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第一章 十一話 マオの光、闇と神に照る

「さあ、砂地は出たものの、次は何処に行こうか。」

少年は行き先を知らないから訊くのは当然だ。


「進行方向的に、このまま〈青〉の水壁(すいへき)まで向かうのが早いね。

 途中で〈緑〉の森林も通れるから、先に行けるといいね。」


「でも、そう言うマオも厳しそうでしょ?」

ルナはちょっとだけ呆れる。


「それなら心配ないよ、こっちで準備してあるから。」

唐突に他の少女の声。


「!?」

ルナは瞬時にびくっとする。


「へー、ありがとう。

 それで、お前は誰だ?」


「ヴィクルル、何故此処に!

 〈白〉の都市はどうしてるの!?」


「ルナちゃんさっき振りー、ちゃんとヒューマノイドに任せてあるから大丈夫。

 初めましてクォーデ、『ゼウス・ヴィクルル』と呼ばれている、グヴァンワの神だよ。」


「へぇ、貴女が。お姉さん的なかと思ったら、スミレ達のような感じとは。

 で、挑発か?」

軽くだけヴィクルルを睨む。


「先に訂正だけしておくけど、ヴィクルルは味方だから。

 対立する気は無いし、〈緑〉と〈青〉は今日中に、一緒に行動して済ませるつもり。

 スミレには勝手ながら残酷なことをしたし、悪かったとも思ってる。

 それも、君に来て貰ったのも理由があるからなの。」


「ライアから聞いた、でいいんだよな?」

〈橙〉の童園(どうえん)の「獅子様」だ。


「それでいいよ。

 その為に、ルナを徹底的に鍛えて、スミレにトレーニングさせた。

 誘拐を指示したのはヴィクルルだから、恨むなら好きなだけ恨んでいい。

 いろいろ訊きたいことがあると思うから、説明は〈白〉に着いてから。

 信用できないかもしれないけど、〈緑〉と〈青〉はさっさと終わらせる。

 それで納得してくれないかな?」


「僕はいい。」

(何、この感じ?)

発言の直後に異様を感じ、スミレの方を見る。

「スミレ―!?」


「―さない。許さない。許さない!!

 ああああああああああああーーーーーーーーー!!!!」

甲高い悲鳴が砂地付近に響き渡る。


ばたっ―ゴォォォォォォォォォ。


「ヴィクルル、お前がやったのか、お前のせいか、お前がルナを!!!」


「!?この感じは―」


「ルナ!?まさか!」


(そうだよクォーデ、これが誘拐された時に感じた気配。

 そしてこの感じは、〈黒〉!!)

そのメッセージを、ウィンドウを出現させ少年に見せつける。

「ルナならここだよ、スミレちゃん!!」


「今はそんなことどうでもいい、ヴィクルルをどうにかしないと気が済まない!!」


「―そこまで言われたら、先にこっちを済ませないとダメそうだね。」

暫しの沈黙の後、そう切り出したのはヴィクルルだった。


「え!?」


「クォーデ、君がスミレのカードをデッキに入れて、ヴィクルルと決闘するの。

 君が勝てば、当然、君の暁を受け付ける。

 ヴィクルルが勝ったら、スミレをここで殺すつもり。

 勿論、〈黒〉のスミレだけね。」

予定変更、というヴィクルルの合図。


「スミレはヴィクルルをどうにかできる。君は暁を言い渡せる。

 ヴィクルルが勝てば今のスミレは消えるかも知れない。

 ルナとマオちゃんは?」


「見届けて、多分できるのはそれくらい、

 ―これは便宜上は決闘だけど、本質はそうじゃない。

 〈白〉でやろうとしていたことを先にやるだけ。

 クォーデ、君が何処までできるようになったか見せて貰うよ!」


「本気で勝つつもりでいいんだね?」


「うん。」


置いてけぼりの黒猫が耐え切れず部外者ヒューマノイドに問う。

「ねぇねぇ、『神様』は何をやろうとしてるの?」


「クォーデの実力を見るの。

 ヴィクルルは本当に、獅子様が言うように、グヴァンワを守ろうと動いてる。

 クォーデ達を利用した形にはなったけど、その意図に嘘が無いことは、

 ヒューマノイドになった今のルナには分かる。」


「それなら、私もクォーデに協力する!

 このまま部外者のままだったら、今の私から変われない気がするの!!」


ルナが驚き、すべてを理解したかのように笑う。

クォーデもヴィクルルも、お互い構えながらマオを見る。


マオは自分自身のカードを童園へ向けて願う。

「みんな、マオのことを待ってる。待ってくれているみんなの役に立ちたい。

 その為に、私はできないと決めつけて諦めていた心の強さをものにする。

 仲間と共に笑い合い、時には恥ずかしいこともさせられ、

 〈黒〉の怖さに怯えそうになっても、きっと一緒なら、強くなれる!

 【希望の光】よ、私に灯れ、エンター!!」


かっ!

マオが〈橙〉の光を纏う。


「『仲間を想う少女 マオ・ウィッタ』!!」

宣言と共に『仔猫の少女 マオ・ウィッタ』のカードが分裂し、片方が宣言されたカードとなる。

両者共驚きは見せず、唯々(ただただ)()れる。


「クォーデ、これをデッキに入れて、勿論スミレちゃんのカードも!!」

マオが出したのは先程のカードを含めて3枚、気合の入った手渡しだ。

少年がこれ程自信溢れたものを感じたのは初めてだろう。


「ルナのこれも!」

〈黄〉と〈白〉と〈黒〉、3色それぞれのルナも渡される。


「ふん、気に入らないが、私らの分もくれてやる。」

『闇の少女 スミレ・アイ』と『魔魂(まこん)の少女 スミレ・アイ』、

そして〈赤〉と〈青〉もある。

此処に居る少女達が勢揃いだ。とはいえ、ヴィクルルも少女だが。


今のデッキにそのままそれらを投入した少年が向き直る。

「分かった。さあ、始めようか。ヴィクルル!!」


「始まる前に、騒ぎにならないように、カモフラージュだけはしておくね。

 ルナちゃん達が入ったデッキで勝てるなら、勝って見せて!!」


周囲の景色が一変して、砂地近辺であることが嘘のようになる。


「「エンター・プレイヤーズ!!」」



********



お互いにアクフィラ、リヴィール無し。

クォーデは手札5枚、トータルコスト40。

少女神、ヴィクルルは手札5枚、トータルコストは200。


「ヴィクルルの先攻、ドロー。

 『幼き創造主 ゼウス・ヴィクルル』をエンター!

 このカードは〈コスト:40〉、〈パワー:38000〉、

 〈色:白〉、〈プロパティ:『ヒューマノイド』/『少女』〉。

 そして、〈カテゴリー:クリエーター〉。」


「〈クリエーター〉、これが神様の―」

マオは当然見たことが無いので驚きを見せる。


「これは一番強いデッキじゃない。

 今のこのデッキでもグヴァンワの最高峰と呼ばれている、

 此処のレベルの低さを覆すのが君達の筈だから。」

瞳だけは笑わず、本当はこんなものじゃないと受け取れる態度だ。


「へぇ、それは嬉しいな。

 何でなのか分からない。

 クリエーターカードみたいなものを見れるって直感したから、これは震えるよ。

 僕は〈クリエーター〉を持ってないけど、それでも勝って魅せる!!」


「『情報通なヒューマノイド』をエンターさせ、エンター時効果。

 ヴィクルルのフィールドにクリエーターカードがあるので2枚ドロー。

 ライフコスト1を払って、更にディヴォートカード2枚を準備させる。」


「アビリティ、『イカサマ創造』を発動!

 効果で、ヴィクルルの手札のカード全てをクリエーターにオリジンインすることもできるけど、

 今回はヴィクルルの手札を全てデッキの下に戻して上からその分ドローする。」


「引き直しか。オリジンというのは、カードの下のことだな?」


創造主はこくり。

「そしてこれは、追加でライフコスト1を支払うことで、トラッシュからでも発動できる。

 もう一度引き直す! 二度! 三度!」


「ディヴォートカードの分までできるのか、いいな。」


「引き直してドローした情報通をもう1枚エンター、2枚ドローして、

 ライフコスト1を支払い、ディヴォートカード2枚を準備!」


「そしたら、またライフコスト1を支払って引き直して、それをもう一度!!」


「6回も引き直しして、ディヴォートカードも使い切って、何をしたいんだ?」


「違う、そうじゃない。問題はそこじゃない。

 ライフコストを1ずつ支払ったことがミソになる。」


「そう、ルナちゃんの言う通り。

 そして、このターン、ライフコストを5回以上支払ったことにより、

 〈エンターコスト〉を支払わずにエンター!!」


「何!?ディヴォートカードすらいらないのか!?」


「〈エンターコスト〉。それには、ルナ達がいつもやってるような、

 ディヴォートカード1枚を実行させる行為も含まれる。

 でも、カードに書かれている場合は、その要求を全て満たすだけでいい。

 トータルコストもいらないし、ディヴォートカードも必要無い。

 でも、それすらも要らないということ。」


「コストは400、だけど、今はそれもお飾り。

 自らへの戒めと数々の苦難を越え今(なお)次に繋ぎ続ける少女は、君を試す!

 クリエーター、『{何時いつ()()が救わるる(まで) ヴィクルル』!!」


「コストが400、こんなに高いのは初めてだ。」


「エンター時効果で引き直しして、〈白〉のディヴォートカード5枚全てを準備させる。

 更に、『イカサマ創造』での引き直しをもう3回行う。」

これでヴィクルルのデッキは一周した。

「救わるる迄の効果、自身を実行させ、ライフコスト1を支払うことで、

 このターン中に支払ったライフコストの分だけ、トラッシュカードをライフの下へ。

 ライフコスト1を支払ったのは10回、よってライフが10回復する。

 5以上回復したので2枚ドロー。

 10以上回復した上で15以上に戻ったので、このターンアタックできなくなる代わりに、

 相手のライフカード5枚までをデッキの上へ送る!」


「は!?」


「ただし、これによって、相手のライフを3以下にしてはいけない。

 アタックできないので、これでターンエンド。」


「これで神様は、ライフの上5枚以外の自身のカードの場所を全て把握していて、

 ディヴォートカード2枚と、フィールドにファイターとクリエーターを2枚ずつ残している。

 」


「僕のターン、さっき迄ライフだったカードをドロー。もう1度。

 『チャージ・フィーバー』を発動!手札2枚をディヴォート。」

『スミレ復活』と『仲間を想う少女 マオ・ウィッタ』だ。

「ディヴォートしたマオの効果、デッキの上から12枚をパブリックへ送り、

 その中の『少女』ファイターを1枚だけエンターして、残りの11枚を裏にして並列させる。」


「お願い、私の新たな力!!」


「トゥウェルヴ・パブリックイン!!

 『仔猫の少女 マオ・ウィッタ』をエンターし、並列だ。」


「よし、私のエンター時効果で、デッキの下からさらに3枚並列!」


「10枚以上同時に並列したことで、このターン、ディヴォートされている想うマオを、

 『少女』ファイターの上にエンターさせることができるようになった。

 よって、そのまま仔猫から仲間を想うマオへ!」


マオが一度跳び、その間に姿が変わる。

「私のエンター時、並列している、裁きのカード全てをクォーデの手札に!!」

裏向きのカードのことを、裁きのカードと呼ぶらしい。


「クォーデの[メインアクション]の間、私は【希望の光・橙】を照らし出す。

 クォーデは、カードをエンターする際のディヴォートカードの代わりに、

 自身の手札1枚を私に託してコストの支払いとすることができる。」


「じゃあ、トータルコストが足りなくても、それだけでいいの!?」


「うん、そうだよルナちゃん。」


「『届く筈の想い』を発動!

 手札からファイターを4枚破棄して1枚ドローする。」

アビリティカードを発動する場合はマオの効果の恩恵を受けることができない。


「えっ、それって―」


マオが驚いたのは破棄したカード、

『冷酷な少女 スミレ・アイ』、『健気な少女 スミレ・アイ』、

『ヒューマノイド少女 ルナ・ムーン』、『邪皇の眷属 ルナ・ムーン』だ。


「クォーデ!?」


「ねえ、クォーデ、本気なの?

 私達を見捨てる訳じゃないよね?」


マオの語り掛けには優しい顔で答えてから、クォーデは続ける。


「無理矢理だけど条件達成。

 マオ、このカードを頼む。」

コストの代わりをマオへ手渡しする。


マオはしっかり受け取り、自らの横へ裏向きで並列させる。

「託されたカードを破棄すれば、破壊されても此処に残れる。

 それは仔猫の方と同じだよ。」


こくっ。

「〈エンター条件〉は、『少女』カード4枚以上がトラッシュに存在すること。

 エンター、『魔魂の少女 スミレ・アイ』!」


「ありがとうクォーデ、〈黒〉のスミレが怖くてびくびくしてたんだー。

 エンター時、トラッシュカード5枚までをテリトリーへ送れるよ。」


「『届く筈の想い』だけを残して、残り5枚をテリトリーイン!」


「ちょっと、クォーデ、あれを見て!!」


どうしたと問う前に、異常事態に気付く。

魔魂のスミレは確かにフィールドに立っている。

しかし、フィールド外に、スミレが残ったままなのだ。

様子を見るに闇のスミレだろう。


「安心して、これは私と彼女が違う存在だから起きる事象。」

魔魂が心配を解く。


「ああ、こんな奴と同じ訳が無いだろう。早く私を出せ!!」

そして闇は催促する。


「悪いけど、まだ出番じゃない、もうちょっと待ってね。

 もう1枚どうぞ、『奇術師 ルナ・ムーン』をエンター。」


「成程、どうやらルナ達に伝えたいことがあるらしいね、不器用。

 エンター時のテリトリー送りはどれにするの?」


「当然、『何時か誰が世が救わるる迄 ヴィクルル』だ。」


「テリトリーに送られる、救わるる迄の効果、

 ヴィクルルのフィールドにあるファイターカード1枚をデッキの上に送って、自身を残す!」


「つまりあと1回耐えると、分かったよ。

 はい、3枚目。エンター、『リエンターの達人 カイル』。

 エンター時、ディヴォートカードを使わずにルナをエンターさせ直す。

 今度も救わるる迄だ、頼む。」


「エンター時効果だね、勿論!」


「それならもう一度ヴィクルルを残す!」


「さあ、これでやっと出番だ、発動、『スミレの人格(ハート)チェンジ』!!」


「あれは!?」


「フィールドのスミレと手札のスミレを入れ替える!!」


「つまりまさか!」

ヴィクルルだ。


「『魔魂の少女 スミレ・アイ』、ごめんな、直後にもう1回エンターさせたいんだけど、

 また〈エンター条件〉を達成してない状態に戻ったんだよ。」


「自作自演じゃん、まあエンター時効果使いたいよね、分かるからいいよ。

 手札で待ってる。」


「ハートチェンジ!『闇の少女 スミレ・アイ』!!」


「〈エンターコスト〉の支払いを回避するとは、流石だな、クォーデ。

 ライフコスト4は流石に重いようだな。」


「後、何故か裏向きで出る効果があるのが厄介なの。

 代わりにパワーが無限なのが有難いけれど。」


「代償ってヤツだ、分かっている癖に。

 ファイトの準備が出来たら言いな。」


闇の睨みも笑顔で返す。


「待ってくれて助かるよ。

 発動、『テリトリーロスト』!

 自分のテリトリーカード全てを破棄する!

 破棄したカードが5枚以上なので3枚ドローできる。勿論ドロー。

 という訳でお待たせ、マオへ1枚託しエンター、『魔魂の少女 スミレ・アイ』!」


「あまりに早い再エンター、そして、もう1度5枚をテリトリーイン!」


「これでお任せ。

 更に、手札から『スミレ復活』を発動!

 トラッシュに残した『健気な少女 スミレ・アイ』をエンターし、自身をディヴォート!」


「ありがとうクォーデ、君のお陰でまた私を取り戻せた。

 でも、こんなに私達を集めて、一体何を?」


健気な少女の問いに、魔魂がそっと耳打ちする。気付いているらしい。


「エンター時効果、上から5枚見て、〈赤〉1枚を手札に加える。

 『村の村長』!そのまま1枚託してエンター!

 エンター時効果で1枚ドローし、『挑発』をディヴォート!」


「発動、『少女達の呼び声』!

 僕のフィールドに『少女』ファイターが5枚以上あるので、

 テリトリーから『少女』ファイターを3枚までエンターする。

 『冷酷な少女 スミレ・アイ』、『ヒューマノイド少女 ルナ・ムーン』、

 『邪皇の眷属 ルナ・ムーン』!!」

手札2枚と、ディヴォートカード1枚をコストにする。


「遂に揃うだけ揃いましたね。私のエンター時効果、【希望の光・青:7】です。」

クールながら、今回は何かあると分かって、誰も睨まない。


「今此処に、9枚の『少女』カードが揃った!」

4色のスミレ達、3色のルナ、そして、2枚重なったマオ!


「もしかして、最初からアレを!?」

マオは知っている。

これからエンターするのは、既に出ている2種類以外の自分自身なのだから。

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