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第5話 女王様とドラゴン

「……なんだ……これは……」


 そこには、簡単な討伐の依頼が一つも無かった。


 すると、エルがある依頼に指をさす。それを見て、俺はこいつに言葉を放つ。


「……火を放つ凶悪な竜……こいつを討伐しろってか?」


「うん。そして、そのまま死んで来て」


「ひどい仕打ちだな。てか、そんなドラゴンぐらい余裕だし。むしろたくさん討伐できるわ」


「へえ。面白そうね。じゃあ一人で討伐してくる?」


 確かに初めての世界でドラゴンと戦うのに、仲間の一人や二人いないのは心細い。さすがに、異世界を何度も移動している中で仲間がいなかったことはあまり無いし。


 それにうっかり死んで、また他の世界に転生したくない。


「じゃあ、ルル。一緒に来てくれるか」


「すみません。私は今から帰って『激烈魔人ホモウ』の二期を録画しなければ、いけないので……」


「は?」


 そう言って、ルルはギルドの外に向かう。この世界にテレビとか、レコーダーってあるの? 中世ヨーロッパ壊れすぎじゃね?


 エルがこっちを不思議そうに見ている。


「激烈魔人ホモウって何?」


「いやいやいや! ただの大衆向けのヒーローだよ。すごくかっこよくて女の子にも人気なんだよ」


「そうなの?」


 危ない。うっかりあいつが腐女子であることがバレるとこだった。てか、あいつ隠す気あんのか?


「じゃあウィル。お願いでき……あれ?」


 そこにはウィルの姿が無かった。エルがその理由を説明する。


「ウィルなら、ルルの後をついていったわ」


「うん。やっぱあいつやばいやつだな……。改めて理解したわ」


 誰かあいつのロリコンを治してやってくれ。そろそろ犯罪に発展しそうだ。


 ……なにやら、目の前の女が自慢気な表情で自分に指をさしながら、こちらを見ている。


 仲間にしますか?


 いいえ。


「んじゃ。俺だけで行ってくるわー」


「ちょっと待ちなさいよ!」


 エルは服の袖を引っ張ってくる。


「ああ? そっちが一人で行ってこいっつったんだろうが! なんでお前を連れていかなくちゃならねえんだ?」


「あなたといると魔法の勉強になるのよ! だから、一緒に連れてってよ! 報酬は持っていっていいから!」


 そいつは俺に掴みかかってくる。


 か弱い女を巻き込みたくは無いんだが。


 え? ルルは違うのかって? あの内面の変態性を見たらどうだろうか……。


「特別だ。それに後ろで見てるだけだぞ。前線に出て、うっかり死んでもらったら困るし……」


「大丈夫よ。私はこう見えて魔法学校ではトップの実力を持ってるわ」


「へえ……」


 てっきりこいつは馬鹿だと思っていた。


「……偏差値10くらいの学校か?」


「なっ! 60くらいあるわよ!」


 まあ、だいたいあの魔法の本のレベルでいったらそのぐらいか……。


「んじゃ。ちゃんと自分の身は守れよ」


「わかってるわ。防御は得意な方だから」



**************************



「ねえ」


「あ?」


「なんでこんな地味なことしてんの?」


 ドラゴンが現れる草原まで、森が続いている。その間に生えているキノコを抜き取っていた。


「地味な作業でも、重要なことなんだよ。このキノコを使えば、回復薬が作れるって本に書いてあった」


「回復薬って……それあなたに必要なの?」


 俺はエルをじーっと見つめる。


「……なによ」


「お前勘違いしてないか?」


「え?」


「どんなに魔法を覚えるのが早くても、どんなに剣術がうまくても、所詮は一人の人間なんだよ。もしものことを考えると、一番安全な手を選ぶべきなんだよ」


「……あなたって結構臆病よね」


「なんとでも言え。臆病なやつが勝つようにこの世はできてるんだよ」


 ある程度キノコを回収し、俺たちは草原に向かった。すると……。


 ふごっふごふごっ。


「あ?」


 そこには一匹の豚がいた。


「なんだ? ……こいつ」


「結構綺麗な見た目してるじゃない。誰かに飼われているのかしら」


 なんだか、俺の近くに寄り、匂いをかいでいる。


「なんかくすぐったいなあ……」


「すみませーん」


 森の奥から一人の金髪の女性がやってくる。その女性はたぶんこの豚の飼い主であろう。


 やばい。スタイルが良いからか、ちょっと興奮した。


 ……おっと、いかんいかん。気をしっかり持たなくては……。


「大丈夫ですよお。ちゃんとここにいますから!」


「ありがとうございます!」


 その女性は首輪を持っていた。そして、それを付ける。


「…………」


「…………」


 俺の首に。


「…………あの? なんで俺に付けてるんですか?」


「あら、ちゃんと散歩しましょ」


「え?」


 すると、女性は俺を引きずり、走り出す。


「ちょっと待っ……ぶえふあっふええうあああ!」


「あははっ! あははっ!」


 エルはそれを見て呆然としていた。だが、やがて状況を理解し、追いかけてくる。


「ちょっと! カケル! 待って!」


 俺はそのまま引きずられながら、女性に連れてかれるのであった。



**************************



「……あれ。ここは……」


 そこは広く、空気がおいしい大草原だった。


「……なんで、俺こんなところに……」


 ピチャッ……


「ん?」


 俺は頭を触ってみる。すると、その手には何かヌメヌメした物がついていた。


 その頭上を見上げてみる。


「……は?」


 そこには大きなドラゴンがいた。さっきのはドラゴンのヨダレだったのだ。


「……ああああああああああああああああああ!」


 俺は必死に走り出す。だが、首輪を引っ張られ、引きずり戻される。


「ぐへっ」


 俺はその首輪を引っ張ったやつを見る。そこにはあの女性がいた。


「あんた何なんだ! さっきから俺にひどいことしやがって。おまけにドラゴンの目の前に差し出すなんてよお!」


「フフフッ。いいわ。やっぱりあなたはいいわ。最高よ」


 やばい。


 この人、目がイッてる。これは……まさか!


「いまからたっぷりお仕置きしてあげるからね……」


 ドSな女王様っぽい感じの人だああああああ!

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