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第一章 十七話 侵略者との決着

「ニョン、行くよ。

 僕のターン、ドロー、もう1枚ドロー!」


「もう使わなくてもいいけど、結構使ってきたもの、

 このくらいはスミレのように突破して頂戴。」


「うん、望むところだ!」


「クォーデの方も楽しそうだけど、こっちだって容赦はしないよ、スミレ。」


「容赦されても困るよ、モミジ。

 モミジが組んだ『村の』デッキは毎回〈赤〉だけじゃないから楽しいよ。」


「今回はこれ、『続く絶望』!

 ニョンちゃんからの借りもの、効果はもう説明しなくてもいいよね。」


「まさかモミジが除外を扱いだすとはね。」


「うわー、ほんとは違うの分かってるけど、姉妹感あって楽しそう!」


「パイアちゃん、それはモミジちゃんの気分を」


「マオちゃんありがとう、でも、もういいんだよ。

 いろいろすっきりしたからね。」


「だって!」


「だってじゃないよ、でもルナも姉妹感は分かるから堂々と(とが)めることはできないんだけどね。」


「ルナちゃんも!?」



********



「もう明日でもいいように、調整終わったね?」


「まだだよ。

 ヴィクルルなら何かまだ隠してくれていることだと思う。」


「クォーデは鋭いね、そう。

 ちゃんと用意してるよ、そういうの。」


「あっはは、そういう所はもう慣れたよ。」


そんな冗談交じりの会話は唐突に崩れ去る。

その理由は簡単。

外が一気に暗くなり、星一つ無き宵夜(よいや)が如き天変(てんぺん)

地面から恐ろしいまでの揺れの音が響き渡る。


「みんな、掴まって!!」


少年は一応それを発するが、グヴァンワの者は一切動じず軽く返す。


「もうそれくらいはやってるよ、それより、場所は?」


「〈黒〉の無法地だよ、急ごう!!」


ヴィクルルの言葉で把握したモミジとニョンが声を掛ける。


「必ず勝ってきてね、じゃないと、私許さないからね。」


「あなたたちの実力なら、きっと世界を救えることでしょう。

 待っていますよ。」


くすっ。

「そういうのいいって。

 でも、お陰で勇気が出てきた、ありがとう。」


ふたりは笑みで返す。


その時だ。


全員のデッキが輝きだした。

全員がデッキを確認した。

たった1名のデッキを除き、特に大きな変化は無かった。


さあ、謎の侵略者との決戦だ。



********



此処は〈黒〉の無法地(むほうち)。無法地本来の霞もあって、余計に闇霧(あんむ)と化している。

そんな霧の中、存在も形も謎の何かが、(ただ)カードデッキを広げて侵略を開始していた。


「待てーーーーーーーー!!

 僕と決闘だ、侵略者!」


そう叫んで静止したのは少年だ。


「良かろう、小さくか弱き人間。」

とても低い、大男のような声だ。


「「エンター、プレイヤーズ!!」」



********



「決闘開始時、『(しん)の世界の終焉(しゅうえん) (じゃ)閻魔皇(えんまおう) ハガンエンダイε(イプシロン)』の効果、

 ミドルに現れ出でて、新たな20ライフを吾輩(わがはい)が得る。」

ミドルというのは、お互いのフィールドの間に存在する領域である。


「何だって!?

 ライフ35からスタートするのか!!」


「吾輩のターン、ドロー。

 『世界侵略者側近(そっきん)集団 エンダ』、エンターせい。

 エンター時効果で、デッキから『世界の終焉を呼ぶ者』を1枚手札に加える。」


「確定サーチだと!?」


「そのまま吾輩自身、『世界の終焉を呼ぶ者』、エンター!」


謎の姿の見えない黒いものが、そのままフィールドに上がる。

「吾輩がフィールドに存在し続けている限り、

 人間のフィールドにあるカードの全ての効果が無効化される。

 このままターン終了時、吾輩のライフが30以上、よって、

 吾輩は、人間のフィールドにあるカード全てを決闘から除外する。

 これによって一度に10枚以上のカードが除外されたなら、その時点で吾輩の勝利となる。」


「「はぁ!?」」

今この場で唯一人間である少年と、吸血鬼である少女が驚く。


「つまり、僕は間接的に、1ターン中に10枚以上のカードをエンターすることを封じられたことになる。

 しかもそのカードは、僕のターン終了時にそのまま決闘から除外される。」


「合ってるよ、クォーデ。」


「ありがとうスミレ。

 手札から、『救天(きゅうてん)電羽(でんば) エンジェル・アイラ』の効果、

 自身を手札から公開して、次の僕のターンが始まるまで、僕のカードが除外されなくなる。

 その後、自身をゼロコストエンターする。

 天に羽ばたかせた電羽、世界の危機で光り輝く!

 『救天電羽 エンジェル・アイラ』!!」


「待ってたよクォーデ、さっき振り。

 フィールドに出てからは効果が無効化されたけど、

 さっき宣言してくれた効果は既に適用されてるから安心してね。」


「知ってた、これでこの2ターンは除外に怯えずに動けるよ。

 健気な少女をエンターして、『スミレの人格(ハート)チェンジ』!

 悪戯で周囲を困らせても満たされぬ少女の姿、此処に現れる、『不死の少女 スミレ・アイ』!!」


「悪戯する場所へのこのこ侵略するやつを許すような悪者(あくじゃ)では無いからな。

 クォーデ、もう指定アタックしていいか?」


「どうぞ、そのつもりだからね。」


「どちらもパワーは999999、相打ちだね!!」

マオが感動する。


「破壊されよう。」


「ふっふっふ、破壊された時、私の強制効果、ゼロコストエンターで復活だ。」


「吾輩の破壊時強制効果、吾輩は【ライフロスト:999】を行う。

 これによって全てのライフを失うことになるが、

 『真の世界の終焉 邪の閻魔皇 ハガンエンダイε』の恩恵によりまだ負けぬ。

 そして、ハガンエンダイεの上からすべてのカードが取り除かれた。

 これにより、ノーディヴォート&イグノアコストエンター。」


「えっ、ミドルから!?」


「グヴァンワに破滅を(もたら)し、その混沌を統べる者が誰なのか、非力な存在に分からせ(たも)う!

 『真の世界の終焉 邪の閻魔皇 ハガンエンダイε』!!」


何とも禍々しい、閻魔皇と呼ぶに相応しい存在がフィールド外に現れる。

とてつもなく大きい。


「このカード、自身の効果、そして吾輩自身は、人間のカードの効果を受けない。

 そして吾輩が負けない。

 つまり、人間にハガンエンダイεを倒す力が無ければ、この決闘は吾輩の勝ちとなる。」


「なんだ、そんな効果か。

 拍子抜けしたよ。

 みんなの【希望の光】が(つむ)いでくれたこのカードが、このターンでトドメを刺せるじゃんか!!

 ということで、復活した不死の少女で指定アタック!!」


「何だ、自ら破滅に向かうだけではないか。」


「いいや、そんなことは無い、ワイル、『希望の光が照らす道』!!

 フィールドに【希望の光】を持つアイラが存在する為、

 手札から【希望の光】を持つパイアをライフの上に、

 『少女』ファイターである健気なスミレをテリトリーにそれぞれ送って、

 相手のカード1枚のパワーを、このターンの間だけ0にする!」


「忘れたか?

 ハガンエンダイεとその効果は、カード効果を受けない。」


「だけど、このカードはそのパワーを参照している為に、効果を受け付ける部分だ。

 よって、その閻魔皇のパワーは0になる!」


「ぐぬう、まだ、まだだ!!」


「そして、照らす道のもう1つの効果、僕のディヴォートカード1枚を指定する。

 そのカードと同じ色のアビリティカードを、このワイルの間封じる!」

指定するのは、『絶望の始まり』だ。

「この世界に絶望はいらないし、破滅もいらない。

 僕が守るべき世界だから!!」


「お前自身をエンターさせたことが、お前の敗因だ。

 そんなヤツが世界を統べるなんて、あまりに幼いんだよ!!」


「そんな小さい奴に言われてたまるか!!」

掟破りの、決闘中にリアルファイトが始まった。

(とげ)のようなものがあたりに散らばる。


「危ない!!」

ルナは、少年と不死の少女の両方に告げる。


ふぁさっ。

不死の少女は横に居た電羽の天使のお陰で両方助かった。

スミレの体でエンターしていたので事無(ことな)きを得た。


「大丈夫、スミレ、いや、『霊王(りょうおう)様』?」


「今この時はスミレでいい。

 それに、仲間である以上は対等にだ。」


「そっか。

 回避は私がやるから、スミレは攻撃に集中して!!」


少年は恐怖のあまり狂ったパイアに異常な速度で助けられた。


「大丈夫かー、にんげんー?」

その目は(くれない)に輝き、今からお前を喰うと言われても可笑しくない表情だった。


「ありがとう、『狂月(きょうげつ)の希望、パイア・ジュー』。」


こくっ。

「あとは天使と霊王様に任せろ、にんげん。」


「早く、君達は安全な場所に!!」

ヴィクルルが〈紫〉の方を指して叫ぶ。


「パイア、僕は何としてでもこの決闘の終わりを見届けたい。

 逃げたら決闘を途中で投げ出すのと同じだからな。

 回避に専念してくれるか?」


「うん、そのかわり、あとでチをたっぷりよこせー?」


「約束だ。」


「クォーデ!

 死なないでね!!」


「パイアがにんげんをマモるから、モトにんげんヒューマノイドはさっさとニげて!!」


こくっ。


「クォーデ、さっき渡したヴィクルルのカードを掲げて!!」

横から少女神が呼びかける。


「分かった。」

決闘には使っていなかった、『永き眠りから目覚めし 創造した少女 ゼウス・ヴィクルル』を掲げる。


「ヴィクルルはグヴァンワを守って、次なる時代を此処に創る!

 其処に破壊が入るなら、何としてでも止めて見せる!!」

ヴィクルルのヒューマノイドのからだは変形していないが、浮いている。

神としての力だろう。

「ブロック、効果であなたのファイトアクションはおしまい。

 さあ、反撃だよ!!」


『霊王様』の不気味な弾と終焉を呼ぶ者の棘が拮抗していたが、

ヴィクルルがその力で棘を消した。


「何だと!?」


「「これでトドメ、ダイレクトアタック!!」」


遂に霊王様とヴィクルルが閻魔皇のカードに触れ、トラッシュへ送られる。

「ライフが――0で、吾輩の――負け――だ――」


それと同時に、空が晴れ、戦いの(あと)も消え去った。



********



「もう二度とこんな悪さするなよ、これが暁だ。

 ここからはお願い。

 決闘としてじゃなくて、遊びとして、カードで勝負してくれよ。」


「吾輩を、許すというのか?」


「もうさっきまでみたいなことをしないなら、だけどね。」


世界の終焉を呼ぼうとし損ねた者は、少し涙を流した。

「―吾輩が居た世界には、自らの言うことが絶対な少女神が居るのだ。」


「知ってる、テュドマウンジェでしょ?」


「知っているのか!?」


「知ってるどころか、ずっと前から知り合いみたいなものだよ。

 事情は察したから、話さなくていい。

 あっちは君を先兵のようなものとして仕向けただけだから。

 でしょ、ハガンエンダイε?」


「ふん、教えるまでも無いな。

 ましてや、敵なんぞに。」


ヴィクルルはその声を発したカードを、これまで以上に睨みつける。


睨まれたカードは勝手に消えていく。

捕まえようとしたが、捕まえた所で意味皆無だろう。


「こんな、ハガンエンダイεが無い吾輩でも良ければ、

 今後の誓いの試合として一つ、本気でぶつかってくれないか?

 デュドマウンジェ様から離れていいのなら、もうあんなことはせぬと。」


「勿論、相応の償いはして貰うけど、それが済んだなら、歓迎するよ。」

ヴィクルルは手早く、償いの内容を提示する。


 〈黒〉の無法地帯の監視

 「霊王様」との和解(ヴィクルルが仲介する)


「これだけでいいのか?」


「どうせこれから誓うんでしょ?

 クォーデ、勝てなかったら君に罰だからね?」


「うわ、ハードル高いよそれ。」


「多分あのデッキ、ハガンエンダイεが無くても強いから。」


「そうなの?

 じゃあ、それを確かめさせて貰うよ!」


「吾輩は(わざ)と負けるようなことはしない。

 償いの誓いといえで手加減はせんぞ!」


「手を抜くと罪増えるだろうから、僕だって実際その方がいいと思うよ。」


「「エンター・プレイヤーズ!!」」

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