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9回目 数百年の時間をかけた成果

「陰謀論がここまで効果的だとはねえ」

 自室で報告を読み上げて感想を漏らす。

 誰もいない部屋の中、独り言ではあるが言わずにはおれなかった。



 陰謀論。

 前世でそう呼ばれるものを一つ一つ試していった。

 効果のほうは眉唾だったが、意外とこれが上手くいった。

 おかげで宝来王国はかつての姿から想像できないほど発展している。



 事を開始してから数百年。

 不老という能力を持つヒロサキは、静かに成果を確かめていた。

 その能力の特性上、表舞台に立つ事は出来ず。

 裏で暗躍してきた結果を。

 それはヒロサキにとって十分満足のいくものだった。



 相変わらず宝来王国は大陸北方の小国である。

 人口そのものは数百年前よりは増えたが。

 それでも、厳しい自然環境の中で生きてるのは変わらない。

 だが、その内実は大きく様変わりしていた。



 大国内部に作り上げた事実上の植民地。

 そこに住む宝来王国人は、既に大国の先住者達の3割以上にもなっている。

 その人口は更に拡大し、いずれは半分以上が宝来王国民で占められるようになるだろう。

 大国の先住民達の人口減少も大きな助けになっている。



 その宝来王国植民地との経済的な結びつき。

 それが宝来王国本土にも波及してくる。

 様々な知識や技術。

 そして高品質な文物。

 これらは宝来王国は確かに豊かにしてくれた。



 今や技術や知識においては、大国に匹敵するところまで向上している。

 それらはせっせと大国のものを手にしてきた結果だ。

 更にそれらを向上させる研鑽も怠らなかった。

 おかげで宝来王国は、技術立国・研究国家として名をはせている。



 大国周辺の小国達は、そんな宝来王国との関係を強めている。

 商取引に留学先として、宝来王国は高い人気を誇るようになった。



 軍事力も高く、大国と言えどもおいそれと戦争は出来ない。

 宝来王国を既に危険視し、明確な敵対国扱いしていてもだ。

 既に高度な軍事力をもってる宝来王国に攻め込むのは難しい。



 それでもまだ国力差はある。

 戦えば大国の方が勝つだろう。

 しかし、損害も大きなものになる。

 それが大国を躊躇させていた。



 若年層の少なさも理由になっている。

 ただでさえ子供や青年が少ない大国だ。

 戦争でこれらを更に減らしたら、国の根幹を揺るがしかねない。



 大して宝来王国側は、若年層が多い。

 それらを失う事は、人として好ましいとは思わない。

 だが、国家の損失として見れば、十分許容できる範囲ではある。

 好んで戦争に踏み切る事はないが、なったとしても損失に怯える必要は無い。



 今も順調に、平和的に侵略は続いている。

 大国には人口浸透と平和宣伝で戦意を奪いながら領土を強奪し。

 周辺の小国には国力差を示す事で、摩擦や衝突が起こらないようにしていく。

 もっとも、かつての大国のように、威張り散らして敵意を抱かれるのは避ける。

 下手に対立しても良い事は無い。



 国から出ない。

 小国達とはお互いにそんな不干渉主義を徹底していく。

 国民は国外に出ない。

 出るとしても、一時的な滞在や旅行に限る。

 商売や物資の行き来はやむをえないが。

 それらも、国境に設置した市場でのやりとりで終わらせる。

 相手の国は可能な限り、ほぼ絶対に踏み込まない。

 自分の国にも相手の人間を入れない。

 そんな棲み分けを徹底し、それでかなり上手くやっている。

 ヒロサキからすれば、これが最適解に思えた。



 そしてヒロサキだが。

 今も昔とあまり変わらないこじんまりとした屋敷に住んでいる。

 末端とはいえ、王族の住居としては質素なものだ。

 何せ大きさは、少し大きな日本の二階建て一軒家程度しかないのだ。

 間取りでいうと、6LDKくらいだろうか。



 内部の装飾などもほとんどない。

 豪奢な飾り付けなどを排除した、簡素なものになっている。

 これを王族の住居と言っても、信じる者はほとんどいないだろう。



 だが、その実態は高度なものだ。

 寒冷地域対策の防寒設備は、現状で最高のものを用意している。

 家の断熱性は高く、暖房器具も充実している。

 生活用品も、可能な限り最良のものが揃えられている。



 最新技術である、電信や電話。

 そういった機器も設置されている。

 最新の情報を常に求めるために必要不可欠なので揃えている。

 台所のガスコンロや蛇口の水道なども。

 電気式の冷蔵庫も完備だ。

 更に実用化した蒸気機関による発電設備も揃えてある。



 見た目は小さいが、ヒロサキの住居は最新技術が用いられている。

 それは、彼が自宅を実験施設として使ってるからでもある。

 試作品や試験品はヒロサキの住居で用いられ。

 そこで得られた情報をもとに、改善改修が進められていく。

 おかげでヒロサキの家は、常に最新技術により更新され続けていた。



 そんな家の中で世界情勢を眺めていく。

 国の安泰をはかるために。

 それがもたらす、安定した生活のために。



 しかし、まだまだ情勢は未知数だ。

 大国はいまだに大国で、大きな脅威である。

 小国達との関係も難しいものがある。

「ぐーたら生活はまだ遠いか」

 そう思うとため息が出て来る。



 しかし、手を止めるわけにもいかない。

 いずれ本当に面倒が無くなるその日まで。

 長い時間を使って、安泰を目指さねばならない。

「さて、どうしたもんだか」

 今日も報告書を手にして頭を悩ます。

 問題の解決策を求めて。


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