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お漏らしあそばせ精霊姫  作者: ななぽよん
【4章】魔法学校編(9歳春~)
89/228

89話:文化祭、中編。野外展示はスチームパンク味

ブクマ1000達成ぱちぱちぱちぱちっ

「ただいまよりチェルイ魔法学校文化祭を開催いたします! ぱちぱちぱちぱち!」

「わーっ! ぱちぱちぱちぱちっ」


 私とルアがぺちぺちと手を叩いた。

 私は自スペースにて、いつものみんなと、さらに様子を見に来たカードゲーム愛好会副会長眼鏡先輩へ開催の挨拶をいきなり宣言した。これがないとコミケは始まった感じがしないからね。コミケじゃないけど。


「それじゃあスペースよろしくね」

「おう。任せとけ」


 ヴァイフ少年に親指を立てて、私はトートバッグを肩に書け直しいざ出発!

 まだ気合入れるほど人は集まっていないけど。あれー? おかしい、開場ラッシュは? きょろきょろ。

 まるでマイナージャンルの島状態だが、どこもまだ人はまばらだ。やはりコミケじゃなかった。


「なんかおかしくなってますねこいつ」


 ロアーネにほっぺをつんつんされた。ついにこいつ呼ばわりしてきた!?


「こほっ。こほん。ティアラ様」

「別に言い直さなくてもいいけど……」

「お外にお買い物に行きませんかっ?」


 侍女ルアに連れられて会場の外へ出た。お、食べ物の屋台が出てる。文化祭っぽい!

 日差しが強いからぽぽたろうを頭に乗せておこう。ぽぽたろうは太陽に弱いが、私の髪から魔力を吸い取るのでちょうど良い帽子になるのだ。ちょっとひんやりする冷感クッション帽子である。便利。

 私はキンキンに冷えた果実ジュースを頼んだ。氷魔法で保存も冷蔵もできちゃうんだから、やっぱ魔法って便利だな。お値段百テリアなり。パン四つ分。百パーセント果実ジュースなのでこんなもんだろう。

 なお容器の金属製のコップは返さなければならない。手がちべたい。ポリエチレン容器ほしいな。プラスチックってガソリン精製したときのタフタみたいな名前のやつ(※ナフサ)からできるんじゃなかったっけ。無いのかなまだ。誰か早く開発してくれ。


「ぬ……このかぐわしい香りは……!?」


 なんということだ。この懐かしのソースの香り。まさかこれは……!


「いらっしゃい! 最近オルバスタで話題のオコナンヤだよ!」


 完成してたのかオコナンヤ! オコナンヤってなんや! お好み焼きじゃろ!?

 マヨソースロードのカルラスに絵でそれっぽく説明した食い物は、オコナンヤという名前になって広まったようだ。

 とりあえず注文して野外テーブルを囲んだ。ほふほふ。

 青のりかと思ったらバジルだこれ。

 かつお節の代わりに薄切り乾燥ハムだこれ。


「美味しいですねっ! オコナンヤっ!」


 う、うん……。ちょっと……だいぶ違うけど。それっぽくは、ある……かな……。



 さて。私達はそのまま野外展示へ向かった。

 いつもの練習場に人集りが見えたので近づいてみた。何を展示してるのかなー?


「ほぉ~。これが噂の魔法結晶樹……」


 みんな私がうっかり魔法をぶっ放して幹が結晶化した木を見ていただけだった……。

 壇上で説明をしているおっぱい白衣研究員に見つからないようにそっと抜け出す。


 気を取り直して回っていたら、広場になんか金色のピカピカした足が丸いでかい蜘蛛みたいなメカが展示されていた。

 メカ……メカだ!

 パイプが身体のあちこちから伸びている蜘蛛型メカは、カァンカァンと鐘のような音を立てぷしゅうと碧い蒸気を吹き出し、太くて丸い足を引きずるように動き出した。

 SFだ! スチームパンクだ!

 知識の浅い私は、メカが蒸気を吹き出したのでスチームパンク認定した。


「ご存知ネコラル機関による自走蜘蛛型ゴラムですー。良かったら見ていってくださーい」


 だからネコラルってなんだよ!? 蒸気機関じゃないの!?

 そしてゴラムって……本当にゴーレムはゴラムって名前だったのか。

 しかしかっけー。金色のタチコ……げふんごふん。蜘蛛ゴラム。

 六本足でもっそもっそ動くのもかわいい。前足二本はアームになっているようだ。

 自走と言ってたけど、背中にハッチっぽいのあるな。乗れるのかな。

 じぃー。


「乗ってみる?」


 わーい!

 私はお兄さんに担ぎ上げられ、蜘蛛ゴラムの背中に乗った。ハッチは開くと座席になるだけだった。計器とかレバーとかないんだな。残念。

 勝手に手動操作できるようなものあったら乗せてくれないか。

 私は座席の前の落下防止のバーに私は掴まった。よし。

 蜘蛛ゴラムはカンカンカンと音を鳴らしてぷしゅうと煙を吹く。そしてずももももと動き出した。


「わー!」


 おっそーい!

 これはあれだな。遊園地のアトラクションだな。しかも縦揺れが結構ある。おえっぷ。


「お嬢様っ! こっち向いてーっ!」


 ルアがいつのまにか写真機を手にしていた。私が乗り物に乗ってはしゃいでるところが撮られるー!

 蜘蛛ゴラムはうにうにと直径10メートルほどの円を描いて停止した。ふぅ。


「はいっ! 次は私が乗りたいですっ!」

「待ってください。ロアーネが先です」


 このあとめっちゃルアはきゃっきゃとはしゃぎ、ロアーネは澄ました顔のまま紅潮させていた。

 十三歳年上妹系メイドはともかく、合法ロリのそんなあざといイベントスチルいらないんじゃが?

 まあ、写真に撮っておくけど。パシャパシャ。

 ついでにロアーネと一緒に二人で蜘蛛ゴラムの前でパシャ。

 この合法ロリ、蜘蛛ゴラムを気に入りすぎである。



 さて。さらにその奥にある砂の運動場では、金色の四輪のゴラムが走っていた。

 じ、自動車では!? 自転車くらいの速度で走ってる! だけどやっぱり青い蒸気を吹き出してる!

 と、なるとやはり謎のネコラル機関……。ネコラル車……。


「ネコ車……」


 意味が全く違う手押し車を思い浮かべてしまった。

 私がぼーっとしていると、ロアーネが得意気に説明してきた。


「蒸気自動車は昔からありますよ。よく爆発したので街では禁止されていましたけど」

「それって普通の蒸気機関? ネコラル機関は?」

「知りません」


 キリッとした顔で返された。

 やはりな。ロアーネはこんな顔をしているが、私と同じで世間知らずのインドア派ぷにぷになのだ。


「ルアは知ってる?」

「えっとっ。ネコラルはロータブルトで採れる碧色石炭ですよねっ。あ、ほら。今ちょうどティンクス帝国と戦争のきっかけになったものですよーっ」


 なんと!?

 私達がネコラル自動車を眺めながら会話をしていると、背が小さいずんぐりした赤ら顔でヒゲモジャのおじさんが酒瓶を手にして現れた。

 ……ドワーフかな?


「おちびちゃん。ネコラル機関に興味あるのかね?」

「酒臭い」

「おっとすまぬ」


 ヒゲモジャは雑巾みたいな布で顔を拭いた。汚いなぁ。


「ルア。丸洗いしちゃって」

「いいんですかっ?」

「がぽっ!?」


 ルアはヒゲモジャおじさんの頭をすっぽり水球で包んで、渦を作り、おじさんを洗濯し始めた。

 丸洗いって私は雑巾のことを言ったんだけど……まあいいか。


「げほほっ! いきなり何するんじゃこのポアポア娘が!」 


 ポアポア? そういえば頭にぽぽたろうを乗せていた。私じゃないです。やったのは隣の発育はなはだしいロリ巨乳になりつつあるメイドです。


「それでネコラルってなんなの?」

「マイペースじゃなお主」

「えへへ」

「褒めとらんが」


 ヒゲモジャおじさんは酒瓶を呷った。おじさんもマイペースだと思う。


「ネコラルは儂にもわからん」

「わからんのかい!」


 もうなんやねんこいつ。


「儂は機械技師じゃからの。詳しいのはネコラル機関の方じゃ」

「ならそう言って」

「今言ったじゃろ」


 私、この酔っぱらい嫌い!


「まあ待て。子どもにもわかるように言うとじゃの。ネコラルはぎゅっと押してオリハルコンで叩くと蒸気を吹き出す魔法の石炭じゃ。じゃからほら、あのようにカンカンと音を鳴らして青い蒸気を吹いとるじゃろう?」

「ほほう」


 なんかすごく気になるワードが飛び出た気がするけど、ひとまず置いといて……。

 つまり水を熱してピストンさせる必要ないのか?

 だから小型軽量化できてパワーもある……。

 あれ? だとするとガソリン車は?


「燃える黒い水を使った車はないの?」

「ふむ?」


 ヒゲモジャの代わりにロアーネが答えた。


「もしかして(わに)の亜人の油のことでは」

「なるほど……ウニュのことかの?」


 なんだよ鰐の亜人。なんだよウニュ。ウニって森で採れる黒いトゲトゲしてるものだろ? うにー。


「ウニュは異教の危険な毒の黒油です。エイジス教では禁止されていますよ」

「ウニュを燃やす機関とは。面白い発想をする子じゃの」


 うにゅ……。この世界の科学技術進化ツリーどうなってるの……。ガソリンはまだないの……?

 内燃機関はないねん……。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 青いネコと黒いウニどちらが危険かには政治判断まで含まれそう。 [気になる点] 油よりアルコール車の方が良さそうだけど、ドワーフは嫌がるだろうか。。。だが燃料として大量生産が始まれば逆に。。…
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