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お漏らしあそばせ精霊姫  作者: ななぽよん
【7章】悪魔の子編(12歳春〜)
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159話:ファストトラベル

 どうせノノンは去った振りをしてプリンでも食べているのだろうと思ったら、どこにもいなくなっていた。この様子だと本当に帰ったのだろう。

 私は思わず舌打ちをした。感づかれたのかもしれん。エロ水着を着させようとしていたことを。

 私は黒い紐状のそれを手に、窓の外の青空を見上げた。本日も晴天なり。

 仕方なし。リルフィに着させるか。


「いやです!」


 今年も拒否られてしまった。なんだよ。減るもんでもなしに。

 とはいえ自分で着ても愉しめるものではない。ゲームみたいに三人称カメラがあるわけでもなし。そういえば三人称視点の感覚を持っている人も実際にいると聞いた。試してみよう。

 んぬぬ……。できた。

 この視点は……。辺りを見回して私と目が合った。ああ、花瓶からだ。そこに挿さっているくそでかの百合だ。

 私は花瓶の百合に向かって手を振った。おーい。


「なにをしているのですかー?」


 私の視界の中にふわふわピンクのポニーテールがぷるんと揺れた。ソルティアちゃんは横に体を傾けて私の顔を覗き込んでいるようだ。私の視界はそれを背後からうなじを覗いている。屋敷のメイドさん方は外へ出ないので色白だが、ソルティアちゃんは私が外へ連れ回しているせいか、日焼けでやや褐色になっている。

 私は目を開けて、自分の身体の主観を戻した。視界が暗転し、目の前ではソルティアちゃんが長いまつげのおめめをぱちぱちしていた。


「ふむ……」


 私は、ソルティアちゃんに百合の切り花を花瓶から引き抜いて床に置き、それをまたぐように指示した。

 そして私は百合の花の視界をジャックする。

 ふむ……。白ではない。ややベージュがかった生成り色のおぱんつ……。

 私が覗きをすると、ソルティアちゃんは「ひゃっ!?」と声を上げて、足元の百合の花を拾い上げてそれを振った。

 私の視界がぶわあと暴れる。一瞬で私の脳はパニックを起こした。おええええ。


「にゅにゅ姫ちゃん! 悪いことしてはだめですよー」


 まるで小さい子を叱るようにソルティアちゃんはぷんすこした。実際私は小さいのだが、ソルティアちゃんとは年齢は一つしか違わない。ルアに叱られるのとは違って精神的ダメージが大きい。

 いや、これはこれで……。

 新しい性癖開拓は置いておいて、私はソルティアに紐状の水着を広げて見せた。


「え? 嫌ですけど」


 え? まだ何も言ってないですけど。

 私はソルティアちゃんに手慣れた様子でドレスを剥ぎ取られ、すっぽんぽんにさせられた。そして私は洗脳されたかのように、指示通りに身体を動かされた。

 お姫様生活が長すぎて、着せ替えられ慣れすぎて、ついつい言うとおりに身体を動かしてしまうのだ。

 そして私のスレンダーロリボディに黒マイクロビキニを着させられてしまったのであった。


「お腹がぷにっとしてますねー」


 なんという屈辱! 私はスレンダーボディを失っていた。そもそもその時代のほうが少なかったかもしれない。一度増えた脂肪細胞は減らないのだ。私の身体はぷにぷにの呪いに侵されていた。

 しかしおかしい……。今の私は街を散歩してそれなりに運動しているはず……。私は髪の毛を使ってテーブルの上の精霊カードビスケットを取り、口に運んだ。もつもつ。

 私をひたすら甘やかしていたルアは婚約したタルト兄さまとよろしくやっているし、スレンダーソルティアちゃんは私の身体を案じて、お菓子をねだってもくれないのだ。くすん。なのでおやつは生野菜とかアーモンドとか出てくる。まあこれはこれで美味しいが、まるで虫になった気分である。

 がさごそがさごそ。ちっ。紙袋の中のビスケットが尽きたか。


「あー! また隠れてお菓子食べていますねー!?」


 なんだと? 人聞きの悪い。この紙袋の中は空である。空なのでお菓子など存在しない。すでにお腹の中である。


「は!?」


 私は驚愕した。おわかりであろうか。私は無意識に街で新発売の精霊カードビスケットを買っていたのだ。いやこれは中のカードが欲しかったわけで、ビスケットが食べたかったわけではない……という言い訳をしていた。

 し、脂肪に脳が操られている……!

 そう。増えすぎた体脂肪は脳に「太れ」と命令してくるのだ。こんな話がある。とある事務員。その人は高級店のスイーツをおやつに食べる趣味があった。しかしいつも買いに行けるほど暇なわけではない。いつしか安くて甘いお菓子でもいいかと、机の上に置くようになった。おわかりいただけたであろうか……。これが糖質依存症である。おデブは糖質の甘い誘惑には勝てないのだ。なぜか。先に言ったように、脂肪に脳が支配されるからである。

 これが、おデブの「ダイエット始めようかな〜」と言いながらポテチを食べる矛盾した姿の真実である。


「い、いやしかし、まだお腹がぷにっとしてるだけ……」


 ソルティアちゃんは私の脇腹を掴んだ。ひゃん!

 これはもう言い逃れようがない。ぷにんせすではなく、ぶよぶよである。


「行きますか? 山」


 ゾッ……! 私のぷにぷにに汗が珠になって溢れ出す。彼女の言う山はゆるふわ女子キャンプではなく、魔物ハンティングである。体重は減るかもしれないが、私の心が先に折れる。

 それに急激な強度な運動は膝に良くない。


 と、いうことで裏庭に来た。

 このまま外に出たので、途中、庭にいる下男の下働きに目のやり場に困らせてしまった。ほぼすっぽんぽんな年頃なお姫様なんて見たら、物理的に目が潰れかねない。無事を祈る。

 裏庭にはプールがある。しかし水は抜かれている。そこで妹シリアナを呼んだ。だばあ。プールに水がたぷんこと張られた。この小学校のプールほどの容積に一瞬のうちに……? 私よりおかしくない? この幼女。いや、ドレスをすぽぽんと脱ぎ去った妹シリアナは、なんと胸に膨らみが生じていた。

 な、なんだと……!? 妹シリアナは一つ下、いや、一シーズン差でほど二歳下である。つまり今は十歳半。そんなのおかしい! 私はお腹しかぷにぷにがないと言うのに!

 妹シリアナはカボチャパンツ姿でプールに飛び込んだ。水しぶきが私にかかる。

 ぐぬぬ……。こうなったらリルフィを呼んで……。いやだめだ。昔とは違って今はおいそれとリルフィを外で脱がすのは危険だ。どこからちんちんが漏れるかわからない。

 そう不意に振り返ると、茂みがガサゴソと揺れた。

 な、まさか本当に曲者が侵入してるのか!? 茂みの植物図鑑の視界をジャックすると、そこにいたのは猫人メイドのサビちゃんであった。丸洗い事件からプールが怖いらしい。そもそも猫人はお風呂が嫌いだ。だって猫だし。

 とりあえず捕まえてプールに放り込もう。そして妹シリアナの玩具になるのだ。

 しかしシリアナは、ふぎゃあと尻尾を膨らませるサビちゃんにあまり興味をしめさなかった。いつもおもちゃにして飽いているのだろう。

 それよりもシリアナは私のことを興味津々に見つめていた。夏の陽射しとプールでシリアナの瞳がギラギラに輝く。いやそれは本当に反射か? 発光してないか?

 シリアナの魔法の水が私を襲う。私は間欠泉のごとく噴き上がる水によって空中に打ち出された。そして……そして? 次がない。待て、プールからずれていて着水もできないぞ。そもそもプールの深さ的に着水しても大怪我だ。

 宮殿の屋根の高さを超え、私の身体は落下を始める。ちょ、シリアナ、おま。妹は今度はサビちゃんを空中に打ち出してすでに私には無関心だ。空中でサビちゃんと目があった。こいつ……悟りを開いた顔をしてやがる……。

 サビちゃんは猫人だから良いとして、私はこのままでは落下死だ。な、何かないか? 脳裏に浮かぶフラッシュバック。以前にもこんなことがあったような。

 そうだ! 私は翼が生やせるはず!

 翼ライオン(にゃんこ)の翼のイメージだ。翼ライオン(にゃんこ)は飛び立つのに助走がいるものの、あの巨体で空を飛ぶことができる。

 ぬぬぬ! ぶわさ!

 白くてもこもこな翼が生えた! よし!

 落下速度が軽減され、ふわりふわりとプールへ向かって降下する。

 サビちゃんが私を追い越し、先へプールへ落下していく。サビちゃんはくるりくるりと身体を回転させ、プールへ落下。水柱が立ち上がる。

 シリアナは私を指差して叫んだ!


「うしろー!」


 その声の瞬間、空中で私の身体は横から衝撃を受けた。何かに噛みつかれている!?

 なんだにゃんこか。

 にゃんこが私にじゃれついて噛み付いた。にゃんこはそのままぐるりぐるりと宮殿を旋回した。

 ふむ……。晒し者になってるのじゃが?


「アナもー!」


 そう言ってシリアナも自分で撃ち出した水流に乗って空を飛んだ。そして横からにゃんこへごつんとぶつかった。


「なにしとん!」


 衝撃でそのまま私達は水流に揉まれながら森へ飛ばされた。森の中へ突っ込み、そこにはウニ助の世界樹が……。

 ごちんことぶつかる瞬間、ウニ助の世界樹の幹ににゅっと穴が開いた。

 そしてごろごろごろと地面を転がる。私は髪の毛で身体をカバーした。シリアナはにゃんこが受け止めたようだ。

 ふうやれやれ。ウニ助の木がかわしてくれたおかげで助かったぜ。助かってなかった。

 すぐ近くから魔法の音が鳴り響いている。ここは……私が産まれた精霊の泉の森の中ではない!? どこかに飛ばされている!?

 辺りを把握する。人が近づいてくる音がする。まずい! 見つかる! 今の私達はほぼすっぽんぽんである。

 

「あれ? これって……」


 見覚えのある虹色の魔法結晶の木……。魔法学校じゃん!


「誰だ? そこは立ち入り禁止だぞ!」

「えへへ。お邪魔しましたぁ」


 人影見える距離へ返事をして、私は慌ててにゃんこに乗り、魔法結晶の木に手をかざした。

 するとにゅっと穴が開き、にゃんこはそこへ飛び込んだ。

 そして着地すると、そこは精霊の泉の前だ。ふう帰ってこれた。危なかった。危うく美少女二人のハレンチ姿を教員に見られるところだったぜ。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] えーと……ぬれぬれカボチャぱんつー! [一言] 久々の泉、なんかある?
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