの手元に戻っている。


「え、そういうカードでもあるの?」


額に手を当てて少し俯きながら、スミレは続ける。

「この世界ではこれが決闘の手段。そして決闘の勝者は暁として敗者に何かを命令できる。

 カードを貰うことも出来るし、敗者と一緒に旅をすることも出来る。

 まあ、暁でなくてもついてきていいよ、合格なんだから。」


「暁じゃないけど、1つ、いいか?」


「察しがついてると思うから先に答えると、

 基本的に、命の危機に曝すような命令はできないよ。」


「基本的に、か。とりあえず暁として、カードの共有をしたいかな。

 お互いに得だし、僕としては仲良くなりたいから。」


「そんな暁でいいなら、お安い御用だよ。必要な時はちゃんと貸すよ。

 まあ、色の領域毎に、そのあたりは決まりがあるんだよ、

 〈黒〉は奴隷化が許されているし、〈紫〉は血を飲んで殺すことも出来る。」


「さらっと恐ろしいことを説明したな。

 それで、もう話してくれるかな、旅の目的。」


「そうだね、君から悪意は感じられなかったし、話してもいいね。」


唐突にスミレが顔から笑みを消す。

「旅に出る最大の目的は、〈白〉の都市。

 『ゼウス・ヴィクルル』と呼ばれる少女神に会って、誘拐された友達の無事を確かめる。

 でもその前に、他の友達にも会いに行って、各〈色〉の協力を得ることから始めなきゃいけない。」


「つまり、〈赤〉と〈白〉以外の残り7色、

 〈青〉、〈黄〉、〈緑〉、〈紫〉、〈橙〉、〈桃〉、〈黒〉を巡ってからってこと?」


「そう。時には決闘は避けて通れないだろうから、

 ある程度の実力が無いと命の保証は無いかもってことでもある。

 まずは隣の〈橙〉の童園まで行く。地道に歩いたら3日はかかるかな。」


クォーデは渡された地図を見て驚愕する。

スミレの旅、それは旅より冒険と呼ぶ方がしっくりくるかもしれない。

ただ、決闘を抜きにしたら単なる旅行ということなのだろう。勿論徒歩でだ。

地球の北極から南極までの距離の半分程に感じる道のりを行かなければならないとなると、

徒歩で臨むのはほぼ不可能と言っていい。

慌てて問いただすのも不自然ではないという訳で、早速クォーデが震える。


「おいおい、食料があるとは思うけど、それでも厳しいぞ…」


「〈橙〉でお菓子みたいな果実が食べれるから、食料はそこに辿り着くまでは十分持つよ。」


徒歩前提のスミレの発言に若干戦慄する。


「いやいやいや、幾ら別世界だからって、こんなに歩くなんて聞いてない!」


「嫌なら来なくていいけど、この家で留守番しててよ?」

それはそれで勿体無いのは流石に分かっている。


「それはなんか悔しいから行くけどさぁ…」


「じゃあ明日の朝出発ね。流石に今からだときついだろうから。」


「そ、それなら助かるー」


外から家に向かいながら話をしていたので、とっくにスミレの家にお邪魔している。

先程クォーデが気付いた部屋はスミレの部屋のようだ。


「まだお昼だし、何か食べる?」


「いや、さっきから別にお腹空いてないし、夜かな。」


「じゃあ、デッキの見直しとか、試合として勝負するとか、そういう事して明日に備えよう。

 着替えも食料も準備してあるから大丈夫。」


着替え、そう、着替える服が問題だ。

そう感じたクォーデは慌てて問う。


「待って、着替えって女子服ってことだよね!?

 僕そういう趣味無いんだけど男子服無いの!?」


「落ち着いて、ちゃんと男子服あるし、さっきから見たことも無い服着てるし大丈夫でしょ。」


今更身に着けている服を見てみる。

此処に来る直前に着ていた服そのままということに気付いて、少し顔を赤くしながら。


「あ、確かにこれ僕の服だ…

 後何でスミレが男子服持ってるの…?」


「え、そういうものじゃない?

 妹も今頃男装して村の集会に参加してるよ?」


「妹?男装?って色々突っ込みたいけどまずそういうものじゃないから!!」


「そっかぁ…」

その時、玄関の扉がキィと鳴る。


「お姉ちゃん、ただいま!」

無垢な少女の声だ。


「モミジお帰り。この子はクォーデ。」


モミジと呼ばれた、スミレより数年幼そうな子供は黄色の目でクォーデの顔を少しだけ睨んで、

先程聞こえてきた少女の声とは違って幼い男子のように振る舞う。

「へぇ、クォーデ君かぁ…

 こいつ朝からスミレの部屋で棒立ちしてたけど、本当に彼氏とかじゃないの?」


「「それは絶対違う。」」


「いつの間にそんなに仲良くなったんだ?」


「事情を説明するから、すぐ着替えて戻ってきて…」

姉の一言。


「分かったよ、むぅ。」

少年っぽい子供はダダダと扉に向かい、隣の部屋へと入っていく。


「え、ガチで男装してる?振る舞いから男子なんだけど?」


「あれも男装の一環。モミジは形から入っちゃうタイプだから、

 その気になれば女子だってことを忘れてしまいそうなんだよね…」


「じゃあ、あれでもちゃんと妹なんだ…」


「それは男装してる最中に言わない方がいいよ、本気で殴られると思うから…」


「はぁ、男装を解いて着替えてる間に好き勝手言われてるよ…」

隣の部屋から少女の呆れた声を聞き、ふたりは苦笑する。


「じゃあ、今回の旅はモミジが留守番ってこと?」


「厳密には、近所の家族が交代で一緒に居てくれる。

 お姉ちゃん達が心配することは襲撃くらいだね。」


「モミジだって簡単には負けないし、この村の皆の孫娘みたいに大事にされてる。

 私が心配してあげられることは殆ど無いね。」


何か思い出したか、姉も部屋へ駆け込む。

「そうだクォーデ、一応モミジにもちゃんと事情を話しておいてね。

 私はこれから男装して近所のお手伝いに行ってくるから。」


「晩御飯はどうするの?」


「出発前日ってことで御馳走があるから、夜に集会場に来て。

 モミジも行くことになってるし、君の事は私から説明しておくから大丈夫。

 じゃあモミジ、行ってくるね!の前に着替えないとだけど。」


「行ってらっしゃーい!」


スミレは部屋に入って準備し始めた。


「モミジ、着替え終わった?」


「終わってるし、部屋に入ってって言うとこだったー。」


「んじゃ、失礼するよ。」


扉を開けてモミジをふと見ると、左右で結った橙色の髪が長く伸びていた。


「うわ、ホントに女の子だった、疑ってごめん。」


「ちょっと後ろ向いてー?」


かろうじて理性を保っていながらも怒りが滲み出ているその声色を聞いて、

怯えつつも、話を返す。


「いや今はそういうのいいから、とりあえず僕視点の経緯を説明させて!」


「分かった。その代わり説明しながら勝負して!」


「はぁ、ぼこぼこにする気満々だなぁ…」


とりあえず試合としてカード勝負をしながら、

クォーデは気付いてからモミジが家に戻ってくるまでの流れを簡単に説明した。

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