プロローグ
神は本来無慈悲です。少なくとも僕はそう思っています。
人間がどう思おうが、人間がどんな思いで神を待ち望んで、どんな思いで律法の代わりを作ることで我慢していようが、そんなものは全知全能の神の前では何の価値もないのです。
神は哀れな人間を星にしません。
神はいつだって迷い苦しむ人間を一方的にさばきます。
人間がなぜ苦しみ、迷うのかなぞどうでもいいのです。
「……ごめんなさい」
虚飾の果てに救いはなく。
「ごめんなさい」
願いを閉じ込め、慈悲を殺した。
「ごめんなさい……! ごめんなさい……! ごめんなさい……ッ!!」
その屍は、山をも築き。
「赦して、赦して、赦して……!!」
その血潮は河を成して。
「痛いよ、痛いよ、痛いよ……!!」
耐えることを当たり前とし。
「お願い、お願い、お願い……」
欲しがることで蔑まれると、信じ込んだ。
「欲しいって、ちゃんと言いますから……!!」
甘えたいくせに、休みたいくせに。
「もう、建前で自分を飾って、だましませんから……!!」
我慢できなくらい辛いのに。誰もが抱きしめようとしてくれているのに。
「お願いします……。お願いします……」
その罪人は、最後まで気が付かなかった。
「いつくしんでください」
抗う術を持たず、理想を殺し。
「もっと愛でて」
抗う術をもって天愛に背いた。
「もっと愛して」
そのものの罪を知る者はおらず。
「もっと触れて」
そのものの罪を責めるものはいない。
「誰か、私を抱きしめて、ください」
だが、ゆえにまた、その罪を許すものなどいない。
そして、時計仕掛けの空は巡り、裁きの時が、今、始まる。