7回目 与えた影響の大きさと小ささを考えて
「意外と上手くいったな」
大国内における、大幅な人員移動。
職人や商人、そして労働者など。
様々な分野にいた宝来王国出身者達。
それらを別の地域に引っ越しをさせた。
それらは、宝来王国出身者と現地人の衝突への対策として行った。
ついでに、そうした場合の影響はどれだけ調べる為でもある。
結果として、一部地域がゴーストタウン化。
経済活動が完全に崩壊する事となった。
ヒロサキもそこまで効果があるとは思わなかった。
だが、限定的だが一部に強い影響を与える事になった。
それだけの影響力があるのは確かである。
一方で。
それだけしか出来ないというのも確かだった。
確かに小さな町一つくらいを壊滅させられる。
ちょっと引っ越しをするだけで、町をもぬけの殻に出来る。
町一つ分くらいの経済は潰す事が出来る。
しかし、それで全てが終わってしまう。
町一つが事実上消えた。
だが、それだけだ。
国が消えたわけではない。
傾いたわけでもない。
大国は相変わらず問題無く存在している。
その機能も損なわれていない。
あくまで小さな町一つの問題なのだ。
そこが潰えたところで何の問題にもならない。
ただ、そこに住んでいた者達が困るだけ。
それとて、ならば別の場所に引っ越して新しい生活を始める。
それだけで終わるものだ。
頼る伝手のない者はそうもいかないだろうが。
しかし、それとてもだ。
仮にそこにいる者達が失意と困窮の中で潰えるとしても、
それが大国に大きな影響を与える事もない。
ただ、悲しい出来事があったと言って終わる。
より大きな範囲で更なる被害が発生する事は無い。
連鎖的に更なる悲劇が続く事もない。
これが引き金で国家崩壊に至るわけもない。
珍しい出来事ではある。
しかし、被害は計上する必要もないほど軽微。
その程度なのだ。
「さすがだね」
大国の大国たる所以を見た気がする。
同じ事が宝来王国で起こったら大惨事だ。
職人や商人が町一つ分消えたりしたら。
それだけで国が揺らぐ。
それをきっかけに人が離散しかねない。
それくらい宝来王国は脆弱だ。
規模も小さい。
「やっぱり簡単にはいかないよな」
今回の出来事を見てつくづく思う。
大国はやはり強大だと。
ちょっとやそっとの事ではびくともしない。
「けど、全く何も出来ないわけでもないか」
確かに大きく強い。
しかし、全く何も出来ない相手でもない。
小さいとはいえ、確かに効果的な事をしたのだ。
やり方次第で対抗も出来る。
小さいとはいえ、影響を与えたのだから。
「もうちょっと頑張ればどうにかなるかな?」
そうも思う。
ただ、何にせよ時間は必要だ。
何十年、あるいは100年単位で事を起こしていかねばならない。
幸いな事に、それは問題無い。
時間だけならヒロサキには幾らでもあるのだから。
焦る必要は無い。
小さくても少しずつ積み重ねていけば良い。
それから更にヒロサキは人を送り込み続ける。
大国内に入り込んだ宝来の者達との連絡も取り合う。
それらの大半は、何世代にもわたって大国で生きていた者達だ。
生まれ育ちはもう大国の現地人と言ってもよい。
だが、それでも彼等の心は宝来王国にある。
どれ程教育を施そうと、どれだけその地にいようともだ。
国や民族というものは変わるものではない。
そんな者達を用いてヒロサキは、大国内における立場の獲得を目指す。
まずは小さな成功を作る。
その成功を大きく育てる。
基盤を作る。
まずは裾野を拡げる。
質の向上はそれから始まる。
基盤のない所に質の向上はない。
宝来王国の民は、今はまだ大国内における底辺に広がってる段階。
だが、その底辺を更に増やしていく。
下層労働者や単純労働者、日雇い労働者。
それでいいからとにかく人数を増やす。
その上で、高い地位を奪っていく。
あるいは作り上げていく。
それから更に数十年。
ヒロサキは大国内に宝来王国の基盤を作り上げていった。
これにより、大国の一部地域は宝来王国出身者で制圧された。
統治者や富裕層にはまだ大国の先住民が残っているけども。
それも大きな影響力を持ってるわけではない。
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