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お漏らしあそばせ精霊姫  作者: ななぽよん
【7章】悪魔の子編(12歳春〜)
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168話:負けフラグよ!?

 はあ。疲れた。

 俺はどっとベッドに倒れ込んだ。


「なんなんだアレは。まるで思考がめちゃくちゃじゃあないか」


 宿敵のロアーネが神輿にしているという噂の精霊姫。なんとか手懐けられないかと考えたが、アレの思考を読んで追うことに辟易(へきえき)した。なんだよ、ネコラルと猫人の糞が爆発するって。外の世界じゃそんなことになってんのか?

 全く意味がわからない。

 しょせんは子ども。おだてて持ち上げれば容易に操れるだろうと思ったら、俺の事を滝の精霊だのと呼んできた。もしや、全てを知っていて俺を馬鹿にしてきたのか、アレは。

 錬魔術師(アヒルメスタ)は非科学的な事象は信じない。精霊などいるはずがない。あれはただの魔力の塊が揺らいでいるに過ぎない。人の影をゴーストと呼んでいるようなものだ。馬鹿げている。

 アレはどうやら自らを精霊だと信じ込まされているようだ。精霊姫と刷り込み続けた結果であろう。しかしロアーネはよくもあれだけの器を用意したものだ。頭はぽんこつだとしても、支配してしまえば問題はない。

 そして、アレのエロイナスを見たところ、あの程度の魔力なら問題はない。そうだ。今夜にでもロアーネの器を奪ってやろう。

 俺が新たな器を得れば、奴らを見返せる。俺がマスクワになるのも良いだろう。そうしたならばディルエンガラムも俺の手に。くくく。楽しくなってきたなあ!



 がばり。

 変な夢を観たと思って目を覚ましたら、アイシアちゃんが私の首を締めていた。

 ふふ。ずいぶんと熱い夜這いじゃないの。


「あら。起こしてしまいましたか? 寝苦しそうに見えましたので、胸元のボタンを外そうかと思いまして」


 つまりそれは、エロいイベントが始まるってこと? エロイナスしちゃう?


「ふふっ。これでも町で一番良いベッドなのでございますが、精霊姫には硬いかもしれませんね。賓客が訪れることなどありませんので、わたくしの家の客間をご用意いたしましたが、ご不便をおかけして申し訳ございません」


 ふむ。私の頭をなでなでするアイシアちゃんは昼間のアイシアちゃんと同じだ。

 ところで私はいつの間に寝落ちしてしまったのだろうか。山の野性味ある料理を頂いたところまでは覚えているのだが……。

 もしや、睡眠薬を盛られた!? いや、久々の遠出で疲れただけだなきっと、うん。私は血糖値スパイクの可能性から目を背けた。

 ……。

 ところで、アイシアちゃんが私の枕元から離れないのだが? なに? 一緒に寝たいの?


「ティアラ様が寂しそうにしていらっしゃいますので。眠るまでお話でもいたしましょうか?」


 うむ。エイジス教とは無関係な話で頼む。


「昔のことです。ロアーネという少女がいました」


 いま私、その話は止めてと言ったよね? 言ってないか。あれ? 思考読まれてない? おーい!


「ロアーネはエイジス様の使徒でございます。彼女は教えを広めるために旅に出ました」


 ふむ。ロアーネ過去編が始まってしまったぞ。興味がないと言えば嘘であるが、ぽぽたろうに半分意識を持っていかれてるポアーネは、すでにロアーネと言っていいのか怪しい。なんだか今さら聞いてもなあという気がする。


「……そして、色々ありました」


 急に雑になったな、ロアーネ伝説。いや、最初から雑か。そもそも宿敵の相手をその仲間に話すのだから、そりゃディティールは雑になるか。


「寝ましたか?」


 いや寝てないけど。寝付けなくなるような気になる話を始めたのはそっちじゃん。せめて錬魔術師(アヒルメスタ)との争いになるところまでいこうよ。


「寝ましたね?」


 いや寝てないゆーとるやんけ! いや言ってないな。口が動かない。ついでに身体も動かない。もしかしてピンチ? 参ったねこりゃ。ははは。


「落ちたか」


 アイシアが再び私の首に手をかけた。ひんやりする。

 そしてアイシアの手がバチンと弾かれた。アイシアは空中で二回転して壁に吹っ飛んだ。


「な!? 完全に意識は飛んでるはずでは!?」


 いや、めっちゃ意識あるけど。

 てか、久々に自動魔法カウンターが発動したけど、何をしようとしたんだこいつ。

 やはり敵か。こいつは敵だ。敵だな? 敵に違いない。


「まさかすでにロアーネが感染している!?」


 ぷっ。思わず吹いた。口動かんけど。ロアーネって感染とかするものなんだ。なに? ウイルスなの? 病気なの? うごごごご……ロアーネとは一体……。


「いや、コレの思考は聴こえない。ではなぜ!? ヴァウストの言う通り、何かが混じっているというのか!?」


 んっ……。私は何とも言えない気分になった。

 それってつまり私のことじゃん。え? オレって主人格じゃなかったの? 内なる幼女が潜んでたの? おーい! 心の中に呼びかけてみたが返事はない。そりゃそうか。アイシアが言うには寝てるのだから。


「にゅにゅ姫ちゃーん? どうしました〜? またベッドから落ちましたか〜?」


 ソルティアちゃんが部屋に入り、壁際で座り込んでぐったりしているアイシアに目を見開いた。


「あら? アイシア様? 先ほどの音はアイシア様が?」

「ええ。驚かせてしまったかしら。貧血で少し壁に倒れてしまって……」

「まあ大変! 横になられた方が……。いまベッドのこの子をどかしますねー」


 ぷらーん。私はソルティアちゃんに抱えられた。

 その背後に近寄る影……は、もちろんアイシアだ。その手にはナイフが握られている。

 ソルティアちゃん逃げてー!


「悪いけど。君には用はないの」

「え?」


 ずぷり。ナイフから血が滴る。いてえ。

 ソルティアちゃんは背後から迫るナイフを華麗に回避し、代わりにその手にしていた私の身体のぷにぷにぽんぽんに突き刺さったのだ。ただの果物ナイフゆえに刃は深く刺さっていない。お肉付けといて良かった。臓物お漏らししてない。


「どうして……」


 アイシアはナイフを引き抜き、ソルティアちゃんと対峙する。


「悪いけど。君には用はないの」


 テイク2すんな。


「よくわかりませんが、そういうことですね?」


 ソルティアちゃんは私のお腹の傷を土魔法で固めて、ぽいっとベッドに放った。うぐ! 私は大ダメージを受けた。


「にゅにゅちゃんちょっと待っててね。いまご乱心の方を押さえますから」

「は! この俺がメイドのガキにやられるとでも!?」


 あ、アイシアちゃん!? 腹黒キャラが腹黒だしたらそれはもう三下よ!? 負けフラグよ!?

 しかし彼女はあのロアーネの宿敵、しかも容赦なくナイフで攻撃してくる無慈悲さを持つ。ソルティアちゃんの分が悪いか。ソルティアちゃんがんばれー!

 開始の合図のない室内での魔法戦闘。これは一瞬で決まりそうだ。

 そして瞬きする間の一瞬で決まった……。いま私の目は開かんけど。

 まず先にアイシアの石弾射出(スコンブシュテア)がソルティアの心臓へ向かって放たれた。

 だが、ソルティアは前傾姿勢で前へ詰め寄りながら、それを素手で弾いた。いや、正確には土魔法で硬めた手だ。

 ソルティアはその手でアイシアの腹をぶん殴った。アイシアは「ごぽっ!」とお昼ごはんを口から漏らした。きちゃない。

 なるほど……。狭い室内では肉弾戦できる狩人タイプの魔法メイドさんの方が有利であったか。もしかして、ソルティアちゃんの護衛スペックすごいのでは? お嫁さんにしたい。


「ふう。にゅにゅ姫ちゃんの体術の朝練を観ておいて良かったー」


 なに?

 ふっ。私が体術を学んでいたのはこのためだったのだよ。よくぞ学び取ったソルティアちゃんよ。というか、観てるだけで今の動きができたの? なんで? 基礎スペックの差?


「ええと、何か縛るものは……。切れないもの……。にゅにゅちゃんの髪の毛?」


 いやそれはおかしい。しかし、確実ではある。

 私はごろりとベッドから落下した。もちろん、髪の毛で動き、髪の毛で着地した。

 そしてわささささとアイシアに近寄る。


「ひっ! ひぃ! 蜘蛛の魔物!?」


 いやもうその流れはええって。

 私は髪の毛を触手のように伸ばしてアイシアの全身を縛った。ふーん、エッチじゃん。

 ついでに私はセクハラをした。さわさわ。


「な、なんなんだこいつは! 淫魔か!?」


 失礼な。

 なれるもんならエッチなサキュバスになりたいわ。男は誰だってエッチなサキュバスを追い求める。それは、エッチなサキュバスに襲われたくもあり、エッチなサキュバス自身になりたくもあり。


「くっ! 変な思考が流れてくる! あ、頭が狂う!」


 失礼な。

 どうやら髪の毛でふん縛ったせいで有線接続してしまったらしい。

 せっかくだから、事が落ち着くまで教育しようか……。まずはおちんちんが付いている方がお得感というところからかな……。

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― 新着の感想 ―
[良い点] そう、にゅにゅ姫におちんちんが付いてるとお得なのだ。 ……ないじゃん。 ……でも大丈夫……髪の毛が勝手に、ね。 [気になる点] アイシアさん即落ち。(自白的な意味で) [一言] 何が出…
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