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第一章 一話 少年と少女の腕試し

(…此処は…何処だ!?)

少年は気が付き、あり得ない状況に驚く。

「何でこんな所に立っているんだ、僕は、さっきまで布団で寝てた筈だろ!!」


「もう、急にうるさいよ、君。」

少年の横から、少女だ。


紫のショートヘアと桃色の瞳が特徴的な少女の方を向いて、少年が再び発言する。

「そんなことより、いろいろと状況を説明して欲しいよ。」


「説明して欲しいのはこっちもだよ…」

少女は「当然だよね」という風に呆れる。

「私は『スミレ・アイ』。他の人からは『〈赤〉の村の希望』とも呼ばれているね。」


「僕は…」

一瞬考え事をして、再び口を動かし、

「クォーデ」

と続けた。


「それで、『〈赤〉の村の希望』というのは何?」

クォーデの質問を受け、スミレの目が真剣になる。


「まあ、いろいろとあってね…」

少し目を細めて、すぐにまたほころばせる。

クォーデがその様子を見て「話してくれそうに無いな」と思った。


「それはそうと、君はどうしたい、クォーデ?」


「元の場所に戻れる方法を探したい。

 いつまでもこの世界?に居る訳にはいかないだろうし。」

スミレの目がまた笑いを消す。


「それじゃあ、〈赤〉に居るだけじゃ始まらないよね?」


「まあ、折角なら此処以外も出来るだけ見ておきたいし。」


スミレの口が笑う。

「へぇ…この世界は戦い無しだとまず旅なんて出来ないからね、じ…」


話を遮り、クォーデは何かを取り出す。

「それって、これの事かな?」

右手に持っているのは、カードデッキだ。


「へぇ、知ってるんだね。」


クォーデはカードを1枚取り出し、表を見せる。

『余剰な供物』、〈緑〉色のカードだ。


「うん、それで合ってるよ。

 後は実力だけど……一応試した方がいいよね?」


「ん、もう気付いた?」

先程見せた『余剰な供物』はデッキから出したカードでは無く、控えから取り出しただけなのだ。


「不遜気味なのはどうにかするべきだよ。」

さりげなく鼻を高くしていたクォーデに呆れるスミレ。

「…とりあえず、やってみよっか。」


「そうだね、よろしくなスミレ。」


「でもその前に、部屋の外に出よっか。」




部屋を出て屋外に出たところで、クォーデが驚きを隠そうとする。

(やっぱり世界から違うんだな、文明が明らかに違う。)


余計な思考を知ってか知らずか、スミレはクォーデと距離を取って立ち止まる。

「さて、掛け声は当然知ってるよね?」


「うん、いくよ!」


「「エンター・プレイヤーズ!!」」

両者がそう言うと、お互いの間に巨大な長方形が2つ浮かぶ。


「へぇ、これでやるのかぁ。」


「さぁ、この上にデッキとフォーマルカードを置いて。」


(すごい、こんなにワクワクするモノなんだな。)


「「フォーマル・オープン!」」

それぞれのデッキとは別に置かれた1枚ずつのカードが裏から表になる。

「「『アクション・フィールド・ライフスタイル』!!」」

双方は、相手も『アクション・フィールド・ライフスタイル』を使うことが分かっていた。


「やっぱり、此処でもアクフィラだけなんだね。」


「事情があってね、『〈白〉の都市』にしか他のフォーマルが無いんだよ。」


「へぇ、其処ならあるんだ。」


「「リヴィール・オープン!」」

お互いにそう言いつつ、表にするカードは無いという事を両手で示す。


「もしかして、興味ある?」


あからさまな質問に、クォーデの眼も笑いを消す。

「あったら何だよ?」


スミレは声色を変えて、デッキから15枚のカードを動かす。

「実は私、そろそろ旅に出ようと思ってたんだよね。

 勿論『〈白〉の都市』にも用事がある。

 君がこれに勝てば、一緒に連れて行ってあげるよ。」


「勝てばということは、そのくらいは出来ないと困るって事だよね。」

と言いながら、クォーデもデッキから15枚のカードを動かす。

そのカードは胸元に浮き、その近くに「ライフ」のマークが表示される。


「まあ、そういうことで。」


「さて、君はどこまで耐えられる?」

スミレがカードを10枚引く。ドローだ。


「最初から負けると決めつけられるのは心外だよ?」

苦笑しつつも、クォーデも10枚ドローする。

ドローしたカードは手札となる。


「君がこの世界に相応しい実力を持つかを直接証明してくれないと、

 実力至上主義じみた区域だと生き残れないこともあるからね。

 そういう部分では、ある意味命懸け。」

スミレが手札のカードを5枚手元に置く。


(さて、何枚ディヴォートしようかな。)

手札10枚をじっくり見つめながら、クォーデも5枚のカードを抜き出した。

「僕は5枚ディヴォートする。」

そう言って、抜き出したカードを手元に置いた。


「私も5枚ディヴォートしてあるよ。」


「それじゃあトータルコストを確かめよう、僕は40。」


「私は23、それじゃあ、先攻はどうする?」


「あれでもいいよ、知ってるし。」


「あれね、まあいいよ。」


「「1から5の数比べ!!」」

クォーデは右手で3を示し、同時にスミレは2を示した。


「2より3が強いからこれはこっちの勝ち、とりあえず先攻を貰おうかな。」


「ふーん、それじゃあ見せてもらおうかな?」


「「スタート・プレイヤーズターン!!」」


「僕のターン、スタートアクションとドローアクションはあるけど、

 最初はドローしないから、特に意味無し。

 ディヴォートアクション、ディヴォートはせずにドロー。」


「ディヴォートしてあるカードを見る限り、基礎は大丈夫そうだね。」

そう言われつつ、クォーデはメインアクションに移行する。


「ディヴォートしている『黒色の闇兵』1枚を実行して、

 僕の手札から、『緑色の弓兵』をエンターする。」

手札のカードを使うには、ディヴォートしているカード1枚を横にする必要がある。


「…これは、カードのファイターが実体化した!?」

クォーデは、自分の前に『緑色の弓兵』が存在することに気付き驚く。


「迫力があっていいよね、私は嫌いじゃないよこれ。」


「…成程、まあ僕も嫌じゃないね。」

深呼吸をして、クォーデは構え直す。


「さて、続けよう。

 同様に、『白色の技兵』2枚と『赤色の拳兵』1枚をエンター。」

勿論、これらも実体化している。

「あと1枚使えるけど、このままファイトアクションへ。」


「へぇ、アタックするんだね。」


「これは先攻の最初のターンだとしても何回でもアタックできる、そうでしょ?」


「できない場合はそもそもカードが動かないから、試してみれば?」

知っていて事実確認をするクォーデに、スミレは軽く受け流す。


「不正防止は徹底されているってことだね、それが分かっただけでも収穫だよ。」

クォーデは軽くほっとして、続ける。


「それじゃあ気を取り直して、『緑色の弓兵』でスミレにアタック。

 アタック時効果で、手札にある『黒色の闇兵』をディヴォート、合計コストは48に。」

『緑色の弓兵』が弓を構え、矢を放つ。矢はあり得ない程ゆっくりとスミレに向かっている。


「それじゃあワイル、ディヴォートしている『アビリティトレーニング』を実行して

 手札にある『チャージ・フィーバー』を発動。

 その効果で、手札から『村の庶民兵』2枚をディヴォート。

 ただ、コストは0だからトータルコストは増えないよ。」

アタックの直後にワイルというタイミングが存在し、その時に一部のカードを使うことができる。


「アビリティカード、しかもディヴォートする系か。」


「そして、そのアタックは受ける!」

スミレがそう宣言した途端、クォーデとスミレの中間程まで来ていた矢が加速して、

スミレの胸元のライフカードに直撃する。


ライフカードが1枚浮かび、暫くして、それがスミレの手札に混ざる。

この胸元のカードがすべて無くなったら、そのプレイヤーは敗北となる。

「アレは無いよ、どうする?」


「残りライフは14、まだまだ始まったばかりだし、『赤色の拳兵』でもアタック!」


「特に無いみたいだし、受けるよ。」

『赤色の拳兵』の拳がスミレのライフカードに当たる。


「…お、丁度いいタイミングで来たね。」

スミレがニヤリ。


「フィニッシュアクション、僕はこれでターンエンド。」


「じゃあ、今度は私のターン。

 スタートアクション、さっき実行した『アビリティトレーニング』を準備させて…」

スタートアクションでは、自分のカードをすべて縦に戻す。


「ドローアクションの通常ドローと、ディヴォートアクションのドローで計2枚。」


「まあ流石に7枚もディヴォートされてれば、もう殆どディヴォートしなくていいよね。

 こっちはまだ足りないのにさぁ。」


「ディヴォートアクションでディヴォートするだけで十分じゃない?

 ま、ドローは1枚だけになるんだけど。」


「現状の懸念なんだよね、『チャージ・フィーバー』なんて知らなかったし欲しい感じ。」


「『剣士集団 特攻隊』をエンター、エンター時効果で『緑色の弓兵』へアタック。

 さらにアタック時効果でデッキの上から1枚ドロー。」


「いや待て、アタックしてるのに何で『剣士集団 特攻隊』が横にならないんだ!?」


「『剣士集団 特攻隊』のエンター時効果でのアタックは、実行しないで行うの。

 だから、ファイトアクションにもう1回アタックできる。」


「まじか、しかも『緑色の弓兵』に指定アタックかよ。」

プレイヤーに直接アタックするだけでなく、

カード1枚を指定してそれにアタックすることもできる。

効果でまたカードをディヴォートされると厄介なので、

『緑色の弓兵』に指定アタックしたという訳だ。


「特に無いからコンペアに入ろう、『緑色の弓兵』のパワーは6000。」


「『剣士集団 特攻隊』のパワーは18000。

 パワーはこっちの方が高いから、このファイトはこっちの勝ち。」

特攻隊が矢を避け、弓兵を剣で切り裂く。


「くう、ファイトに負けた『緑色の弓兵』は破壊され、トラッシュへ送られる。」


「そして、『村の武闘家』2枚をエンターしておくよ。」

計3枚をエンターした後、スミレは急にフィールドの上に跳び乗る。


「エンター、『健気な少女 スミレ・アイ』!!」

スミレは自分自身のカードでエンターしたのだ。


「な、スミレがエンター!?」


「エンター時効果でデッキの上から5枚見て、〈赤〉色のカード1枚を手札に加えることができる。」

スミレのデッキから5枚のカードが浮かび、スミレが1枚を手に取って見せる。

「『剣士集団 守護隊』を手札にして、残りはデッキの下に戻す。

 そのまま守護隊もエンターするね。」


「それ、特攻隊のブロッカー版みたいな感じかな?」


「実際に確かめるか、じっくりカードを見てみるといいよ。そこからでも見えるよね?

 とりあえず、アタック!!」

スミレがクォーデに向かって走り出す。『健気な少女 スミレ・アイ』によるクォーデへのアタックだ。

「私のアタック時効果で、手札を2枚まで私の上に置く、【スミレ・パワー:2】!!」

スミレはカードを2枚、自分の上に掲げる。


「とりあえずそれは受けよう。」

宣言後、スミレの小さな拳がクォーデの胸元のカードを優しく触れる。


「続けて、『剣士集団 特攻隊』でもダイレクトアタック!アタック時に1枚ドローするよ。」


「そう言いながら律儀にそっちのフィールドに戻るなんて、

 当然のようにやってて笑いそうになったな。

 勿論馬鹿にはしてないからね、ワクワクするってことで。

 おっと、そのアタックは受ける!」


「馬鹿にしてもいなくても、ワクワクしてるならいいんじゃないかな?ターンエンド。」


「そっか、僕のターン、スタート、そしてドロー!」

(今はお互いにライフ13、フィールドのファイターカードの数は3枚、あっちは2枚多い。

 ここは1枚でも多くファイターをエンターするか?

 いや、ファイターじゃなくてもいいじゃないか。)

「もう1枚ドロー。」


「あれ、ディヴォートしたいとか言ってたよね?」


「ああ、これからするんだよ。こいつがあるから!

 エンター、ゾーンカード、『雨水滴る森林』!!」

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