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第4話 普通が一番……

 私とウィルは管理人さんと一緒に戦いの様子を見ている。こちらからは見えるが、魔法で向こうからは見えなくなっている。


「すごいですね」


 カケルとその少女は互いに剣をぶつけ合い、激しい決戦を繰り広げている。


 管理人さんもこれには驚いていた。


「あの少年の経験の深さ……というのでしょうか……。なかなか綺麗な動きをしています。対して、あの少女は形こそ綺麗とは言えませんが、何か執念とやらがあります。ここまで熱戦を繰り広げた試験は久しぶりに見ましたね」


 さっきまでオムツだけの人間とは思えなかった。


 そんな中、ウィルもこの戦いに集中していた。


「なるほど……さすがだよ。ここまで熱を送ってくれるなんて……」


「そうね。なかなか見られない物ね……」


「ああ。さすがはセーラー服だ」


「…………」


「あの小さいが確実にある膨らみ、それを微妙なタイミングで見せてくる服。異世界なのにセーラー服があるという矛盾。ありとあらゆる物が僕をそそらせるよ! そして、動く少女の見えるようで見えないスカートの中身。それを作り出すカケル君に僕は敬意を表するよ!」


「……あ……うん」


 どこまで行っても、この男はロリコンだった。



**************************



「うおおっおおお!」


 剣を押し込まれる中、俺は足に力を込め耐える。


「まだ……まだ!」


 少女は一度剣を引き、さらにもう一撃加える。かろうじて、俺は少女の攻撃を受け止める。


「ぐっ!」


 ……なんだかずるい気がするが、やむを得ない。


 俺はある魔法を使う。それは相手の考えていることを読むという魔法である。


 悪いが、これを使って勝たせてもらうぜ!


 ピュキイインッ


 少女の脳の中から、映像が伝わってくる。


 それは男同士が絡み合っている姿だった。


 …………。


 …………は?


「ただの!」


 俺は少女の剣を押し返し、弾き飛ばした。


「腐女子じゃねえかあああああああああああああああ!」


「……な!」


 少女は顔を赤くする。


「……なぜ……それを……」


「なんで戦いの最中にそんなこと考えてんだよ! 何やってんの? もう少し戦いに集中しろよ!」


 俺は顔に手を当て、涙をこらえる。


「この世界に来て唯一の常識人だと思ったのに……」


「もしかして、私が『激烈魔人ホモウ』のフィギュアがほしいことを……知っていたのですか……。そのためのお金がほしいから、ギルドに登録をしに来たってことも……」


 少女は衝撃を受け、次々と爆弾発言をしていく。てか『激烈魔人ホモウ』って名前からして、まさにそれじゃねえか……。


 ……ああ、もう聞きたくない。やっぱ人の心なんて読む物じゃねえわ……。


「ですが! 知っているからと言って、ここで引く訳にはいかないのです。覚悟はいいですね!」


 少女は信念のこもった瞳でこちらを見る。


「うりゃああああああああああ!」


 バチン!


「え?」


 少女の剣が弾き飛ばされる。俺は目をおもいっきり開く。


「お嬢ちゃん。覚悟……といったな? 残念だが、俺も覚悟なら持ち合わせている」


 俺は剣を握り締め、少女を見つめる。


「俺には※※な命令をして※※をしてもらい、性犯罪者として、刑務所にぶちこまれるという覚悟はできてるぜ」


「ひっ……」


 少女は泣きながら俺の変態発言を聞く。ちなみにこれ以上言うとノクターンに移されるから言わない。


 ヒュンッ!


 俺の剣が少女の首に突きつけられる。


「あ……あ……私の……負け……」


「ありがとな。戦ってくれて」


 勝敗が決まると、管理人さんが部屋に入ってくる。


「おめでとうございます。この戦いの結果、カケルさんを登録することに決定しました」


 しかし、やはりあの少女が俺は気になった。その少女は何かブツブツ言っている。


「……さすがに……処女は……守れないよね……」


 いや、そこまで鬼じゃねえよ。それ以下ならやるかも知れないけど……。


 とはいえ、こいつの好きな物に対する執念は尊敬できる。そのためにここまで本気になれる人間は珍しい方だ。


 だから……俺は……。


「あの……こいつもギルドに登録できませんか?」


「……えっ」


 少女は驚いた様子でこちらを向く。


「……どう……して……。どうして……負けた私を……」


 俺はそいつに向かって言う。


「友達を……見過ごせる訳……無いだろ」


「……あり……がとうございます」


 少女は下を向き、涙を流していた。そんな中、管理人さんが言う。


「あの……こんな感動的な場面になってから言うのも申し訳ないんですが……その子も登録できますよ?」


「「え?」」


 そうなのか?


「あの……別に勝敗が関係してるのではなくて、ちゃんと戦えるかを見る試験なので、全然問題無いですよ」


 その言葉を聞き、少女の顔は笑顔になり、俺に飛びついてくる。


「やった! やりましたよ! ちゃんと登録できましたよ!」


「えっ……まじで?」


 俺は頭の中がおかしくなってきた。


「だってこいつ男と男の絡み合いが大好物の変態だぞ。そんなのが登録できて大丈夫なのか?」


「……んっ!」


「あ痛い痛い痛たたたたたたたたたたたたたたたたた!」


 少女が俺の手を背中の後ろに曲げる。こいつ、割と力あるな。


 そんな中、管理人さんは俺に指摘してくる。


「ていうか……むしろその子に変な脅しをしていたあなたの方が危ない気がするんですが……」


「あ……」


 確かにそうだ。思えば、無意識にやばいことをこいつに言っていたような……。


 俺は後ろのそいつに振り向く。すると、少女は俺をにらみつける。


「……せめて、命令は……見せる……だけにしてくださいね? 触るのはNGです」


「いや、本気でやるわけ無いだろ! ……えっ。見せてくれんの?」



**************************



「おつかれー」


「おう」


 俺はその子を連れて、ウィルとエルのもとに向かう。


「ああ。その子……。さっきすごかったよね」


「そうだな……そういえば、名前を聞いてなかったな」


 少女はこちらを見て自己紹介をする。


「私はルルって言います。14歳です。好きな物は……」


 それを言いかけてこちらを見る。


「いや、言いたくないなら言わなくていいだろ」


「……はい」


 ルルは視線を皆に向ける。


「ふーん。結構可愛いじゃない」


 エルがルルに興味を示す。


「私はエル。今は魔法使いをやっているわ。好きな物はイケメンよ。嫌いな物は……」


 おい。なんでこっちを見る? そんなに俺が嫌いか?


 すると、ルルが『イケメン』というキーワードに興味を示す。


「私も……イケメン……好き」


「本当! だよねー。イケメンじゃないとだめだわー」


 ああ。なんか仲良くなれそうだけど……違うんだよなあ。お互いに考えていることが……。


 俺は大してイケメンじゃないから、いいけどな。


「おらっ。じゃあお前らのほしいイケメンの登場だ」


「あっ。ちょっと……」


 俺はウィルをつかみ、そいつらに押しつける。


「僕はウィル。大好きなのは……」


 ウィルはルルを見つめながら言う。いや、ほとんど叫んでいた。


「あなたです!」


「え?」


「「…………」」


 俺とエルは目を閉じる。


「正確に言うと、あなたのボディラインに憧れました! やはり、そこにセーラー服が重なると凄みがあると思います。はい!」


「ひっ……」


 その様子にルルは怯えている。


 俺は突き出しておいて、あれだが、ウィルを引っ張る。ウィルは鼻血を出し、すでに目が狂っているほど開いていた。


「ぐふっ。なんだこの赤い物は……カケル君。僕は彼女に何かをかけられ……」


「ただのてめえの鼻血だ。ちょっと外行って頭冷やしてこい」


「あと、最後に……僕を呼ぶ時は『お兄ちゃん』って読んでいいよおお!」


 ウィルはその言葉を発しながらギルドの外に追い出される。そして、俺もルルに自己紹介をする。


「俺はカケルだ。趣味はオムツ選びだ」


「オムツ選び?」


 …………。


 …………しまったあ! つい、いつもの紹介をしてしまったああ!


 すると、エルがルルの肩をつかみ、話し出す。


「ルルちゃん。世の中にはね。変わった変態さんもいるんだよ」


「おい、てめえ。……俺だって前の世界にいなけりゃ常識人なんだ」


 そんな話をしていると、ウィルが外から戻ってくる。割と復活早いな。


「……そろそろ、モンスターの討伐にでも行ってみたらどうだい? さっそく登録できたんだし、試してみるのも良いとおもうよ?」


 それを聞いて、改めて俺は今後について考える。


「おう。確かにな……。今日中に依頼を達成して金を手に入れて食料を確保しないとな……。いつまでも教会のお世話になる訳にはいかないしな」


「え? まだ教会のお世話になるつもりなの? あなたすごいメンタルしてるわね」

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