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お漏らしあそばせ精霊姫  作者: ななぽよん
【1章】アスフォート討伐編(5歳春~)
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21話:なにか現代知識無双したい

 なにか現代知識無双したい。私はふと思い立った。

 何も浮かばなかったので寝た。すやぁ。

 しかし侍女リアに布団を剥がされてしまった……!


「ああああっ」


 私はほじくり出された幼虫のように丸くなる。目が覚めたら虫だったのかもしれない。寒い。

 私の抱き枕のロアーネは意外と早起きなので、朝にはぬくもりが足りなくなってしまうのだ。


「おはようございますお嬢様。抱きかかえますよ」


 侍女リアに担がれて運ばれていく。もちろんトイレへだ。トイレも寒い。ぶるり。

 まだ暦の上では秋なのに、なんだか今年は寒い。しんじゃう。

 そうだ寒さ対策を考えよう。んー。ちょろちょろ。ふぅ。すっきり。

 私は急いでリアに抱きつき暖を取る。リアはドライヤー魔法が使えるから温かいのだ。暖房器具いらずだ。一家に一人欲しい。

 部屋に戻された私はぷるぷるしながらホットミルクをすする。じゅるる。

 で、なんだっけ?


「リア、何か困ってることある?」

「そうですね。お嬢様が一人でトイレに行けないことでしょうか」

「行けるし……」


 もちろんお姫様な私が一人でトイレに行くことなんてない。リアが言っているのは、私がギリギリまでベッドで我慢することを咎めている。

 いや、そういうことじゃなくて。

 しかし、現代知識で何か作るとしても、何となくというだけで熱意も情熱もないおっさんであった。だってお金にも生活にも困ってないのだもの。前世より恵まれてるまである。不満と言えばスマホとインターネットがないことか。作れないものは考えてもしょうがない。それにおっさんはそれらがない時代も経験しているので、辛いというほどでもないのだ。だらだらしつつ充実した幼女生活でもあるし。

 そうだなぁ、強いて言うなら原動力といえば。


「太陽の国の知識で、みんなを幸せにしたい」


 ちょっとかっこつけた。


「それでしたら、世界から人の争いを無くす知恵を下さい」


 話がでけえな……。

 方法はある。人類が滅びれば争いは無くなる。

 いやそんな邪神のようなことしてもしょうがないし。トンチな答えでしかないし。


「そうだな……。《おっぱい》……。《おっぱい》は世界を救う」

「《おっぱい》ですか」


 そう。誰しもがおっぱいの前では平等である。ペタンコもキョヌウも仲良くすればいいのだ。

 いや、そんな話はどうでもいい。

 しかし思いつかないのは、文明レベルが高いせいだ。私が思いつくようなものはすでに実現している。特殊な知識も技術となく、義務教育の科目内容も怪しいおっさんに作れるものなんて定番のリバーシくらいである。

 しかし似たゲームがすでにあるんだよなぁ……。もちろんチェスみたいなゲームも、トランプもある。

 だけど、遊戯というのはいい線だ。

 実は私はゲームを創るのが好きだ。コンピューターゲームももちろん、非電源ゲームと言われるボードゲームやカードゲームも自作してきた。

 特にカードゲームなんて、当たれば札束を刷ってるのと同じという名言がある。ははは! 大金持ちの未来が見えてきたぞ!

 大金持ちと言ってもすでに私以上の生活してる人、この地域にはいないんだよなぁ……。


 こうしてほけぇと考え事をしていると、お人形と言われる私であった。その時の私は神々しすぎて拝みたくなってくるらしい。やっぱ内面から滲み出ちゃってるんだよなぁ。滲み出そうなのはおっさんの加齢臭くらいな気がするけど。


 なんだっけ。なにか玩具を創ろうという話しだ。

 しかし遊び相手となるとシリアナとリルフィになる。リルフィはともかくシリアナは年相応の幼女の知能なので、複雑なルールのものは創っても遊べないだろう。着せ替えお人形遊びがちょうど良い。そしてそれはゲームではない。

 子どもでもできる簡単につくれるゲームといったらすごろくがある。すごろくでもルールを複雑化すれば、長く遊べるゲームにもなる。土地を買ったり、世界を旅をしたり、人生を体験したり。だけど今度はそういうゲームを作るにしても、私自身の知識が足りない。すごろくの線はなしだ。ダイスを振るならTRPGがやりたくなってしまう。すでに幼女のロールプレイしているのに。

 そうだなぁ、やはり手頃なボードゲームといったらカードを使ったゲームだ。山札は一つでめくり合うのが良い。題材は身近なところにする。そうだお宝をゲットするカードゲーム。私たちがみんな大好きなものを奪い合うのだ。最終目標のパパを取り合うゲームだ!


「りあー。白い紙たくさんちょうだい」

「白……ですか? 少々お時間がかかると思いますが……」

「白ちがった。書いてない紙。便箋ではない。安い紙」

「それでしたらすぐに用意できます」


 日本だと白無地のコピー用紙が手っ取り早いから言い方間違えちゃったぜ。

 持ち込まれたのは昔なつかしのわら半紙だ。それでも私が使うということで上等なものなのだろう。付けペンで書くのに支障はない。

 さて、何を作るかというとαテスト版だ。リアには紙をナイフでカードサイズに切ることを頼み、私はゲーム内容を紙に書き起こす。脳内では完璧であっても、出力するとバランスが破綻していることは多々あることだからだ。

 私がうーんうーんと頭を悩ませていると、ソファに転がっていたロアーネが起き上がり顔を覗かせた。


「何を作っているのですか?」

「パパを奪い合うゲーム」

「何を作っているのですか……」


 ロアーネは呆れた。

 まず目標のパパは「人:20点」である。人とは、点とは、なぜ20点なのかというのはまず置いといて。そしてパパのテキストには「人、物、時を合わせて20点で交換できる。パパを手に入れた人は勝者である。」と書き込んだ。

 そして私は、「【ママ】人:10点」「【執事】人:5点」「【メイド長】人:5点」「【教師】人:3点」「【師匠】人:3点」「【メイド】人:2点」「【コック】人:2点」「【庭師】人:2点」「【下男】人:1点」「【下女】人:1点」など加えていく。

 ある程度作ったところで、物カードも考えていく。「【魔法結晶(マジカヨ)】物:10点」「【ケーキ】物:5点」「【お団子】物:5点」「【クッキー】物:3点」「【人形】物:2点」「【手紙】物:2点」「【丸い石】物:1点」など。

 次に時カード。「【春】時:5点」「【夏】時:3点」「【秋】時:2点」「【冬】時:1点」「【朝】時:1点」「【昼】時:2点」「【夕方】時:3点」「【夜】時:5点」「【お月見(クルネスアステラ)】時:10点」など。

 点数は適当なのであとで調整するつもりだ。

 そして、各カードに交換レートを書き込んでいく。基本的には、「人」は「時」で交換できて、「時」は「物」で交換できて、「物」は「人」で交換できる。あとは1点のカードは条件なし。2点のカードは1点で交換できるなど、交換で点数を大きくできるようにしていく。

 ゲームの流れは、まず場の中央にカードを裏向きで重ねてまとめた山札を置く。そして引く。引いた人から時計回りに順番に、そのカードを交換して手に入れるかを選択する。誰も交換を選ばなかったら、そのカードは表向きで場に置かれて、それは各プレイヤーの順番の時に交換できる。

 手札は見せるように自分の前に並べておく。

 要するに、カード交換でパパを手に入れる、わらしべ長者のようなゲームだ。


「りあー、ろあーね、やろー」


 まずは三人でテストプレイだ。

 ルールを簡単に説明すると、「旦那様を手に入れるなんて恐れ多いのですが」とリアに言われてしまった。いいんだこれは、幼女ズで遊ぶために考えたんだから。

 ロアーネからは、時のカードの点数配分とか、無関係なものでお月見(クルネスアステラ)が交換できることなどの細かい部分を指摘してきた。いいんだよ! そういうものなの!

 なので、高得点カードは条件が難しくなった。例えば、お月見(クルネスアステラ)は「【神官】人:5点」や「【月蜂蜜パン】物:3点」や「【秋】時:2点」が交換に必要など。ううむ……複雑化するからどうかと思うのだが……。

 とりあえずやろう!

 ……パパが中々引けなくて、ずっとゲームが終わらなかった。パパは最初から場に出ていることにしよう。

 気を取り直して、二戦目。

 カードを引いたリアが、私の持ち札をちらちら見ながら何やら困った顔をしている。


「あの、お嬢様。お嬢様の【秋】(時:2点)を【クッキー】(物:3点)と交換していただけないでしょうか」

「んぬ? それだと私が得だけど……」


 急に持ち札の交換を提案されて、ルールが追加された。そしてリアはその交換した【秋】と残り二枚で引いたお月見(クルネスアステラ)と交換した。


「ちょっとぉ!? それありなんですかぁ!? ロアーネ聞いてないんですけど!」

「うん。だって、これは、ルールづくりしている今」

「なるほど。でしたら、今リアが交換で出したカードも交換してもいいですよね!? ならば【春】でこの【神官】と交換します! そして【神官】と【聖水】で場にある【洗礼】をいただきます!」


 まって。【聖水】なんてカード作ってないんだけど。


「【神官】と【水】で【聖水】になりますから!」

「急にわからないエイジス教ルールやめて」


 まあいいけど……。【聖水】と言い張っているだけで【水】だし……。

 そしてパパゲットゲームをカード調整や細かいルールを煮詰めていった。

 最終的に割と遊べるゲームができたと思う。


「しかしこれ、紙なのがいまいちですね」


 ロアーネがぺらぺらの紙のカードを指で挟み、ぺらぺらと振った。

 テスト版だからなぁ。

 まあ手作りでもこの後ちゃんとした厚めの紙で作り直せばそれなりになるでしょ、身内で遊ぶだけならこのクオリティでもいいでしょ、と思っていたのだが、リアが「これだけ楽しい遊びが作れたのです。せっかくですから木札で作ってはいかがでしょう」と言い出した。

 ちょっとそれ、難易度高くない?

 確かに手に札を持つゲームじゃないので、紙のカードじゃなくても良さそうだけど。


「もし木札で作るとしても、《βテスト》して《クオリティアップ》して《カード》も考え直さないと」

「太陽の国の言葉はわかりませんが……、お嬢様はまだ物足りないと感じていらっしゃるのですね」

「うん」


 パパを取り合うゲームとか意味不明すぎて幼女ズでしか遊べないし。そんなのしっかり作ってもなぁ。


「もっとエイジス教の教義を入れましょう!」


 とロアーネは別の方向で熱くなってるし。

 そして私は、ちゃんとした紙でカードを全て作り直した。イラストもそれなりにちゃんと描いた。「お嬢様は絵も描けたのですね」と褒められた。えへへ。

 顔料でカードの縁に色も塗った。カードの種別がひと目でわかるようにしたのだ。人カードは青。物カードは赤。時カードは黄。色に意味はない。なかったはずだが、それを見たロアーネが「なるほど。人は空より降り立ち、大地は火より生まれ、月は道を示す、の一節に沿った色分けなのですね」と関心していた。褒められたからえばっとこう。えへん。


 そして幼女ズで遊んだ。なぜか教師も興味を持ったようで、後ろから見ていた。なんか授業みたいでやりづらくなるのじゃが。

 そこで一つ問題が起きた。シリアナが思ったより算数ができなかった。そうか、点数計算って足し算だもんね。うーんあーんと悩むので、シリアナには教師のサポートが付いた。別に教材のつもりはなかったのだが、足し算の勉強になってしまっている。

 若干忖度はあったが、シリアナがパパをゲットして喜んでいたので良しとしよう。

 シリアナがパパカードを手にして書斎に走り出し、パパに抱きついて「見てー! パパ手に入れたー!」と一日中パパにくっついていた。多分なにか勘違いしているけど良しとしよう。

※即興で考えたゲームなので、似たようなルールのカードゲームがあったとしても関係はありません。

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