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第一章 十六話 数年振りの〈赤〉への帰還、そして龍の神

「「エンター・プレイヤーズ、フォーマル・オープン!」」

『アクション・フィールド・ライフスタイル』だ。

お互いに手札は5枚。

スミレのトータルコストは60、ニョンは80でスタートした。


(うつ)ろな目をしている少女がゆっくりと先攻を告げる。

「私のターン、ドロー。」


『闇の優等兵(ゆうとうへい)』を2枚エンター。

エンター時効果で、手札から『闇のかかし』と『闇の兵士長(へいしちょう)』を破棄してデッキの上から2枚ドロー。

更にゾーンカード『巨大像』もエンターした。


「これで、コストが50以上のカードのコストが-10されるね、つまり90まで使える。」


「そう、覚えているようね。

 つまりそういうことよ。」


「何だ!?」


「貴女の力は私には及ばない、その圧倒的な力で絶望に打ち震えなさい。

 エンター、『正体不明の絶望』!」


「来たね、ニョンのエースカード。」


「エンターしたことにより〈発動条件〉達成、『終ワラナイ絶望』を発動。

 効果で、私はこのターン、『絶望』アビリティをディヴォートカード無しで発動できるわ。」


「そんなカードを隠し持っていたなんて!?」

スミレさえ見たことが無いのだろう。


ディヴォートカードはすべて実行していて、本来はもうカードを使えない状態だが、

名前に『絶望』とあるアビリティカードだけはまだ使える。


『絶望の始まり』を発動。

効果でデッキの下から6枚破棄して、上から4枚ドロー。

『続く絶望』を3枚発動。

スミレはデッキの上から8枚を公開して、

ニョンがその中からカード2枚を決闘から除外し、スミレが残りを破棄する。

そして、『続く絶望』自身がパブリックに送られ、これを3回繰り返す。

〈赤〉、〈青〉、〈黄〉、〈緑〉、〈紫〉のスミレ、計6枚が除外され、残り18枚は破棄された。


「えっやばっ、こんな綺麗に除外されちゃうことってあるんだね。」


「『絶望の始まり』をもう1枚発動、6枚破棄4枚ドロー。

 これで[メインアクション]は終了。」


「[ファイトアクション]も終えて、[シークレットアクション]に『巨大像』の効果。

 自身を実行させて、トラッシュから『闇の兵士長』をディヴォート。

 私はこれでターンエンド。」


「妨害は1枚だけ、それならこのターンで十分!」

2枚ドロー。

「『破壊兵器 ガンマ・ラン』をエンター、エンター時効果で【デッキブレイク:10】を行う!」


「エンター時効果を使われたから、トラッシュにある『終ワラナイ絶望』の効果。

 パブリックに送って、ガンマ・ランを裏にする。」


「ありがとう、発動、『正体の暴露』!

 裏になったガンマ・ランをエンター仕直して、トラッシュの『リエンターの達人 カイル』もゼロコストエンター!

 ガンマ・ランのエンター時にもう1度【デッキブレイク:10】する。

 カイルの効果でもう一度ガンマ・ランをノーコストエンターして、再び【デッキブレイク:10】する。

 さらに『闇の優等兵』を1枚破壊!」


「私のデッキが0枚になったわね。

 トラッシュにある『常闇(とこやみ)の魔術師』の効果。

 決闘から除外して、デッキを10枚回復して、【ライフロスト:3】するわ。」

ニョンのライフ3枚がトラッシュへ送られた。


「絶望は、短くていい!

 もう1枚エンター、『リエンターの達人 カイル』。

 エンター時効果で更にガンマ・ランをエンター、『闇の優等兵』を破壊して、山札を0枚に戻す!

 さあ、これでターンエンドだよ。」


「私のターン、ドローができないので、負けね。」



********



「貴女、変わったわね。」

虚ろな少女が問うように言う。


「変わったのは、みんなだと思うけどね?」

スミレはすっとぼけた雰囲気で、そして真面目に返す。


「ああそう、それなら暁を済ませてしまいましょう。」


「〈赤〉に戻ろう、ニョン・ヴィユ。

 私、いや、モミジの家にでも戻ってきて。」


「!?

 それを待っていたわ、こんな場所からはおさらばしたかったの。」

虚ろだった目に光が戻る。


「えっと、それってつまり?」


「君がクォーデね、話は少しだけ聞いたわ。

 私は元々〈赤〉の村の生まれなのよ。」

ニョンが苦しいものを思い出すように顔を(ゆが)ませる。


スミレの表情も少し曇る。

「ニョンちゃんには〈赤〉よりも〈黒〉の適正があることが分かって、

 この廃街(はいがい)に行くように脅されていったの。」


「脅してさらった集団は既にルナとリフスちゃんが取り押さえたから、再発は多分無いと思う。」


「でも、その集団の背後に何かがあるものの、その尻尾が掴めないままなんだよね。」

ヴィクルルは、そう言いながらも困ってはいない。

恐らくどういうことかは分かっているのだろう。


「〈赤〉の村に祀られている龍の神の像へ行ってみましょう。

 私はもうこの場に留まる必要が無いから、村に戻ってゆっくりするわ。」


「じゃあ、ルナが送っていく。

 モミジちゃんに話すこととかもあるからね。」

ルナがスミレに目線を送る。


「私達は休まないとだし、〈白〉の都市で一夜を過ごすよ。

 翌朝に向かう。」


「分かったわ。

 ごきげんよう。」


挨拶の部分、ニョンは〈黒〉の気配が皆無の微笑みを見せてその場を去り始めた。



********



「意外とあっさりだったね。」


「クォーデはそれでいいかも知れないけど、〈黒〉を相手にするのって意外に面倒なんだよ?」

マオが突っ込む。


「パイアも、使ってはいるけど、相手にはしたくない。」


「あっはは。」

苦笑。

後に空を改めて見る。

「もう夕方なんだね、あっという間だった。」


「数日でこの世界を知る気になっているなら、まだまだだよ。」

少年を抱える神が、同情しつつ呆れる。


「分かった気にはさせてよ!」



********



その日の夜。


「さあ、パイアのターンだよ、リフスちゃん!!」


「いくよマオ、僕のターン、ドロー!」


「ヴィクルルのターンは終わり。

 スミレのターンだよ。」


まだ相手したことの無い者同士が白熱しましたとさ。



********



「はぁーっ、楽しかったー!」

吸血鬼(パイア)は満足してベッドに寝そべる。


「クォーデ、一度使ったことあるからって対策が早いよー!」

マオも苦笑気味だが、楽しかったようだ。


「スミレ、強くなったね。」


「クリエーターカードにはもう動じないからね。

 次はどうやって驚かせてくれるか、楽しみだよ?」


「ってことだし、マオの対策をするくらいはやっていいかなって。

 それに、そういう事もしないと侵略者に勝てないと思うから。」


「クォーデは努力家だね。

 ヒューマノイドながら感心したよ。」


ヴィクルルがスミレの頬を突っつく。

「ルナから連絡、お帰りはまだ言わないけど、迎えてはくれるって。」


こくっ。


「それじゃあ、そろそろお休み。

 ヴィクルル、お願いー!」


「おやすみぃ。」



********



暗い部屋、見慣れたカードケース。

だけどいつもと違うのは、しっかりその中身が変わっていることだ。

部屋にあったカードを新たにケースに仕舞(しま)い、最低限の生命維持をして再び体を横にする。


「まだこっちでは全然だけど、まあ、その内どうにかなるよね。」



********



グヴァンワで迎えた翌朝、慌ただしい準備の後に村へ向かう一行。

特に何ということは無く、村に到着しても村人は誰も寄ってこない。


後に家へ戻ってからスミレが偽妹(いもうと)に訊いたところ、

「私が集会を開いて、騒がないようにお願いしておいた。」

だそうだ。


「さあ、此処からこの長い通路を通り抜ければ、像があるわ。」

ニョンと合流して先へ進む。


「こんな所があるんだね、最初見た時はただの物置きかと思っちゃってた。」


「このあたりは元々、私の家があったの。

 今は取り壊されたみたいね。」


「ニョンちゃんはこれからモミジの家に住めばいいんでしょ?」

スミレの問い。


「それでも、いつまでもお世話になる訳にはいかないもの。

 いつかは自分の家を建ててそこでまたひっそりと過ごすわ。」


そうして像のある広間に着いた時。


「来た、か。」


像の声を聞き、すかさず少年が問う。

「失礼なのは分かってるんだけど、龍の神っていうのは貴方か?」


「なんだ少年が来ていたか。

 話が早くて助かるな。

 我と戦え。」


「うん。」


「何かを賭けろとは言わん。

 ただ全力で勝ちを目指すと良い。」


「「エンター・プレイヤーズ!!」」



********



「お主なかなかやるな。」


「貴方こそ、やるじゃん。

 〈赤〉で、〈『ドラゴン』〉で、指定アタックするとアタック時効果が強力になって。

 そんなの最高じゃないか!!」


「ほう、気に入ったか。

 それなら我自身も耐えて見せろ!」


神籠龍(しんろうりゅう) インフィニティドラゴン・ゼウス』がエンターする。


「我がエンターした時、カードとしての我はお主のファイターカード全てと1枚ずつファイトを行う。」


「何だって!?」


「〈パワー:無限〉なのに、僕のカードで勝てる訳が!?」


「ならば、お主のファイターカード、16枚全てが破壊されたことにより、

 我のライフが17まで回復する。

 そしてターンが終了した時、我はライフカード3枚を手札とする。」


「さっきはライフ7まで削ったのに、14に回復しちゃったって訳か!

 これは震えるな。」




「グドウは【ライフブレイカー:13】になった、これでトドメだ!!」


「甘いな少年、ワイル、『スキップターン』だ。」


「な、貴方も使えるのかよ!」


「残念だったな、だが、楽しいぞ。

 お主の実力はしかと見た。」


「でも、折角だから勝ちたい、ワイル、こっちも『スキップターン』!!

 これで僕も凌いだ。」




「とっても楽しそう、パイアまで楽しくなってきた!」


「ルナも!」


「私も!」

マオが尻尾を振って感情をより分かり易くしている。




「これでトドメだ!」


「ほう、この我に勝つとは、見事だ。」



********



「一行にはこれを授けよう。」


「『神籠龍 インフィニティドラゴン・ゼウス』!?

 いいのですか龍神様!」

スミレが驚く。


「我の気持ちだと思って受け取っておけ、返す必要は無い。」


クォーデの手元にもう1枚のカードが現れる。


「そして、これは褒美だ、記念にとっておくといい。」


籠龍(かごりゅう) ビリオンドラゴン・アキレス』だ。


「このカード、【希望の光・赤】を持ってる!」


「嬉しい事は分かるが、惜しみ無く使うように。」


「一先ずはこれでいいよね、龍神?」


「ヒューマノイドとやらの少女神も出向く程の大事だ。

 今我が出来ることは全てやったからな、また(しば)し眠るとしよう。」


「ありがとうございました!!」

少年だけ後ろを振り返り、一礼して感謝を述べた。


そして、皆が広間を去る。



********



「さあ、これで今皆で場所を巡って出来ることは全てやり尽くしたよ。

 来るべき日に備えて、各自準備を怠らないこと!!」


少女神(しょうじょしん)の号令で、一時解散となった。


とはいえ、その時までの(しばら)くをディノーアレで過ごす者と村で過ごす者に分かれただけなのだが。


語るに余る程の普段を過ごしてその日が終了する。




そして数日後、遂に前日がやってきてしまった。


その日も少年達は、前日だという予兆を知らずに1日を過ごす。

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