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第78話 タクローの刑務所生活

 囚人の朝は早い!


 朝5時に起床し、ベッドのシーツをはがす。それをふとんと共に回収する。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


「おりゃああああああああああああああああああああ!」


 そして、皆でそれを手洗いし、刑務所の屋上に干す。雨の日は、集会場と呼ばれる広い建物で干す。


 そこからも忙しい一日が続く。


 地下の採掘場へ行き、たくさんの鉱石を集める。


 バチンっ!


「ひぎっ!」


「こおおらああ! サボるなあ!」


 思いっきり鞭で叩かれる俺。


 このようにあまりの仕事のきつさに疲れ、休憩しようとすると、看守からきついお仕置きが……。


「ふう……ふう……お嬢ちゃん。もう無理じゃよ……」


「こらああああ! だから、サボるなっつってんだろうがあ!」


 鞭で爺さんのケツを打ちつける。しかし、なぜか爺さんは痛がらない。


 それどころか、喜んでいる?


 その姿にオルゴールも見かねている。


「重症だな……あの爺さん」


 こいつが言うのだから、本当にあの爺さんはやばい。最初はなんかかっこよかったのに、今じゃただの変態である。


 それからは食堂で食事をする。毎日、プルプルとかいうデザートを巡って争奪戦が起こる。


「おらあ! じゃんけんで勝ったのは俺だろうがあ!」


「おめえは、あとだししたから、ダメだろうが!」


 そんな中に、ブラウンが入っていく。


「こらあ! やめないか! 間を取って、俺が食う!」


「「ふざけんな! ごらあ!」」


 食事を済ませたあとは、風呂に向かう。ここで一日の疲れを癒すのだ。


 そして、風呂上がりにそろばんの練習。


 ちくしょう! なんで、異世界にそろばんがあるんだ!


 そして……就寝。そんな生活が一週間続いた。


「…………」


「…………」


「……なあ。オルゴール」


「…………ん? どうした?」


「……なんか……違くね?」


 明らかに囚人の生活じゃない。


 …………。


「ここって学校か?」


「急になに言い出してんだ?」


 だって……なんやかんや、出所したあとの生活に役立つことが多い気が……。


「そんなことよりも、俺の小説を呼んでくれ!」


「いや……お前の小説はなんか若干……例えるなら……自慰こう」


「おい、それ以上言ったら、はっ倒すぞ?」


 仕方なく、俺はその小説の書かれた紙を受けとる。


「どれどれ……」


 パサっ


「……ん?」


 その時、紙の束から小さな紙きれが落ちる。それを拾い上げると……。


「……何かの手紙か?」





 ユキナへ


 最近、バイオリンの調子はどうだ?


 俺のことは気にするな。あと二週間すれば、出所できる。そしたら、お前の演奏を聞くことができるだろう。


 演奏が下手だから聞かせる自信が無いって? 大丈夫だ。じきにバイオリンが弾ける先生を俺が探してやる。


 俺を誰だと思ってやがる。魔王オルゴールだぞ。そんなことは簡単にできる。


 だから、それまで待っていてほしい。


             オルゴールより




「……なんだ? これ」


「あああああああああああああああああああああ!」


「…………は?」


 俺が手紙を見たのに気づくと、オルゴールは叫ぶ。


「返せ!」


「…………」


 すると、鉄格子の向こうにサラ様がやってくる。彼女は俺に聞いてくる。


「……なにやってんの?」


「……これって渡せる?」


「え? まあ……手紙ぐらいなら」


 手紙を便箋に入れ、サラ様に渡そうとする俺。そんな俺にオルゴールはしがみつく。


「ちょっと待て! まだ、ちゃんと見れてないから! まだ、あと10回は確認したいから!」


「……たかが手紙にそんな確認いらねえっての。……んじゃ、そういうことだから渡しといてくれ」


「おい!」


 サラ様はその手紙を受け取る。


「……どんな子? 特徴とか、わかればギルドを経由して渡すけど」


「えっ」


 それを質問されるとオルゴールは顔が赤くなり、特徴を言う。


「……髪が橙色で……なんかクルッとしてて……いつも無表情で……」


「ふーん。なんか可愛い子ね」


「……それで……胸はそこそこで……パンツの色はミドr」


「オーケー。そこまで聞いてないから大丈夫。最後に歳はいくつぐらい?」


「……んー。歳かあ。だいたい180ぐらいか」


「…………???」


 その数字に違和感を持っているサラ様。俺はその数字を的確なものにする。


「たぶん、魔族はだいたい10倍の年齢だから、そいつは18歳ぐらいだろ」


「……そうなの。よく知ってるね」


「まあ、だてに完全記憶能力もってねえよ」


「ふーん。その分、ちょっとおつむが弱いのが残念だね」


「……おい、今なんつった?」


 サラ様は俺のことを無視し、その場を去っていく。


 すると、俺はオルゴールの肩をつかむ。


「なあ、結局そのユキナって女は誰なんだ?」


「……それ、聞くか?」


「聞くに決まってんだろ。まだ妹いたのか?」


「ちょっ、待って。俺の妹はチェナちゃんだけだ!」


 そんな気はしていた。なぜなら、そんな名前の妹がいるなら、とっくにオルゴールの口から名前を聞いているはずである。


「ただの女友達だ」


「……ふーん」


 俺はオルゴールがいつも使う机を眺める。


 バっ!


 その机の引き出しに手をかける。すると、オルゴールは必死に腕をつかむ。


「……放せよ」


「嫌だ」


「……何が入ってる?」


「デスノート」


「…………」


「…………」


 オルゴールの腕を剥ぎ取り、その引き出しを開ける。そこには一枚の手紙が……。




 オルゴールへ


  体調、気をつけて。


          ユキナより





「いや、文章量!」


 LINE並みの文章で送ってきてんな。この女。


「やめろ……恥ずい」


「恥ずかしくなるような手紙だったか?」


 とりあえず……だ。


「そいつがお前にとってどんな関係か。詳しく教えてもらおうか?」


「……ええ」


「いいじゃんか。もう一週間の付き合いだよ? 教えてくれてもいいじゃん」


「お前、シリアス残ってねえじゃねえか!」


 は? シリアス?


 そんなもんとっくの昔に捨てたわ。


「出会ったところから、最後に会ったところまで隅から隅まで教えてもらおうか」


「……わかったっての」


 オルゴールはそれを話し出す。


「あれは、ある草原に散歩に行った時の話だった」

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