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お漏らしあそばせ精霊姫  作者: ななぽよん
【3章】チョコパイ旅行編(8歳春~)
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59話:ヤフン

「東の果ての国ですか? ええ、もちろん知ってますよ」


 ふえ!? ダメ元で伯母さんに聞いてみたら常識だろと言った感じで返された。


「なんて国なの?」

「ヤフンですよ」


 ヤフン……。やはりニホンではないのか。島も変な形してるしなぁ。


「興味がおありですか?」

「あい」


 伯母さんとメイドがもにょもにょもにょと会話した。


「では明日は美術館を観光するのはどうかしら」

「良いですね。ティアラ姫もきっと興味を持つと思います」


 なんか伯母さんとリアが盛り上がってる。美術館かぁ。まあ興味はないことはないけれど。


「他に予定入ってたんじゃないの?」

「ええ。しかし今日の歌劇では眠ってしまったのでしょう?」


 私は慌ててつまらなかったわけではないとわちゃわちゃと言い訳をした。良い音楽を聴くと眠くなるのだ。夕食の今もぴゅるりひゅらりと風魔法楽器が奏でられていて、血糖値の上昇とともに頭がほけーとしてくる。こてり。


「あら。疲れたのかしら」

「これを齧らせましょう」


 ロアーネの指が私の口元に近づいてきた。ぱくり。

 んひぃ! ちゅぱぱっ! レモンだこれ!


「目が覚めましたか?」

「覚めたぁ」

「あらあら。荒っぽいことをいたしますのねロアーネ様」


 伯母さんの言葉にロアーネはくすくすと笑い、「いつものことです」と返した。

 ロアーネとは見た目通り姉妹みたいな関係だけど、はたから見ると変に見えるのかな。そうでなくても目覚ましにレモン齧らせるのは変か。


 おねむなので私は部屋に戻された。

 まんぷくり。ぽやぁ。

 仰向けでソファに寝そべっていると、ロアーネがお腹にぽぽたろうを乗せてきた。


「さて。ティアラ様がヤフンにこだわりを持つ理由を教えて下さいますか?」

「あれ? 言ってなかったっけ?」

「それとなくみんな気がついていましたが、気づかない振りをしていたのですよ」


 ロアーネの言葉にリアとカンバが頷く。ルアはこてんと首を傾げた。


「言いにくいことだったというわけではないのだけど」

「ヤフンの生まれだったということがですか?」

「先に言うなよつるつる床板大理石!」


 どきどきカミングアウトの前に、先に当てられてしまった私は、ぽぽたろうをロアーネのつるつる床板大理石に叩き込んだ。

 ルアは「ヤフンのお姫様だったのですかっ!?」と驚いている。ルアはかわいいなぁ。よしよし。

 他の二人はしれっとしてるな……。


「もしかしてリアとカンバも気づいていたの?」

「ええまぁ」

「お嬢様の絵はヤフニズムを感じましタ」


 隠してたわけじゃないけどバレバレだったのか……。カンバはまたなんか謎の気付き方してるし。


「うん。エイジス教の太陽の国から来たというのは違うんだ。でも嘘を付いたわけじゃないんだロアーネ。東の果ての国のヤフンは太陽の昇る国と言っていたんだ」

「違いますヨ」


 え? 嘘じゃないんだよと言い訳をしていたら、カンバに間違ってると言われてしまった。


「ヤフンも月を象徴としていまス。絵にも月がよく描かれていまス」

「いやまあニホン人は月も大好きだけど」


 ルアがあれっと首を傾げた。


「ニホン? ヤフンではないのですかっ?」

「それは……こっちの言葉だと呼び方が違うだけじゃないかな」


 日本も英語だとジャパンだし。

 あれでもこの世界って地球に類似してるけど言葉も国名も違うんだよなぁ。今いるこの国だってどう考えてもオーストリアでしょ。カンガルーがいない方。

 そしてヤフンはヤフンで北海道と本州がくっついてるし、似てる形だけど日本じゃないんだよなぁ。半端に似てるから地球と同じと考えがちだが、目に見える魔法がある時点で別世界とちゃんと割り切らないといけない。


「いや、やっぱヤフンは日本とは違うなぁ。やっぱ私は違うセカイから来たようだ」

「セカイとは、地の国のことですか?」

「うん。うーん。ふわふわな話になるけども。私の魂がいた前の世界は魔法が無かった」


 ルアとカンバが「魔法が無い!?」と驚いた。ロアーネとリアには話したことがあったっけか。


「その代わり電気で色んなものを作っていたのですよね」

「うん。でもオルバスタがド田舎だっただけだたね。客室があるようなでかい蒸気機関車が走っているくらいなら、電気を使った道具なんてもういくらでもあるよね……」


 私は部屋を照らす屋根の照明を見上げた。ほら電灯だって……あれ? 魔法照明かなあれ?


「電気を使った道具、ですか?」


 リアとカンバは顔を見合わせている。ルアはきょとんとしている。

 ロアーネはむつかしい顔をしてぽぽたろうを揉んでいる。


「あれ? 電池の発明って結構古かったような……」


 それこそ果物に銅をぶっ刺して繋げば発生するようなものだし、磁石だって雷が落ちて帯電した金属だからあちこちにあるはず。

 みんなで首をこてんと傾げていたら、ロアーネが回答をくれた。


「デンチって雷の元を起こすものでしたよね。雷を起こす必要があるなら雷魔法を使えば良いですから」

「え? つまり電気の研究はされていない……?」


 それだと火魔法使いがいるからマッチはいらないし、水魔法使いがいるから井戸はいらないし、土魔法使いがいるからスコップはいらない……ってならない?

 と思ったけれど、雷が生活にどれだけ役に立つかというと、何も思いつかなかった。

 そうだよ。電気で一番わかりやすい用途って、電気抵抗で発光させる電灯だろう。日本だとエジソンが作ったと思われがちな白熱電球だが、エジソンが発明したわけではないし、電気照明自体はもっと前からあった。電気をバチバチさせれば明るくなるのだから、照明にするのは最初に考えつく用法であろう。

 しかしこの世界には魔法結晶による照明がすでに存在していた。なので「塩水に金属入れたら電気流れたよ!」と見つけても研究が進まなかったのかもしれない。

 いや、私たちは学者ではないから知らないだけかもしれない。しょせん田舎のぷにぷに幼女である。周りも姫メイドと合法ロリ神官である。


「で、なんの話だっけ」

「ティアラ様が違うセカイから来たという話ですよ」

「そうだった。空には沢山の星があるでしょ? きっと私は似たような別の星から来たのだと思う」


 私がそういうと、ルアがぷふすっと笑った。それに釣られてみんな笑い出した。にゃんで!?


「申し訳ごにゃいませんっ。ぷふっ。お嬢様が真面目な顔で変なことを言うのがおかしくってっ」


 変なこと言ってないんですけど!

 言って……言ってるかも……。

 ロアーネはぽぽたろうを私の頭に置いた。


「ええと。とりあえずティアラ様のいたニホン国がヤフン国に似ているということはわかりました。なので調べたいということですね?」

「そうそう!」


 ふぅ。話が戻ってきた。


「調べてどうするおつもりですか?」

「どうするって……お米を大豆から作った黒いソースかけて食べたいんだけど……。輸入できないかなぁ。でも醤油って日が経つと劣化する……。風魔法で真空パックは作れないだろうか。ぐぬぬ……」

「お菓子はないんですか?」

「お菓子。お菓子かぁ」


 日本のお菓子といったらあんこを使ったもの? そこまで惹かれるものはないなぁ。

 となるとお煎餅……。じゅるり。


「お米を大豆から作った黒いソースかけて焼いたもの……」

「ティアラ様が食い気しかないことはわかりました」

「なにをー!?」


 そうかも。

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