8回目 平和な侵略
宝来王国出身者で占められた地域。
その地域を支配してる大国先住民の統治者達。
それらも既に、宝来王国出身者の意のままに動く存在になっていた。
彼等の足下は既に宝来王国民によって制圧されている。
労働者のほぼ全ては宝来王国出身者だ。
それらが仕事の実務を回している。
彼等が消え去れば、地域の全てが崩壊する。
それに、統治者達への付け届けも送られてくる。
金もそうだし、様々な便宜をはかってもらえる。
そうしてくれる者達を統治者が蔑ろにするわけもなかった。
そんなわけで統治者も宝来王国出身者への便宜を図る。
居住地の整備計画などを承認し、宝来王国出身者が暮らしやすいように。
それも統治者達に不利になるものではない。
居住地の整備などで金や労力を出すのは、宝来王国出身者だ。
統治者達の懐が痛むわけではない。
権限や権威が脅かされる事もない。
ただ承認して許可を出す。
それだけで良いのだ。
しかもだ。
たったそれだけの事に、宝来王国出身者達は返礼を持ってくる。
その恩恵を考えれば、求められる計画の承認など簡単なものだ。
統治者からすれば、失うものは全く無く、利益だけが手に入る。
こんなにありがたいものはない。
そうして宝来王国出身者は大国内に居場所を確保していく。
その居場所も、場所を選んで入植していった。
さすがに利便性の高い場所は選ばない。
そんな事をすれば、現地人との摩擦や衝突を生む。
それよりも、あえて使い道が無い場所を。
交通の便が悪かったり、荒れ地で住むには適さない場所だったり。
そういった所に居住地を構えていく。
おかげで、大国の先住民達に警戒される事もなかった。
そんな荒れ地や不便な場所を開発していく。
確かに大国の中ではあまり良い場所ではないだろう。
住むのに苦労は大きい。
しかし、それもより北方の厳しい環境に比べれば些細なものだ。
宝来王国の生活環境は厳しい。
それこそ、大国の荒れ地などが可愛く見えるほどだ。
まだしも温暖な大国の方が住みやすい。
それが大国では北方に位置する、大国内では過酷な地域でもだ。
そういった地域に入りこみ、住居を建てて水を引いていく。
荒れ地なので耕作や牧畜には適さないが。
それも宝来王国出身者には関係が無い。
そういった方面はとっくに切り捨てている。
彼等の得意とするのは、工業などの二次産業などだ。
そちらの産業を興していく。
そうして大国において生活用品などを生産していく。
品質は相変わらず大国のものには及ばない。
だが、安く大量に作れる。
それらが廉価品として大国内に浸透していく。
そうした安値攻勢が、大国の地場産業を崩壊させていく。
小さな工房や商店などは、安値に耐えられずに店をたたんでいく。
そうして路頭に迷った職人や商人を、宝来王国出身者が回収していく。
本来ならばどれだけ金を積み上げても手に入らなかった技術や知識。
それらを安値で買い取っていく。
これにより、宝来王国側の技術や知識は更に増大していった。
あるいは、流言飛語を飛ばして評判を落とす。
大国側の製品にそういった評価をつけていく。
そうする事で、大国側製品の購入を控えさせる。
場合によっては、でっち上げをしてでも。
そうして大国側の店や工房が衰退したところを突いていく。
こうやって大国内における居場所と、産業などを手に入れていく。
様々な工作を駆使して大国内に浸透していく。
寒冷で、人が住むに適さない宝来王国の人間が、まだしも温暖な地域で数を増やしていく。
それは事実上の植民地だった。
一回の戦争もなく手に入れた国外領土。
年々人口を減らす大国人に代わり、大国北方の地域は着実に宝来王国人に入れ替わっていった。
そんな動きへを警戒する大国人もいる。
それらは現状の問題を説き、国の安泰を計ろうとする。
しかし、そういった動きを、外国人への差別だと糾弾して黙らせる。
また、外国人が大国の労働をどれだけになっているか。
どれほど大国に貢献してるのか。
それを説いていく。
そうやって道義的な、人倫的な見地から糾弾していく。
警鐘を鳴らした賢人や志士は、これらによって潰れていった。
更に宗教や娯楽でも浸透していく。
宗教はヒロサキが適当にでっち上げたものを。
それを宝来王国の自分の領地や大国内でひろめていく。
大国にもある土着の国教たる宗教との摩擦も当然生まれる。
しかし、それらを宗教弾圧として避難していく。
大国の国教宗教の持つ寛容の精神に反するとも。
更に演劇や歌劇、絵画やお伽噺といった娯楽も蔓延させていく。
宝来王国製という事を押しだし、大国内での評判を高めていく。
更にそれに各国各民族との融和を盛り込んでいく。
それを読めば、自然と融和を考えるように。
それらを通して流行・ファッションというものも拡散していく。
美しい服装や装身具などもそうだが、考え方も同時にひろめていく。
今が楽しければいい。
将来など考えない。
協力や協調よりも、自立・独立を。
思いやりやいたわりよりも、自分の意志や願望を。
これらを前提に生きる。
面白おかしく、享楽的に生きる。
稼ぐのはその為だと。
そこに、家族や家庭はない。
それらについては一切触れない。
これを読んだ大国の先住民達が、家庭などを考えないようにするために。
そうして時間をかけて工作をしていく。
大国の人間を少しでも減らしていけるように。
それを気取られぬように。
穏便に、静かに、そして着実に効果を出せるように。
その効果はさすがにすぐには出ない。
これもまた数十年の年月をかけて醸成され、効果を出してく。
しかし、途切れる事無く続ける事で、成果をしっかりと出していった。
大国内での人口減少に拍車がかかる。
そうして出来た穴を、宝来王国出身者が埋めていく。
大国の中でそんな動きが加速していった。
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