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お漏らしあそばせ精霊姫  作者: ななぽよん
【3章】チョコパイ旅行編(8歳春~)
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60話:チョコパイ

 水色のふりふりな夏の装いで今日の予定の美術館へ向かった。美術館がまたでっけーんだわ。ふと気づいたのだけど、公共の施設がことごとくでかい。美術館も「これ自体がもう芸術品だよね?」と言いたくなるほど絢爛である。オルバスタの私の家より大きいし。

 私は一歩踏み入れて、その内装に口を開けてぽかーんとした。ただのエントランス自体が芸術作品となっている。大理石の柱一本一本から壁の細部の彫刻、壁画まで一室に詰め込まれた美術。黒と金が夜の月を彷彿させその権力を示していた。左右の大階段を守るかのように翼ライオン(ドルゴン)の彫刻が置かれており、いっそ見慣れたそのフォルムに安堵する。放心してあやうくちびりそうになった。

 ロアーネが私のほっぺをつんつんしてきた。


「ぷるぷる震えてるけど漏らしていませんよね?」


 カンバにお股をパンパンされてしまった。今日は伯母さんの他に皇族の方も一緒なのに。その方は皇帝の娘、皇女だ。皇女といっても伯母さんと同じくらいの見た目の歳だけど。二人は姉妹のように仲が良いらしい。


「あら? にゅにゅ姫はどうかなされたのかしら?」

「ドルフィン公。この子は雷輝鷲に胸を撃たれたようですわ」

「らいにょうむでごじゃいにゅにゅ」


 クリトリ宮廷語が上手く言えなくてドルフィン公から「にゅにゅ姫」なんてあだ名を付けられてしまった。にゅにゅなんて言ってないにゅ。

 ドルフィン公といってもイルカではない。でもイルカみたいに顎が長い。ロアーネに「あの顎も魔力の影響?」とこっそり聞いたらお尻をつねられた。

 伯母さんとドルフィン公がもにょむにょと会話し、私たちはまず最初にヤフンの工芸品を見に行くことになった。その途中にある絵や彫刻も眺めていく。なるほど、これは立ち止まって見ていたら日が暮れるな。ルアがカンバの背中を押して歩いている。


 ヤフンの工芸品は、テレビで似たようなのを見た記憶を思い出すような茶器や皿であった。なるほどなぁ。器はわからん。

 そして展示の中に浮世絵があった。おお。版画刷るやつ(ばれん)も一緒に飾られている。

 そんなことよりなんか、この浮世絵に書かれているヤフン人になんか角が生えてるんですけど……。


「鬼やんけ!」

「よくご存知で。ヤフン人のこの角はオニャンコと呼ばれる魔法器官でございますわ」


 オニャンコ……オニャンコ!? ガチムチ侍でも角が生えてたらおにゃんこ!?


「こっちの金の狐っ娘の像はなにゅにゅ?」

「ヤフンの女帝ですわ」


 女帝……天皇!?

 ミニスカ巫女服の狐っ娘ロリ天皇の国なのヤフン!? 時代の最先端すぎるじゃん!


「にゃるほど。ふんどしの造形もしゅばらちぃ……」


 金粉狐っ娘フィギュア像いいなあ。

 おっと。思わず食い入るように見てしまった。こほん。


「尻尾がもっふりしてまにゅた」

「尻尾が大きいほど力を持っているらしいですわよ」

「だからこんなご立派にゃのでにゅにゅ」


 ほへぇ。だからこんなミニ巫女袴スカートがめくれ上がって尻尾をもっふりと見せつけているのか……。良いものを見させてもらった。

 あとは扇子とか唐傘とか、目新しいものはなかった。傘は凄いものではあるんだけどね。狐ロリ金粉像のインパクトが強すぎて。

 改めて浮世絵を眺め、ヤフンの国の様子を見てみる。やっぱヤフンにも富士山あるんだな富士山。


「この山はヤフンの象徴的な山で、死者が眠らない山と言われておりますわ」


 なにそれこわ!


「こちらはヤフンの島の形を表しています」


 ふぅむ。地図ではないけど、オルバスタで見た地図より詳細な島の形が書かれているようだ。今考えるとオルバスタで見た世界地図って骨董品なんじゃ……。それは置いといて。

 このヤフン列島。北海道がくっついてるかわりに中国地方が本州から離れてたり、四国がオーストラリアみたいな形してるなぁ。九州はヘ音記号みたいな形している。元の形をよく覚えてないから対して変わってないような気がする。

 注目すべきは関東平野で、東京湾ががっつり平野に食い込んでいた。大昔は川が氾濫して沼地だったと聞くから、埋め立てする前はもしかしたらこんな感じだったのかもしれない。

 すると首都はどこなんだろうなぁ。東京の西の方なのだろうか、京都なのだろうか、それとも全く違うところなのだろうか。

 まあしかし、文明文化的にはやはり日本と大きな差は感じない。ということは醤油あるな醤油!


「行くか! ヤフン!」


 むふん! 胸を張る私の背中をロアーネがつついてきた。


「船酔いしますよ」

「やっぱ止めた!」


 軽く見て回った後、エントランスへ戻りお食事スペースへ向かった。しゅげえ。飯も食えるのかこの美術館……。

 なるべく上品にもきゅもきゅお肉を噛んでいたら、ドルフィン公が私に話しかけてきた。


「にゅにゅ姫の考えたカードゲームのことを姫から聞かせてくれるかしら?」

「あら、気が早いですわねドルフィン公」

「せっかくですもの。不思議な髪を持つお姫様。あなたはどこから来たのかしら?」


 もきゅ?


「もにゅにゅもにゅにゅもにゅ」

「ロアーネが翻訳すると、西から来たと言っていますね」


 言ってないけど。まあ西から来たけど。


「精霊姫と呼ばれているそうではないですか」

「にゅむむもぬもぬもにゅ」

「この虹の髪を見てわかりませんかと言っていますね」


 言ってないけど。まあ今日もキラキラ輝いているけど。


「そうねえ。もし精霊の子だとしたら」

「ひはら?」

「素敵ですわねぇ」


 皇女様の感嘆に伯母さんが「そうでしょう!」と弾むような声で同意した。いい歳したお姉さん方が二人して「みゃうみゃう」言っている。


「どうですかにゅにゅ姫。わたくしの娘になりませんこと?」

「あらドルフィン公抜け駆けはいけませんわ。ティアラ姫はわたくしのルーケンサヌスと仲がよろしいのですから。ねえ?」


 よくないけど。おばさま方に私がモテモテすぎて困る。


「わちちはパパのお嫁しゃんににゃるのにゅにゅ」

「あら~」

「まぁっ」


 この後めっちゃおばさま方になでなでぷにぷにされた。もっと若い子がいいのにゃが!

 そしてロアーネに「ご自身の価値を理解しましたか?」と問われてしまった。


「ふぅむ。でもクリトリヒにお嫁さんに行くのはないなぁ」

「なぜです?」


 だって戦争でボロボロになるし……と答えようとしたけれど、果たして地球と同じように世界大戦は起こるのだろうか。そうじゃなきゃ、田舎よりもチョコレートの美味しい都会の方がいいな。チョコの美味しいお菓子もっと食べたい。じゅるり。


「また何か考え込んでますね?」

「チョコパイ食べたい」


 チョコケーキにマシュマロ挟みたい。


「このくらいの、ぷにゅぷにゅふにふにの白いお菓子知らない?」


 私は親指と人差し指で輪を作ってみせた。しかしロアーネは知らないようだ。

 代わりに伯母さんが反応した。


「もしかしてギニューのことかしら」


 ぎゅーにゅーとくせんたい? なにそれ、ましゅめろーじゃないの?

 連れられて行ったお店で出てきたのはぷにぷにマシュマロだった! 正解だ!

 ふるーちゅあじ。


「こえの平たいやつをチョコケーキにはしゃみゅみゅ!」


 私の提案を皇女様が聞き、メイドに伝え、マシュマロ店とチョコケーキ店のコラボが完成した。私が図案したように丸く平たいクッションのような形だ。


「本当にできるとは……これは危険なものを作ってしまった……」

「え? そんな曰く付きなものなんですか?」

「とある国では依存者が続出して違法になったのだ」

「そんなに」


 ギニューを挟み込んだ丸いチョコケーキは、後に改良されカラフルに色づけられた砂糖が上からまぶせられた。中に挟まれたパステルカラーなギニューと共に、これはこの「にゅにゅケーキ」の考案者である精霊姫の虹の髪を表現している。にゅにゅケーキは富裕層はおろか、貧民の労働者階級にも配布されたことによって広まり人気を博すことになる。にゅにゅケーキの「にゅにゅ」とは中のギニューの食感を表しているとされているが定かではない。ギニューが訛ってにゅにゅとなったとか、精霊姫がにゅにゅ姫と呼ばれていたという説もある。[要出典]

※「ギニュー」?:異世界語は別物とはいえ実物から大きく語感を変えると混乱するので元のイメージを残したものにしていますが、英語名「マシュマロ」の起源であるフランス語では「ギモーヴ」であり、アメリカ的「マシュマロ」は「ギモーヴ」の種類のうちの一つとする考えがあるそうなのでギモーヴの方からもじりました。大まかな違いとしては、味付き色付きマシュマロが「ギモーヴ」で、白くて砂糖味が「マシュマロ」のようです。


※変な日本語に聞こえるものは大体ぷにぷに幼女の耳のせい。(いまさらな補足)

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― 新着の感想 ―
[良い点] みつばい! ぐんのよこながし! [気になる点] 食品とかは後で聞くのかな。 [一言] そんなんチートや! チートスキルや! 。。。はっ!? 冒頭の今後出る人物?ネタをすっかり忘れるとこ…
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