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お漏らしあそばせ精霊姫  作者: ななぽよん
【3章】チョコパイ旅行編(8歳春~)
72/228

72話:お好み焼き

 一日一区間。参勤交代かよという馬車移動を一週間かけてやっと故郷のオルビリアが見えてきた。

 にゃんこに乗って街中を凱旋じゃ! わーわー! 旅行に行ってきただけなんだけどね?

 ぬっこぬっこ進む私に街の人々はみんな手を振って迎えてくれた。ふふふ。暖かい街だ。ド田舎だけど。改めて帰ってくると田舎さ加減がわかる。なんていうか、基本的に古い木造だもんね。富裕層の地区までくると漆喰の壁で窓ガラスがはまってたりするけれど。でかい建物に見えていた商店もなんだか今ではこじんまりとして見える。

 ふっ。私も都会っ子になってしまったもんだぜ。


 宮殿の庭に入り、私はにゃんこから降りた。そして迎えてくれた家族へ両手を広げて駆け寄った。


「ただいまっちょ!」

「おかえりっちょ!」


 宮殿の庭で私と妹シリアナは手を取り合ってくるくると回った。わーわーきゃーきゃー。


「なんだよそれ」

「タルトも混ざる?」

「やらん」


 拒否られたので私とシリアナはタルトを挟み込んで、強制的に巻き込んだ。ぐるぐるぐるぐる。


「ティアラおかえり。元気だったか?」

「ぱぱー!」


 私はパパの胸に飛び込んだ。あざとい幼女を演じて好感度ポイントを稼ぐのだ。

 ママは三ツ目の弟を抱いていたので、手を振ってぴょんぴょん跳ねてアピールした。

 やばい。すでにかなり疲れた。ぐでーっと伸びたい。


「お嬢様はお疲れのようですので、お風呂に突っ込んできまス」


 別の国にいたせいか微妙にニュアンスの違う言葉をカンバに使われ、私はビクンとなった。そんな犬猫を洗うかのような表現やめて。


「あ、そうだ。そこの翼ライオン(ドルゴン)は危険だからさわらな――」

「もふごん行けー!」


 注意しようと思ったらすでにシリアナがにゃんこの背中に乗っていた。なにこの幼女。アグレッシブすぎる。

 裏庭に駆けていってしまい、近衛団長のじっちゃんが慌てて追いかけていった。

 まあ、平気だろ。うん。


 私は旅装のドレスをすぽぽーんと脱がされてすっぽんぽんとなった。お風呂にざぶんこと入り、ぶるるんと震える。違うぞ。お湯に身体が反応しただけだからな。


「ふひぃー。風呂文化あって良かったー」

「お風呂に入らないところなんてあるのですカ?」


 地球のヨーロッパ人はお風呂から伝染病がうつると信じられていたせいか、中世でお風呂文化が途切れているんだよね。古代ローマの公衆浴場テルマエは有名だけど、その後にお風呂はエッチな店と変化していったからあながち間違いではないけど。

 それともっと北の方になると風呂ではなくサウナになる。サウナもいいねえ。日本もサウナ文化だったみたいだしね。だけど子どもの身体でサウナに入るとすぐにへたるから、あまり楽しめないな。お風呂もぬるめじゃないとすぐに真っ赤になる。


「温度上げてー」

「かしこまりましタ」


 カンバが熱棒と呼ばれる魔道具を手にし湯船に突っ込む。そして棒に魔力を込めると先が熱くなる仕組みだ。少し温度を上げるだけなら、現代の湯沸かし器くらいの便利だ。


「髪を洗いますよっ」


 湯船に使ったまま、メイドさんたちに長い髪の毛を泡立てた石鹸まみれにされていく。植物油配合で髪にも優しいそうだ。頭皮をマッサージされて「おああ」と声が漏れる。ここ、油断すると危険なポイントだ。()漏らし注意である。私がお風呂に入ってる時、特に頭を洗っている時に、髪の毛がぺかーっと光り輝くようだ。めっちゃ漏れてるじゃん。背後でそんなことになってるとは知らなんだ。


 お風呂から上がり、ルアが私の髪へ魔法をかける。


「乾かしますよー。水を(ノア) 手のひらに(ダイクン) 集める(イタメ)


 私の髪の水分が、ルアの手の平に吸収されていく。ルアは、ソフトボールくらいになった水球を湯船にぽちゃんと捨てた。

 ルアはふぅとやりきった感じであるが、私の髪も全身もまだじっとりと濡れている。木綿の布でもしゃもしゃと全身を拭かれていく。

 最後にカンバが風魔法で私の髪を乾かしていく。リアのドライヤー魔法ほどの技量ではないにしても、扇風機のそよ風モードのような風に私の髪は吹かれて流される。

 宮殿に帰ってきて二人以外のメイドもいるので、同時進行で化粧水を顔に塗られたり、謎の白い粉を足にかけられたりしていく。

 そしてゆったりしたバスローブのようなワンピースを着せられて、髪は全体を三つの三編みにし、それをさらに三編みにされてまとめられた。


 こうして、私の全自動入浴は完了である。ぺかぺかーになった。


「私たちも旅の汚れを落としますネ」

「入ってきますっ」


 カンバとロアーネは侍女服を脱いで、私の残り湯に浸かった。

 むぅ。覗きたい……。いかんいかん、ついおっさんが漏れてしまった。


「この後は休息なされますか?」


 三年前からお世話になってる赤毛のメイドさんが私に尋ねた。

 ふむ。夕食の時間までまだ暇があるからお昼寝するか。

 寝る前に歯磨きをしておく。しゃこしゃこ。


「ティアラお嬢様は歯磨きができて偉いですね」


 うむ。歯は大事だからな。歯医者さん嫌い。しかも前世文明ほどまだ技術発達していないから、昔の歯医者とか恐ろしい想像しかできない。平成初期と終わりの二十年ですら大きく変わってたもんね。変化がわかるほど歯磨き軽視してぼろぼろになっていたのだが……。美少女は歯がきれいじゃないといかんしな。しゅこしゅこ。

 やさしく細かく動かすのがコツだ。電動じゃないから手がぷるぷるしてくる。

 あれ? ところでさっき「は」って言った?


「もしかしてタルトは歯磨き嫌い?」

「逃げてしまうのはシリアナお嬢様の方です。口を濯ぐだけで済ませようとするので捕まえるのが大変で……」


 むむ。歯垢(プラーク)は物理攻撃しか効かないからちゃんと磨かないとだめなのだ。Utubeでそう言ってた。塩化亜鉛もフッ素もないので自力で菌の苗床をひたすら除去するしかない。

 ちなみに虫歯になったらどうなるんだろう。恐る恐る聞いてみた。


「虫歯は呪いなので教会で治して貰えます」


 あ、呪い扱いなんだ。魔法の力で浄化できるのかなと思ったら、ひどい虫歯はやはりというか抜歯のようだ。


「引っこ抜かれるのやだ!」

「そうですね。甘い物を食べすぎないようにしましょうね」


 む。それは無理だ。お菓子食べたらちゃんと歯磨きしよっと……。



 ベッドに寝転んだついでにロアーネに虫歯について知ってる知識を話してみた。

 歯についた砂糖とかパンなどから悪い精霊が住み着いて歯垢が付く。それが歯を溶かしていくと。酸蝕歯や歯周病もあるけどそれは置いておく。


「なるほど。ティアラ様の話だと虫歯は呪いではないと」

「うーん。でも呪いという考えでもあながち間違いではないかも。他人にうつるし」

「うつるんですか……?」


 そりゃあ糖質を分解して酸を生み出す菌が原因だから当然うつるんだけど、二十一世紀になってやっと意識され始めた。人類の対策おそすぎる。

 さて。虫歯の話はちょっと置いといて。


「マヨネーズ作った時に魔法使ったことあるじゃん」

「マヨ……。ああ、水をきれいにする魔法のことですか」


 なんかふんわりした効果な魔法だった。


「それってどういう魔法なの?」

「お腹が痛くならないようにする魔法ですね」


 やっぱりふんわりした効果な魔法だった。


「教会って醗酵食品を作ったりしてない?」

「ええ作ってますよ。ああそれで水をきれいにする魔法(ペルストルトリーチ)のことを聞いたのですか。まだヤフンの調味料を諦めていなかったのですか?」


 味噌と醤油で焼きおにぎり作りたい……。

 大豆を適当に醗酵させてかき混ぜてその魔法使ったら安全に作れないかなと思ったのだ。

 まあだけど、ロアーネに「同じものを作るのは無理でしょ」と言われてしまった。


「その味噌の精霊がオルバスタにはいないでしょう?」

「あっ」


 そうか。精霊というか菌。酵母菌がないとやっぱ腐るだけか。


「やきおにゅぎり……」

「まずはオコノミヤキから始めた方が良いのでは? そちらは小麦粉が原料なんでしょう?」


 うむ。タコとかイカとかはお値段が高くなるが、キャベツとソーセージのお好み焼きを作るとするか。

 甘じょっぱいソースの開発はマヨソースロードのカルラスにでも任せるか。

 よし。



 次の日。私は頭にぽぽたろうを乗せ、チョコレートのお土産を手に、久しぶりに木札工場を訪れた。


「野菜と果物を煮た甘じょっぱい黒い調味料? ウスターソースか?」

「ウスターソースあるの!?」


 あるの!?


「ウスターソースの濃いやつつくって!」

「濃くするだけか? それなら既存のソースの水分を飛ばせば良さそうだが」


 お手軽!


「あとあと、小麦粉を水で溶いて、ねっとりしたじゃがいも混ぜて、刻んだキャベツとソーセージも混ぜて、フライパンで両面焼いて!」

「またわけわからん注文を……。似たような料理は知ってるが」


 あるの!?

 お好み焼きってそんな複雑な料理じゃないし、そりゃあ日本じゃなくてもあるか。

 できた!


「ほふほほふほー!」

「中々いけるな」


 だいぶ違うけどお好み焼きっぽいのできたー!

 やっぱ具にイカがほしいな。あと青のりとかつお節がほしいな。ソースも風味がちょっと飛んでる。マヨネーズ乗せちゃえ。


「むふむふむふ」


 ソース×マヨネーズのこのジャンクな味感! これだよこれ!


「味濃すぎないか?」


 そんなこと言われるとご飯が欲しくなるじゃないか。

 私はお好み焼きをおかずにご飯が食べられるタイプである!


「あ、今度これにパスタと両面目玉焼き(ターンオーバー)を挟んだもの作って。ソースも良い感じに改良してね」

「はいはいお姫様」


 広島風お好み焼きの開発を託したところで、私はカルラスにぽぽたろうを渡した。ぽぽ交換だ。


「あれ? ぽぽじろーは?」

「ああ。小さくなったのですでに宮殿に返したぞ」


 むむ?

 宮殿に帰って聞いてみると、ぽぽじろーとぽぽさぶろーは溶けて消えかけていたので合体。その後、冷蔵庫に安置されたようだ。


「おお……こんなちっこくなっとる……」


 すっかり夏に溶けるポアポアのことを忘れて旅行に行ってしまった。ぽぽ次郎三郎はピンポン玉サイズになってしまっていた。

 回復させなければ。

お好み焼きと焼きそばをおかずにご飯を食べられるタイプ

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― 新着の感想 ―
[良い点] かいわ。 [気になる点] 今更ながら、線路が来るのではなく、バス(魔馬車)つくるー!ってなるかと思ってた。
[一言] ぽぽ次郎三郎無事でよかった。またおっきくなってね。
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