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お漏らしあそばせ精霊姫  作者: ななぽよん
【6章】うんち編(10歳冬〜)
144/228

144話:だって私はパパと結婚するんだもんっ

 政治的な思惑が絡んでいる、私とナスナスの婚約。それに対する私たちの答えがこの婚約破棄ダブル宣言であった。

 さて、この婚姻にはどういう意図があったのか。ぷにぷにの私の頭でもわかるようにナスナスが掻い摘んで教えてくれた。

 まず私について。

 精霊姫ことティアラ・フロレンシア。聖なる泉で拾われたとかいう逸話を持つ虹色髪のぷにぷに幼女。翼ライオン(ドルゴン)をペットにし四本角大山羊(アスフォート)を討伐した逸話を持つ。精霊カードや王位継承権ゲーム、戦争TCGの発案者とされている。彼女の数年間の活躍をまとめると膨大で眉唾な話に思えるが、聞き込みをすればすぐに噂の多くは事実とわかる。

 しかし精霊姫の活躍の裏にはある人物が側に付いていたことが浮かび上がる。

 ロアーネだ。

 そう。精霊姫の活躍は全てロアーネの功績だとお偉いさん方は判断した。

 なぜ、オルバスタは拾った少女を養女にして、過剰な偽の功績を積み重ね、英雄に担ぎ上げているのか。彼らの出した答えは、消えた皇帝の孫と結婚させるためだ、であった。そう。オルバスタ侯爵は消えた皇帝の孫の伯父。彼は消えた皇帝の孫の行方を知っていたのだ。そして彼は自分の養女と、名前と姿を変えた消えた皇帝の孫とを会わせた。皇帝の孫の今の名はヴァイフ。今はクリトリヒ帝国で偽の親の元で暮らしている。


 ……どうしてこうなった。ちなみに情報源の多くはぽんこつスパイメイドのテーナなのですごく怪しいが、ナスナスが情報を精査した結果がこれなので、まあ大体こんな感じに思われているのだろう。

 そしてなぜナスナスが婚約者として私とくっつくことになったかというと、要するに当て馬である。

 ナスナスはベイリア北部デイスロウプ王国の名家であり、立場としては微妙な扱いであった。簡単に言えば、魔力を持ったタルト兄様がベイリア中央軍に在籍している感じである。

 格は高いが立場は低いナスナスがこれを断ることはできず、オルバスタ侯爵も無碍にできない。

 ナスナスの派閥は人気の精霊姫を取り入れられて大成功!

 親皇帝派中央派閥もオルバスタの娘と皇帝の孫の結婚計画を邪魔できて成功!

 精霊姫を中央に呼び込めばロアーネも付いてきて、オルバスタ弱体化できてハッピー!


 納得できないのは、突然婚約を申し付けられた私とナスナスだ。

 ナスナスは「籍を入れるだけだ」と半分諦めていたのだが。いや待てよ。こんな美少女と結婚できるんだから喜べよ。いや、好かれてもそれはそれで面倒になって困るのじゃが。ある意味お互いの相性が悪くて助かった。


 さて。

 婚約解消は角が立つ。しかしお偉いさん方の勘違いで婚約を押し付けられるのも腹立たしい。

 そこで私は考えた。望まぬ結婚。ダンスパーティーと来たら婚約破棄だ!

 それができるなら苦労はしない? ならばダブル婚約破棄宣言だ!

 どちらかが「あいつとは結婚しない」と言うことを考えるから問題になるのだ。当事者二人がお互いに「結婚しない」と言えば四つ目狼だって黙る。




 だけど、背脂豚(セアブラッシャ)おじさんは黙らなかった。


「貴様ァ! 我々を裏切るのか!」


 男はお肉をぷるぷるさせて脂を撒き散らした。


「わたしたちはけっこんできない理由があります!」


 私は動じずに、豚おじさんに言い放つ。ナスナスではなく私が言う空気の読まなさが大事だ。

 豚おじさんを制したパパが私に尋ねた。


「いったいどういう事だい?」


 こういうことだ。


「ぱぱー。だって私はパパと結婚するんだもんっ」

「は?そ、そうか。そうだよな、ははっ」


 私はパパにてててと駆け寄って抱きついた。パパは飛びついた私をキャッチしようと手を伸ばしたが、三歩引いた。パパは私よりも腰が大事だったようだ。私は床にずべちと倒れ込んだ。ひどい。


「す、すまん。つい」


 大丈夫。私はギリギリのところで髪の毛で身体を支えたのでダメージはない。私は髪の毛で前方頭髪回転(髪の毛スプリング)で起き上がってパパに抱きついた。ちょっとアクシデントがあったけど計画通り!

 その様子に再び静まり返ったフロアで、ナスナスが周囲に言い放つ。


「俺も恋愛を理解しておらぬ子どもと婚姻を結ぶつもりはない。この件は白紙とするぞ」


 そう言われては周囲も黙るしかない。

 精霊姫と呼ばれ、今やオルビリアでは精霊姫教なる教祖と言われ崇められる存在。オルバスタ侯爵の操り人形と思われていた少女は、パパに甘えるだけのぷにぷに幼女だったのだ。十二歳と言われているがとても信じられないであろう。実際私はこの世界に生を受けてまだ七年なので、実年齢からすれば年相応の身体ではあるのだが。さすがに七歳児よりは大きいけど。

 ならば大きくなるまで待てば……という話になるが、魔力が大きいほど成長が遅くなるのは常識である。そして精霊姫の魔力が多いというのも知られている話だ。つまりこの女児、成長しないぷにぷに幼女と思われるはずだ。

 私はそのつもりはないけど。モデル体型美女目指すんですけど?


「婚約破棄など認めん! 儂は認めんぞぉ!」


 豚おじさんは、私の身体を掴んでパパの腕からむしり取り、ナスナスの前に突き出した。ぷらーん。


「デイスロウプにはうんち姫が必要だ! それは貴様にもわかっているだろう!」


 私の身体はナスナスに抱えられた。ぷらーん。


「叔父上こそわかっていない。こいつがただの魔石を生む蛇ではないということを」


 え? この豚おじさんってナスナスの叔父さんだったの? ごめん……。


「な、何を言っている。ならば竜だとでも言うのか!」

「左様」


 金の卵を生む鶏みたいなことを言っているのだろう。多分。


「あなた方は勘違いしている。オルビリアに魔法結晶を生み出すダンジョンなどない。精霊姫カードダイジュチップスに使われている魔法結晶は全て彼女の手で生み出されている」

「なにを馬鹿な!?」


 ちょっとシリアスな場面で急に真面目なナスナスが真面目に「精霊姫カードダイジュチップス」とか言うから思わず吹き出しそうになってしまった。だめだ……こらえるんだ……笑う場面ではない……!


「精霊姫のその余裕の笑みは……、アルダナスコの言うことは本当なのですかな?」

「見せてやれ、精霊姫」


 見せてやれって、魔法結晶化を?


「ちょっとした見世物だ。オルバスタ侯爵殿、曲を」

「う、うむ」


 宮廷音楽隊の軽やかな曲が流れ始める。

 私の前にワイングラスが置かれて、ナスナスに注がれた。飲んでいいの?

 私がワイングラスを口に付けようとしたら、ナスナスにおでこをぺちんとされた。


「飲むな。結晶化しろ」

「ふえぇ……」


 ワインは飲むものなのに……。

 しょうがないにゃあ。やらんとすまんさかい。いっちょやったるかい。

 謎方弁で気合を入れたが、私は周囲を見回して気が付いた。当たり前だけど自分めっちゃ集中されとるやんけ。

 私はナスナスの顔をちらりと見た。ナスナスはこくりと頷いた。


「やるんだ精霊姫」

「ふえぇ……」


 変態がいるよぉ……。

 美少女におしっこを漏らすことを強要してくる男に恐怖し、私はちびりそうになった。

 私の虹色の髪がざわめき浮き上がり、私の手に魔力が集中する。


「な、なんじゃこの魔力の輝きは……!」


 魔法に詳しそうな見知らぬじいさんのカットインが視界に入り、集中が乱れる。

 侍女ルアが慌てて空のワイングラスを手にして、背後からこっそり私のスカートの中に手を入れた。

 慌ててたのはわかるけど、それはそれでまずくない?


「お漏らしあそばせっ」


 ルアにかわいく言われたならしょうがないにゃあ。私は興奮した。

 手の中のワイングラスのワインがぼこぉと中国の岩山のようにそそり立つ。そして赤ワインの赤さを残したまま虹色に固まった。

 ふう。

 待てよ。これ事後処理はどうしたら。


「な、なんという……なんということじゃ……」


 魔法に詳しそうな見知らぬじいさんが卒倒した。

 それを見てピンと来た私は、ふらりとルアにもたれかかった。ルアは「わわっ」と慌てながら私の身体を支えた。


「お嬢様はお疲れのようですので、お運びいたしますっ」


 ルアはワイングラスをナスナスに渡し、私を抱えて会場の外へ出た。やれやれ上手くいった。長年の付き合いで私たちの意思は通じ合っている。あとは私のスカートの中を乾かし、グラスの中身を捨てるだけだな。

 で、そのグラスは?


「あっ。えへへっ」


 ふむ。証拠を現場に残してきてしまったようだな。このうっかりメイドさんめ!

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