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お漏らしあそばせ精霊姫  作者: ななぽよん
【3章】チョコパイ旅行編(8歳春~)
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70話:肉体強化系魔法

 帰りの列車に揺られながら、私は少し自意識過剰だったのではないかと思い始めた。


「あれは絶対恋する少年の瞳でしたよっ!」


 ちょっと恋愛脳が入っている新人侍女ルアちゃんは、私たちぺたんこーずの中で一番大きい、しかしささやかな胸をそらして、ぺたんこーずの一員に河での出来事を話していた。

 しかしあのヴァイフ少年、本名エイドルフくんの手を取ったところで恋愛フラグは立たないのではないかと思い始めた。なんせ彼は十歳で、私は八歳、しかも見た目六歳くらいのちんちくりんである。十歳が八歳に恋愛はないだろ。


「お嬢様の本心はどうなのですかっ?」


 にっこにこな顔のルアの顔をぐいと押し戻す。昨日から何回もなんとも思ってないと言っている。河に会いに行ったのも気まぐれだとも。

 私はヴァイフ少年のことを何も知らなすぎるので何も感じない。そもそもヘテロな男の意識があるので同年代の男とそういう関係になるつもりはない。

 その点ではやはりパパが一番優良物件だ。「うちの娘は誰にも渡さん!」というセリフが出てくるくらい溺愛させて、私は宮殿でのんびりお菓子を食べ暮らしするのが良い。パパが慌て始めるくらいの歳まで来たらパパに責任を取ってもらえばいい。くくく。完璧じゃあないか私の人生設計は。


「あっ。お嬢様がにんまりしてますヨ」

「さてはこれは、お土産のチョコレートを盗み食いする計画を立ててますね?」


 外れだロアーネ。私がいつでもお菓子のことばかり考えていると思うなよ。ちょっと考えてたけど。


 ぷしゅうと機関車は青い蒸気を吹き出して国境沿いの駅で停車した。出入国審査だ。だが私たちはヘンシリアン家の車両に乗っているのでノーチェックである。

 せっかく停まったので、私はソファから立ち上がり、んにににっんにににっとスクワットした。両手を胸の前で組み、三秒かけてひざを九十度まで曲げて尻を下ろす。そして三秒かけて中腰まで立ち上がる。


「何してるんです?」

「ずっと座ってると足に血が溜まるから。それと太もも鍛えると太りにくくなる」

「なるほど。ロアーネもやります」


 なぜか女子四人で個室の一等車両でスクワットが始まった。目の前でルアのぷるるんがぷるるんする。ルアはそろそろブラジャーをした方が良いと思う。この世界にあるのは下から支えるコルセットタイプだけど。ブラジャーっていつ発明されるんだろうな。確か胸パッドが重要だったはずだ。化学繊維が広まってからか。



 それからさらに数時間。魔物が出そうな草原の中を蒸気機関車は進む。ところどころに砦が築かれているのはその対策だろうか。それとも戦争の名残だろうか。

 ルアの故郷であるヴァイギナル王国の都ロンナルクに着いた。こうして都会から戻ってくると、すげー発展してると思っていたこの町も地方都市程度に感じてしまった。ふっ。すっかり都会っ子になってしまったぜ。降車ももうすんなり行ける!


「危険ですぞ姫様」

 

 近衛団長のじっちゃんに抱え上げられてしまった。うむ……。やはりホームとの隙間が大きいなここ。

 さて、なんだか様子はこの前とは違うなと感じたのは兵士が多いからであろうか。私の護衛というわけでもない。何かトラブルでもあったのか?

 リルフィが泊まっているという宮殿へ向かう。なんだかガチムチな猫人も多く見かける。そして私を見かけると手を振ってくれる。なんだなんだ?

 リルフィのパパが答えを教えてくれた。


「ロンナルクからオルビリアまで鉄道を敷いているのだ」


 なんと!?

 すでに資材はオルバスタとの国境の町に運ばれており、両サイドから作業は始まっているという。春には東西に続く線路が出来上がるとのことだ!

 オルビリアが田舎ではなくなる!

 馬車で長距離移動しなくても済む!

 猫人労働者たちがんばれー!

 しかしなんで急に?

 別に急な話ではなく元々進んでいた計画ではあったようだ。ヘンシリアンのおじいちゃんが猫人への待遇改善を進めたことから、オルバスタへの鉄道の敷設に協力的になったそうだ。


「つまり姉さまがきっかけなわけですね!」


 私のおかげ!? やったー! もっと褒めて!

 リルフィと手を取り合いきゃっきゃする私の頭をロアーネが撫でた。


「いいこいいこ」

「ロアーネに褒められるとなんか怖い!」


 びびくぅ! 私はさっとリルフィの背中に隠れた。


「なんですかその反応は。素直に褒めたというのに」

「絶対なにか企んでる……」


 ロアーネのことだから絶対宗教関係のことだ……。

 ロアーネがぽぽたろうで叩いてこようとするので、私はリルフィを盾にした。ふふん。リルフィガードは突破できまい。


「もう。何をしてるんですかっ」


 ルアに引きずり出されてしまった。そしてルアに褒められて頭をなでなでされた。えへへ。


「ロアーネの時とは反応が違いますね?」


 ルアは合法ロリと違って神聖ロリだから汚れのないなでなでだもんね。

 そしてカンバのなでなではハイになる。ひゃっほーい!


「あ、褒めすぎましタ」


 私は褒められて伸びる子なのだ!



 翌日。早朝の銃声で私はちびりかけた。

 朝から空砲で英雄ごっこする王様のことをすっかり忘れていた。全くもう。

 朝食を頂き、リルフィと別れを告げ、憎き馬車に乗り込む。馬車から敷設作業をする猫人たちが見えた。

 ううむ。作業員の猫人はもっと猫って感じなんだな。猫車を押し穴に向かって砂利を運んでいた。そして枕木とレールががんがん置かれていく。その先では草原がツルハシとシャベルでがんがん掘られている。

 人間重機……?

 その様子を私だけでなくロアーネもルアもほへーと眺めていた。


「土木は魔法で行うものかと思っていましたっ」


 ルアの言葉に私もうなずく。魔法のある世界なんだから土魔法でドバっと穴を掘って固めるものかと思っていた。


「魔法ではあるみたいですよ。ほら、彼らの尻尾が光っています」


 男たちはふんどしのような腰布だけで、尻尾が丸見えであった。その尻尾がうっすらと輝いて見える。


「猫人の耳や尻尾は魔法器官のようですね。彼らの身体能力は魔法によるものです」


 肉体強化系魔法か! 万能で最強感あるやつ! いいな!


「私も肉体強化できるかな!?」

「やめましょう」


 外に降りて試そうと思ったのに、ロアーネに即座に止められてしまった。むう。


「私も魔力放出以外の魔法を使いたいの」

「まずお漏らししないで使えるようになりましょうネ」


 うぐ。カンバの言う通りだ。これでも小石をべしっと指で弾いたくらいの威力の魔法弾を撃てるようになったのだ! ちゃんと成長中な幼女なのである。

 ムキムキもさもさ猫人たちに手を振って応援すると、作業の手は止めず尻尾を左右に振って応えてくれた。

 別れようとしたら、鐘の音がガンガンと鳴り響いた!


「巨鉄猪だぁ! こっちに向かってるぞ!」


 なぬ!? 魔物か!?

 馬車から遠くを覗くと、土煙を上げて暴走する軽トラックのような頭のでかい猪が向かってきていた。

 おのれ魔物め! 猪は人類の敵だからきっと殺しても心が傷まない。うん。いける!

 私は馬車から降りて猪に向かって手を伸ばす。しかし前方にはツルハシとシャベルを手に、軽トラ猪を迎え討とうとするマッチョ猫人の方々が! これでは撃てない!

 そして猫人と軽トラ猪が激突する。先頭の猫人五人が吹き飛ばされ、しかし空中で身体を翻し着地した。すぐに戦闘に復帰し、猫人二十人ほどで軽トラ猪を囲い込んだ。

 中の様子は見えないが、ガキンゴカンと金属音が鍛冶職人街のように草原に鳴り響き、そしてすぐに沈黙した。

 そして今度は煙が立ち昇り始めた。


「終わった?」


 私の出番なかった。いそいそとみんな馬車の中へ戻った。猫人つええ。


「猫人たち作業に戻らないけど何してるんだろうあれ」

「解体ではないですか? いや、なにか燃やしてますね?」


 ……丸焼きにして食べ始めてる!?

 現場監督は困惑した表情で、私たちの馬車に助けを求めてきた。私たちに言われても……。ただの通りすがりだし……。

 なるほど。猫人を使う方も大変なんだな……。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 55話で >猫人の猫耳は魔法器官なのかと思ったが、猫人の多くは魔法は使えないらしい。 とあるけど、こっちでは猫耳も魔法器官扱いされてます?
[一言] >> 先頭の猫人五人が吹き飛ばされ、しかし空中で身体を翻し着地した。すぐに戦闘に復帰し、猫人二十人ほどで軽トラ猪を囲い込んだ。 ひゅーっ、かっこい〜っ!
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