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第6話 第一印象はわりと当てにならない

「ちょっと待て! このドラゴンであんたは何をしようとしているんだ!?」


「うふふっ。今からちゃんと教えてあげるからね」


 グイッ


「うおっ!」


 俺は引っ張られ、ドラゴンの方に頭を向けさせられる。


 パヂンッ!


「あうっ!」


 俺のケツが悲鳴をあげる。


 その女を見ると、乗馬用の鞭を持っていた。


「あんた馬鹿じゃねえのか!? なんでそれでケツ叩いてん……あああおっ!」


「ああっ。良い……良い! その顔が見たかったの!」


 マジで笑えないタイプの変態じゃねえか。てか、このドラゴンさんが待ってくれてるだけでもありがたいんだが……。


 じー……


 おや? このドラゴン……。ひょっとしてそんなに狂暴ではないのでは……。


「ちょっとちょっと!」


 そこにエルがかけつける。


「あなた何やってるの!?」


「頼む! エル! この変態を止め……あううっ!」


 バシッ!


 ケツが弾けるように痛い。容赦ないな、この女!


 待てよ。こんな時、便利な魔法が……。


 ベヂンっ!


「あああああああうっ!」


「あははっ」


 まずい……そろそろケツが限界だ。


「頼む! エル! お前が持っている本に移動系の魔法があるはずだ! その魔法は使っている本人は移動できないやつだった。だからそれをお前が……ああうっ!」


「えええっ! そんな急に言われても……」


「確か、209ページに……あああっ!」


 バヂンっ!


「わかった! わかったから!」


 本を開き、その魔法を探している。


 早くしてくれ。じゃないと、そろそろケツが割れる……。


 もとから割れてるわー。あははっ……。


「あった! これを使えば!」


 キュイイーン


「なんだ!?」


 これには女王様も予想外だったらしい。


 俺の周りが明るく光り出し、視界が悪くなっていく。


「うおおおおお!」



**************************



「……あ?」


 光が無くなると、俺の首にあの首輪の感触が無かった。


「よっしゃ! これで逃げられ……」


 ん? なんか、両手に別々の感触が……。


「…………」


 右手には鞭が……。左手には首輪の紐が握られていた。


 そして、その紐の先には……。


「……へ?」


 あの女が首輪をかけられていた。


「……エル。これは?」


「いやあ……」


 エルが俺と目を合わせない。まさか……こいつ……。


「実は、魔法を発動させる時、間違えちゃって……。あなたを首輪から移動させるだけじゃなく……あなたとその人の位置を入れ換えちゃった……みたいで」


「…………いや、良くやった」


「は?」


 ……やばい。ちょっと燃えてきた。


「なあ、エル。少し向こう向いててくれないか?」


「え? あっ……うん……」


 エルは俺や女から目を離す。


 俺は女の方を向く。


「あの……その鞭で何を……」


 女は俺に問いかける。


「…………」


 ニヤリと笑みを見せつける。


「え?」


「おらあっ!」


 バヂっ


「あうっ!」


 いやあ。なんか気持ちいいわ。


「どんな気分だ? さっきまで自分がやってたことをされるのは……。なあ? 女王様よお……」


 バヂンっ!


「はうっ!」


「初めからおかしかったんだって……。俺はどっちかっていうとSなんだよ!」


「そういう問題じゃ……」


 ベヂンっ!


「ひうっ」


 俺はだんだんとエスカレートしていった。


「そこのドラゴン! こいつを思いっきり威嚇していいぞ!」


 グオオオオオオッ!


 ドラゴンは勢いよく吠える。


「ぎやあああああああああああああ!」


「よーしいい子だ! おらあああああああああ。なにドラゴンちゃんを怖がってるんだ!? お仕置きが必要だな!」


 バチンっ!


「ひいいんっ」


「うひゃひゃひゃひゃっ!」


 それから数時間、同じようなことをしていた。



**************************



「はあっ……はあっ……はあっ……」


「あー」


 なんだろう。急に罪悪感が出てきた。さすがに二時間経ってから感じるのはやばい気がするが……。


「んじゃ、俺帰るわー」


「えっ……まだ首輪を外してもらってない……」


 でも、その前に……。


「とうっ!」


 俺はドラゴンの背中に乗った。そして、背中に刺さっている矢を抜く。


「こいつがあったから暴れていたのか……。よいしょっと……」


 回復魔法をかけ、傷は治っていった。そして、傷が治ると、俺はドラゴンから降りる。


「よしよしっ。これからは人がいっぱいいるとこで暴れちゃ駄目だぞ。わかったか?」


 きゅううーん


 なんだこいつ。結構かわいいじゃねえか。


 バサっ!


 ドラゴンは翼を広げ、空へ飛び去っていった。


「さて……。おい、そこの女……」


 俺は女の横を通りながら、自分にも含めて言う。


「これからは、自分がされたくないことを他人にするなよ」


 さて……帰りますか……。


 ガシッ


 …………。


 女は俺の袖をつかんできた。もしかして、あまりの俺のイケメンっぷりに惚れちまったか?


「おいおい。まだ何かあるのか? それとももっとお仕置きがほしいか?」


「……ゾ……」


「…………ゾ?」


「ゾクゾクするものをもっと!」


「…………は?」


 何を……言っているんだ?


「師匠! もっと私にすごいことをしてください! 私、あんな容赦ないプレイは初めてだったんです! だから、お願いします!」


「……お……ふ……」


 ……やっちまった。さらに面倒くさくなった。


「落ち着け。お前、何言ってるかわかってるのか?」


「はい。師匠。私にご主人様とは何であるかを教えてください!」


「いやあ……俺、ちょっと用事があるから……また今度な……」


「いやいや、今教えてください。さあ、その鞭で私の体に刻み込んでください! さあ! 私、たぶんHPはダメージの数だけ回復するんで!」


「ダメージ計算間違ってるだろ、それ!」


「さあ! 早く!」


 パクっ


「へ?」


 戻ってきたドラゴンが女をくわえる。


「ぎいやあああああああああああああああああ」


 ドラゴンは女をくわえたまま、飛び去っていった。


「ああああああああああああ! あっ。でも楽しいかも……」


 ナイスだ、ドラゴン。ありがとう。


 あのドラゴンのことだから、きっと離れた場所で下ろしてくれるだろう。


「さて、これで心置きなく帰れ」


「……変態」


 あっ。


 目の前に、エルがいた。そういえば、こいつがいたのを忘れていた。


「あなた……そこまでひどい変態だと思わなかったわ」


「違う! 自覚はあるから! だからそんな蔑むような目で俺を見るな……」


「まあ、あの人の豹変っぷりには私も驚いたけど……」


 さすがにエルも状況をわかってくれていたようだ。


 それよりも……。


 エルも同じようなことを考えていたようだ。


「依頼は達成できなくなっちゃったけど、いいの?」


「まあ……こればっかりは仕方ないからなあ」


 ふごっふごふご


「おお! まだいたのか。どうした? こんなところで」


 すると、あの豚が俺の脚にすり寄ってくる。その口には何か光る物をくわえていた。


「あ? なんだ? これ」

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