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お漏らしあそばせ精霊姫  作者: ななぽよん
【2章】カード作り編(6歳冬~)
28/228

28話:カードコンペ

カードの裏面は焼印に変更しました。(23話改稿)

今回はいつも以上に漢数字と算用数字が混じってます。わかりやすさ重視です

 春が来た。ママの生家のヘンシリアン伯爵家がクリトリヒ帝国から来た。

 ママの母。ママの姉。ママの姉の息子。そしてメイドいっぱい。

 彼女らは離宮に泊まるので、普段顔を合わせることはない。ママに連れられてタルト兄様は挨拶に行ったが、私はお留守番だった。

 挨拶はカードコンペの時にするからいいのだけど。

 一日ゆっくりと旅の疲れを取り、翌日からカードコンペを行う。

 五つの工房が描き上げたカードがずらりと壁三面に並べられた。総数600枚である。

 一枚一枚この小さいカードイラストを見るのかこれ……?

 最終確認に呼ばれて展示場に足を踏み入れた私はちびりそうになった。


「この展示に問題はございませんか、お嬢様」

「えーあーうん。上の方が見えないかも」


 イベントの責任者であろうてろんとした髭のお兄さんとぐるりと周った。

 私は素人だから口を出すつもりはなかったが、高さが少し気になった。

 侍女リアが私の脇に手を入れた。


「抱え上げますよ」

「いやそうじゃなくて。ほら。私と同じくらいの子が来てたでしょ?」

「なるほど。メリイナス様のご子息ルーケンサヌス様のことでございますね」


 こくり。名前は知らんけど。

 大人と同じ目線になれる台を並べるべきだろう。もちろん落ちて怪我しないように隙間なく。


「できる?」

「このデーバンが一晩で手配いたしましょう!」


 デーバンが一晩でやってくれました。

 しかしこのコンペ。もっと派手にいっぱい人呼んでパーティーのようになるのかと思ったら、ママの身内だけでこじんまりと催された。帝国やオルバスタの貴族は一人も呼ばれていない。

 とはいえ、フロレンシア侯爵家とヘンシリアン伯爵家の両家の主要な人物に加え、それに付く侍女や執事を加えると人口密度はそれなりに高い。でかい円テーブルがあり、その背後に二人ずつ控えている感じだ。円卓会議のような様子と言えば良いだろうか。そんな重々しいものではなく、紅茶とチョコチップクッキーでのどかに両家が会話を交わす穏やかな会合なのであるが。

 トラブルとか起こらないよなぁ。ないよなぁ。あるとしたら私だ。私が一番やらかしそうだ。落ち着け。手は光るなよ。


「そしてこの子が本日お披露目するカードを考案した、フロレンシア家のティアラです」


 そして私の挨拶の番が来た。


「ほにゅじつは、とおいところから、お集まりいただき。ゆきどけの花も、あっ、あちがとうござます」

「あはは! あちがとだって!」


 ルーケンサヌス様に指を差された。うるちゃいがきんちょー!

 ママの母。つまりヘンシリアン家の若いおばあちゃんがにこりと微笑んだ。


「わたくし達は家族です。緊張することはありませんよ」

「あい」


 ば、ばぁば!

 しどろもどろの短い挨拶は終わり、ぺたんと椅子に座る。

 カードの説明? いいんだよ他の人に任せれば!

 さてそれでは御開帳。カーテンで隠されていた壁に並べられた木札カードが姿を現す。

 ヘンシリアン家は「なんじゃこりゃ」という顔で壁を見回した。そりゃそうだ。

 五つの工房で描かれたとか、160枚のセットで遊ぶとか説明がされた。


「では遊んでみましょう」


 小さいテーブルに移動して、ヘンシリアン家の二人とママが座った。

 そして初期手持ち1点カードと王の座、山札が三つ並べられた。

 ん? あえ? 壁のイラスト見て回るんじゃないの?

 いや、まあ、実際遊んだ方が、良いだろうけど?

 飾られたものとは別に各工房一セットずつあるので、そちらを使っていくようだ。


「おれもやるー!」


 チビのルーケンサヌスも混じろうとしたので、「ルーはババと一緒にやろうねえ」と若ばあちゃんエリエンザイナ様が抱きかかえた。

 このゲーム。大人であればルールを覚えるのは簡単だ。そして単純な交渉の駆け引き以外は運要素が強いので初めてでも楽しめる。一戦目は豪運引きしたママ姉のメリイナス様が勝利した。


「おれ覚えた! おい変な髪のやつ! こっちでやるぞー」


 変な髪って私かこのガキ!

 私とタルトとルーケンサヌスでゲームが始まった。ルーは、クリン語とクリトリ語は似ているので文字は読めたようだが、足し算が怪しかった。なので彼の侍女が補佐に付いた。

 まあこのゲームに慣れてる私が勝つんだけど。大人げないおっさんなのであった。


「くそー! もう一回だ!」


 ルーを勝たせるためにルーのアドバイザーが増えていく。だけど船頭多くして船山に上るで、初心者がいくら集まっても初心者だ。運要素が強いといっても、どのカードが効率よく交換できるか把握している開発者の私とは当然の差があるのであった。あと私は幼女の皮をした大人だし。ずるいね!


「おい! 変髪! その札をよこせ!」

「【春】と交換ならいいよー」

「よし!」


 タルトが「ちょ、まっ」と止めようとするも遅い。

 次の私のターンで。【春】と【流星】で【新年】を獲得。そして【新年】のお祝い「みんなから【物:2点】カードを貰う」からコンボ的に交換を続け、見事勝利を果たした。

 へっへーん。

 ルーが半泣きになってた。


「私がこれ作った。だから強い。まだルーは勝てない。そこの髭。私の代わりにここ座る」


 ぴゅー。私は逃げた。勝ち逃げ勝ち逃げ。

 私は隣のテーブルを覗き込む。

 ふむ。5点カードの持ち合いで停滞状態か。うかつに交渉交換すると誰かが上がりに近づいてしまう、引き勝負となっていた。

 だが、これは、ふむ……。

 私はババにそっと近づき耳打ちをした。


「次のママのターンで【猟師】をママにあげちゃう良い」

「あげるってタダでかい?」

「なんでも良い。交換する。はやく」


 ババはママに逆交渉を持ちかけた。逆交渉とは、自分のターン以外にそのターン主に交渉を持ちかけることだ。そして【猟師】と1点カード2枚を交換。ママは手にした【猟師:2点】と手持ちの【冬:2点】で【銀毛大鹿:5点】を獲得した。


「あらら取られちゃったじゃないか」

「良い。【雪】で今出た【冬】が手に入る。そしたら……」


 手持ちの【冬:2点】と【山:2点】と【月食:2点】で【雪崩:5点】が手に入る。点数交換で損するが、【雪崩】は「みんなの手持ちの【人5点】カードを1枚場に戻す」という凶悪な嫌がらせ効果を持つ。ババは人5点を持っていないのでノーダメージ。ママとママ姉が1枚ずつ人5点カードを放出した。


「ティアラ。横から口を挟むのはマナー違反ですよ」


 ぴゅー。私は逃げた。くわばらくわばら。

 カードは五セットあるので、交換して絵柄を楽しみながらゲームは行われた。

 ゲーム人数は四人くらいまでならできるので、プレイヤーは立ち代わり侍女や執事が入ったりした。ルー坊のテーブルの方ではかなり忖度が行われたようだが……。

 カードコンペはうちのお抱え工房が最優秀に選ばれた。おめでとう。何か栄誉と賞金でも贈られるのだろう。

 今回遊びで使われた五セットはヘンシリアン家に贈呈された。無事にコンペが終わって良かった。

 あれ? 儲けになってなくね?

 他国の身内を呼んで遊んで差し上げただけである。一銭にもなってないよ?

 しかもカード製造の権利まで上げちゃった。田舎のオルバスタよりクリトリヒの方が芸術文化が優れている。カードイラストもより洗練されるのだろう。

 ママー? お金大丈夫なの? 私が心配することじゃないんだろうけど。うん。


 しかし結局デーバンに作らせた踏み台は無意味になってしまったな。みんな壁に飾られた方なんて見てなかったし。

 ヘンシリアン家のメイドで仕事をせず壁のカードを眺めていたのが一人いたことはいたけど。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ほ、ほのぼ。。。びみょうに不穏。 [気になる点] 他国の炉姉てきな何か、と思わせておいて他国に萌え絵師誕生の罠のおそれ。 [一言] ドライヤー魔法で乾燥しただけ(+浄化?)では、特殊付与の…
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