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第一章 十四話 不死の悪霊と電羽の天使

決着の後、少年は泣いているパイアへ近づき、暁を告げる。

「暁、僕と友達になってよ、些細だけどこれでいい。」


「本当に些細だね。」


何故泣いているのか、クォーデにはあまりよく分からなかったのだが、

代わりに1つ提案することにした。


「これは暁とは別なんだけど、僕達と一緒に旅に出て、もっと強くならないか?

 勿論、少なくとも僕は、ちょっとずつなら血を奪っていいから。」


ぱあっと目を輝かせて跳び付く。

「いいの!?」


「うん、いいよ。」

パイアは完全に泣き止んだ。


「あーそれ、あたしはやめとくわー。

 こんな死体が動き回ったら吃驚するだろうし。

 あと、負けた。

 あのヒューマノイド、強いな。」

敗者のゾンビはかなり悔しそうにしている。


「あれは、私の全力でも勝てるかどうかって感じだった。」


「ルナもそう思う。」

幼馴染同士で、何か思うことがあったのだろう。


「そっちも結構早く終わったね。

 僕が頑張って14ファイター並べたのがしょぼく感じるくらい。」


「ふっふーん、私のデッキを舐められたら困るよ?」

勝者リフスが誇る。


「シー・ミル、今はかなり急がないといけないんだけど、

 君とも何時かお手合わせしたいところだ。」


「ああ、パイアを倒したお前なら楽しめるだろうな。」


少年とゾンビ少女の軽い挨拶の横で、

ヒューマノイド同士は、移動の計画を立てていた。


「ルナはパイアちゃんとマオちゃんを連れて行くよ。

 これから親睦を深める為にも、ね?」


「分かったー。」


「次は『〈桃〉の天界』に行くんだったな、お前らは。

 あそこはあたしらの力も無いと互角に持ち込めない。」


「【不滅】のことか?」


「ああ、そうだ。

 でも、そんなものが無くても私なら大丈夫だ。」

スミレの声。

しかしその手に持っているカードは〈紫〉、『不死の少女 スミレ・アイ』だ。


「何!?

 そうか、お前がそうなのか!!」

シーは何かを察したようだ。


「そうだシー・ミル、私が此処の墓地の悪霊の集まり。

 遂に墓地から旅立つ日が来たということだ。」

不死は少し怖い顔で笑っている。


「どういうことか説明して、分からないから!」


「少年、クォーデというそうだな?

 私はこの少女を依代として新たな存在となった。

 その影響でカードが生まれるのも此処では当たり前だ。

 勿論、お前やその仲間と敵対する気は無いから安心しろ。

 悪霊が故にちょいと悪戯したくなるだけだからな?」


「ふーん、僕にとってどうでもいいならそれでいい。」


「さあ、天界へ報復しに行くぞ!」


「ルナ、なんだかこの悪霊苦手かも。」


「そんなの童物の私に言われても困るよ。」

ルナとマオがこそっと会話する。


「シー、これならいいよね?」

吸血鬼が訊く。


「ああ、きっと大丈夫だろう。

 悪霊の力くらいは元人間のあたしでもよく知ってるさ。

 必ず戻って来いよ、ジュー家の娘さん?」


「うん、行ってきまーす!!」

その日、パイアは初めて〈紫〉から出た。



********



天界と言っても、空にある部分だけが天界という訳では無い。

地にも天界があるというのは滑稽かも知れないが、此処はそういう陸なのだ。


「なんか、天界って感じがしない。」


「それはそう感じるだろうね、呼ばれ迷った少年。」

新たな少女の声。


「もう唐突に誰かに返されるのは慣れたから、さっさと正体を現してくれないかなー?」


「もうそんなにグヴァンワに適応しちゃってるんだ、流石だね。

 エンジェル・アイラ、電羽(でんば)の天使の方が分かるかな?」


白羽(しろは)に人、という見た目を天使と想像する者が多いだろうが、

この少女は羽が見当たらない。

そんな電羽の天使がゆっくり地に降りながら続ける。

「他の子には何も無いけど、君にだけ感じた何か、その正体を確かめたい。

 私と決闘しないと、此処から帰さないよ。」


少年は周囲を見る。

ちゃんと皆は居るし喋っている。

でも、まるで少年と天使の会話だけが切り取られているような感じで、

他の誰も天使の存在に気付いていなければ、天使との会話だけが聞こえていないようだ。


「皆、ここでいい。

 電羽の天使が此処に居る。

 今から決闘するから見てて。」


「え、何言って―」

驚く一同。


「さあ、始めるぞアイラ!」


「うん!」


「「エンター・プレイヤーズ!!」」



********



傍から見ればクォーデが見えない何かと決闘をしている構図である。


「え!?」

パイアは驚き、喜んでいる。


ルナは憑かれて寝てしまったスミレの体を抱えながら静観する。


「まさか、本当に!?」

マオは慌てこそしたが、すぐにある違和感に気付いた。


「ルナの『大邪皇(だいじゃおう)』と似た感じのカードが!!」

リフスも気付いた。


お互いに『アクション・フィールド・ライフスタイル』で、手札5枚。

トータルコストはクォーデが50、アイラは340。

先攻はアイラだ。


「ブリングしている『バーチャル天使 エンジェル・アイラ』の効果!

 決闘が始まった時、私のフィールドにタダでエンターさせる!」


「はぁ!?」


「永い時を(また)ぎ、余りある罪へ裁きを下せ!

 ノーコストエンター、『バーチャル天使 エンジェル・アイラ』!!」

エンターしたアイラに、デッキの上からカード30枚が裏のまま乗る。


「これも効果か!」


「そうだよ、80枚デッキならデッキ残り25枚からスタートすることになるね。

 ドロー。」

天使の微笑みは終わる。

「エンター、ゾーンカード、『天使の領域』!

 〈コスト:200〉だし、1枚はディヴォートしてあるから分かるよね?」


「コストがあまりに高く、ディヴォートも出来てしまう。

 あれがグヴァンワの常識を覆した、電羽の天使のお得意ゾーンカード。

 フィールドにある間、ファイターカードが一切アタックできなくなる。

 電羽の天使、エンジェル・アイラ。

 姿が見当たらないのは、多分クォーデにしか見えないようにしているからかな?」


ルナの推測はあたり、それを示唆するように、天使が直接話しかける。


「そこまで当てられちゃったけど、決闘中だしこのまま続けるよ。」


「今私のフィールドにあるカードのコストは合計900。

 800以上なので、裁きのカード3枚をディヴォートカードの代わりに実行させ、

 アビリティカード、『悪霊への裁き』を発動!

 相手のトラッシュカード3枚迄を裁きのカードとしてフィールドに置くんだけど、

 元から0枚だから、代わりに、私の裁きのカード、実行させた3枚を手札に加える。」


「実質手札が2枚増えただけじゃないよね?」

少年の質問はスルーされ、そのまま続けられる。

視線を向けては居たので、「これから答える」ということだろう。


「手札に加わった3枚の『天使 ジャメタ』の効果、

 『裁き』カードで手札に加わったのでノーコストエンターして、

 エンター時効果で合計3枚、裁きのカードを手札に加える。

 そしてそれによって手札に加えた2枚の『天使 バリセ』の効果で、

 『天使』ファイターの効果で手札になったので、これもノーコストエンター。」


「手札が5枚のまま、ディヴォートカードも消費せず、

 ファイター5枚をエンターしただと!

 じゃあこれがあと1回できたら!!」

先攻1ターン目で決着、クォーデの負けになるかも知れない。

今はファイターカードがアタックできないから大丈夫だが、

その効果が無ければひとたまりもない。


「手札に加えたもう1枚の『悪霊への裁き』!

 裁きのカード3枚を手札へ加え、ジャメタ2枚をノーコストエンター。

 ジャメタ2枚のエンター時効果で裁きのカード2枚を手札にして、

 そのバリセ2枚をノーコストエンター!

 そして残りのディヴォートカード4枚で『天使 ラミル』を4枚エンター。

 エンター時効果で裁きのカード合計4枚を手札に!」


ファイター14枚と『天使の領域』、アイラの上には裁きのカードが残り15枚。

そして手札は5枚のまま、とんでもないものだ。


「ファイターカードがアタックできないけど、ファイトアクション!

 ゾーンカードの『天使の領域』の効果は

 ファイターカードがアタック出来なくなるだけじゃない!

 ゾーンカードが〈パワー:5000〉を得る効果により、

 パワーを得ているのでアタックが可能、ダイレクトアタックだよ!!」


「ファイターカードではないカードがアタックしたので、

 手札から『悪霊の悪戯』の効果、これを破棄して、

 僕のデッキの上から7枚破棄するか4枚ドローするので、ドロー!

 そしてこれがドロー前にもう1枚あったので、更にドローする!

 そしてワイル、『同色圧力』により、アイラのフィールドカードの色が1色だけなので、

 ファイトアクションを強制終了させ、アタックしたカードを破壊する。」


「成程ね、ターンエンド。」


「僕のターン、ドローして『生命ロボット デルタ』をディヴォートし、効果で1枚ドロー。

 更に元から手札にあった、『デッキサポーター ディゲル』の効果、

 自身をディヴォートして1枚ドロー。

 ドローした『デッキサポーター トガール』も同様にディヴォートして1枚ドロー。」


「ディヴォートとドローがいっぱいだね!」

吸血鬼は楽しそうだ。


「これでドローが同一アクションに3回、発動条件達成!

 まだ[ディヴォートアクション]だけど発動、『スミレの悪戯』!!

 手札にある『不死の少女 スミレ・アイ』を破壊して、

 相手の裁きのカードを全て、裏のまま除外!」


「でも、私の効果で、私の上の裁きのカードは相手のカード効果を受けない!」


「また、除外しようとして1枚でも残ったなら、除外出来なかった枚数分だけ、

 相手のファイターカード1枚を1回ずつ破壊できる。

 15枚だから、とりあえずアイラじゃない13枚は全て破壊して、アイラも2回破壊だ!」


「私がフィールドを離れる時、私の裁きカードを1枚手札にすると残れるので、

 2枚加えて残る。」


「破壊されたスミレの効果で自身が復活。

 悪戯で周囲を困らせても満たされぬ少女の姿、此処に現れる!

 ゼロコストエンター、『不死の少女 スミレ・アイ』!!」


「ふっふっふ、私は〈コスト:不明〉で〈パワー:999999〉だ。

 存分に困るといい、電羽の天使め。」

悪い笑いで楽しそうな悪霊だ。

依代から出てもスミレに擬態するということはかなり力が強いのではないだろうか。


「コストが不明って、どういうこと!?」

マオが解説を求める。


「ヴィクルル様によれと、〈コスト:不明〉は、

 〈コスト:無限〉より大きいもののらしいよ。

 無限を超えてかつ観測出来ないことから不明と呼ばれるみたい。」


「アイラ、お前のパワーは360000だ。これで気兼ねなくアタックできる。」


「でも、破壊された『天使 ラミル』4枚の効果、裁きのカードを更に4枚手札にする。」


「不必要な悲しみを捕らえ、氷のように融けてゆけ!

 エンター、『冷酷な少女 スミレ・アイ』!!」


「エンター時効果、【希望の光・青:7】です。

 デッキの上から7枚トラッシュへ送り、それらのカードの効果は使えません。」


「いくよ、イドゥイナヴァ!」


「はい!

 氷洞で生まれし結晶、少女として冷たく生きる!

 エンター、『蒼冷(そうれい)の氷 イドゥイナヴァ』!!」

イドゥイナヴァが氷塊(ひょうかい)ごと現れる。

「私のエンター時効果、クォーデさんは自身のカード1枚を選び、

 そのカードの【デッキブレイク】か【希望の光・青】を1つ行います!」


「勿論、『冷酷な少女 スミレ・アイ』の【希望の光・青:7】を行う!」


「そして選ばれたカードに私が装備されます!」


「そして、『魔倣石(まほうせき)少女の瞬出(しゅんしゅつ)』を発動!

 〈青〉色の『少女』が『魔倣石』を装備しているとかいう

 くっそ厳しい条件でのみ発動可能な代わりに、超強力な効果で、

 その2枚を、ノーコストで同時に再びエンター。

 そして、冷酷と蒼冷の効果で、【希望の光・青:7】を2回行う!!」

これで勝ち、と思っていたら、違うようだ。

「これでデッキアウトに―ならない!?

 デッキは85枚以上か!?」


「そう、これは100枚デッキ、あと16枚だよ。」


「瞬出のふたつめの効果、このターンの間、『魔倣石』カードが装備されている

 『少女』が破壊されたら、【デッキブレイク:8】を行う。」


「さあ、[ファイトアクション]だ!

 効果でイドゥイナヴァを実行させて、冷酷なスミレでアイラに指定アタック。

 アタック時に【希望の光・青:3】を行う!

 そして、パワーはスミレが低いので破壊され、【デッキブレイク:8】、

 イドゥイナヴァはフィールドに残る。」


「あと5枚、いける!」


「不死でも指定アタック!

 ワイルに『スミレ復活』を発動して、

 自身をディヴォートしつつ冷酷なスミレをエンター!」


「エンター時効果で、私のデッキが尽きたね。

 それで、パワーは私の方が低いから、

 上の裁きのカードを手札に加えてフィールドに残る。

 でも、裁きのカードから手札に加わった『天使 ダイバム』の効果、

 自身を表で除外して、トラッシュの〈桃〉カードを14枚までデッキの上に置く。」


「デッキアウトなりかけに対するプランは織り込み済みか。」


「流石にね、デッキアウトなんてくだらないことはさせないから。」


「そうでなきゃ困るから、有難い。

 ターンエンド。」


「私のターン、スタート、ドロー、『天使 エプス』をディヴォート。

 ディヴォート時効果で、相手のフィールドの表カードが7枚以下なので、

 コストが70以下の1枚を裏返して裁きのカードにする。」


『冷酷な少女 スミレ・アイ』が裏になる。


「『天使 ヴァヴァラ』と『天使 スプル』を3枚ずつエンターして、

 そのままフルアタックへ!

 ヴィヴィラのアタック時効果で、クォーデには自身の手札のカードを合計3枚、

 裁きのカードとして君のフィールドへ置いて貰うよ。」


「全部ライフだ!!

 そしてライフカードを手札にしたので、

 『デッキサポーター リブ』の効果、自身をディヴォートして1枚ドロー。」


「これでターンエンド。」


「さあ、行くぞ、スタート、ドロー、『赤色(せきしょく)拳兵(けんぺい)』をディヴォート。

 そして手札10枚を全てエンターだ!」


『イリュージョン・アーティスト』と『デッキブレイクハンター ダッカ』が4枚ずつ、

『健気な少女 スミレ・アイ』と『自然を愛でる少女 スミレ・アイ』が1枚ずつだ。


「健気のエンター時効果でデッキの上を5枚公開して、

 その中の『「私は諦めない!」』を手札に加えて残りをデッキの下に戻し、

 自然のエンター時効果でデッキの上を3枚公開して、

 ディヴォートせずにそのまま3枚ドロー。」


「思い切ったね。」


「こっちもそのままフルダイレクトアタックだ!」


「健気なスミレのアタック時、【スミレ・パワー:2】により、

 僕の手札2枚をスミレの上に裁き状態で託す。」


「じゃあ、11ライフで受けるね。」


「残り4、勿論これで勝てるという訳じゃないけど、

 それでもまだ、負けるには早いと思う。

 ターンエンドだ。」


「それじゃあ、私のターン。

 このターンを耐えてみてよ!」

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