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番外編 魔王城での生活

「チェナちゅあああああああああああああああああああん!」


 兄は魔王城に帰ってくるやいなや、私に飛びつく。


「……触んないでくれる?」


「辛辣う!」


「だいたい、犯罪者に抱きつかれるとか……もう一回、刑務所行きたいの?」


「いろいろ当たりが強いね! そこがチェナちゃんの魅力なんだよ!」


「そもそも、今まで番外編はシリアスで統一されてたんだよ。お兄ちゃんが出てくるとシリアス崩壊するんだけど……どうしてくれんの?」


「なんかメタいよ? もしかして、お兄ちゃん、いなくて寂しかった?」


「死ね」


 兄を引き剥がし、自分の部屋に戻る。


 …………。


 さあ! ワレはこれから、たくさんのアニメを見まくって、たくさんの状況を予測できるようにするぞ!


「ワッハッハッハ!」


「わあ。チェナちゃん可愛い」


「ハッハッハ…………」


 …………。


 そこには、部屋に脚を踏み入れる兄の姿が。


「勝手に部屋に入らないでって言ったよね」


「……へっ?」


「…………」


「ちょっと待って! 魔が差しただけで」


 私は魔法で、巨大な空気弾を作り出す。


「待って! マジで待って! あああああああああああああああああああああああああああ!」


# # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # #


 そんな感じの性格の人が、私の兄である。シスコンの兄を持つと辛い。


 まず、朝目が覚めると、なぜか着替えさそようとしてくる。これだけがひどいのではない。兄が部屋から出ていっても透視魔法で見ようとしてくるのである。


 なので、わざわざ壁を殴り、衝撃波を与えて、兄を失神させてから着替えなくちゃいけない。そろそろ壁がもろくなっているのがその証拠である。


 そして、朝ごはんを食べに食堂にやってくる。毎日、朝は兄が、夕方は私が作るようになっている。


「…………今日は目玉焼き?」


「うん。チェナちゃん好きでしょ?」


 好きではある。でも、毎日出されるのはさすがに……。


 まあ、兄が目玉焼き以外作れないというのは知っている。朝ごはんだけでも我慢しよう。


「ねえ。お兄ちゃん」


「どうしたの? チェナちゃん」


「今日もギルドに行ってくるね」


「…………」


 すると、突然私の肩をつかんでくる。


「……誘惑されないでよ?」


「…………は?」


「カケルとかいう性欲の擬人化みたいなやつとか、ルルとかいう腐女子の皮を被った少女に寄生してる腐女子とか、ウィルとかいう小さい女の子には見境無いロリコンとかに気を付けろ」


「いや……大丈夫だって。みんな普段はいい人だし、全然問題無いよ」


 それを言うが、まだ兄は不安そうである。しかし、納得しないわけにもいかないようだ。


「……そう……なのか?」


「うん。だから、心配しないで」


「…………」


 私は玄関に向かう。そして、靴を履き、魔王城の扉を開ける。


「それじゃ。行ってくるね」


「ああ」


 その時、いつも兄は笑顔で私を見送ってくれる。なぜだか、寂しそうな目をしていることがある。


 最近になって、それは増えてきた。


「じゃっ」


 私は外に出る。


 そして、時間になったら城に戻り、夕飯を作る。それから、兄とご飯を食べる。


 お風呂に入り、寝る。


 寝る時は、いつも身につけている眼帯を取る。


 生まれて、物心ついた時から、外では眼帯をはずさなかった。


 はずすと、膨大な魔力が溢れてしまう。それが母が言っていたことだった。


 その母というのも、つい数年前に病気で亡くなってしまった。


 母に言われたことは守りたい。そういった思いも私の中にはある。


 だから、私はまだ眼帯をしたままだ。これが取れる日がいつになるかはわからない。


 ……いや、取れなくていいと思っている。このまま、兄や皆と一緒にいれる生活が続くならば……。


 そんな願いを心に秘め、私は幸せに暮らしている。

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