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第2話 大変な変態

「……はあ」


 私は教会を出て街を歩く。


「なんでこんなことに……」


 外を歩いている同じような体格の男を連れてきてほしい。それがカケルのお願いだった。


 かといって、理由を聞かれても答えづらい。服を脱いでほしいなんて……。


 …………。


 冷静に考えて、服を脱ぐ必要があるのだろうか。


 ゴツンッ。


「あたっ……」


 歩いている男にぶつかってしまった。


「あの……すみません」


「いや、いいんだ。そっちこそ大丈夫かい?」


 ビリリッ!


 私はその人の顔を見た時、頭に稲妻が走った。その顔はとても整っていた。髪もクリーム色をしていて、とても好みのタイプだった。それに年齢も若いように見えた。


 いいですわよ! この人!


 例えば、この人を教会に連れていけば……。


「ん? どうしたんだい?」


 よしっ。さっきの疑問は無かったことにしよう。



**************************



「カケル! 連れてきたよ!」


 カケルは連れてきた男の顔を見ると、不満げな表情をする。


「なんか、そんなに体格似てないよな。それにそいつイケメンだし……。もしかして……お前……」


「さあ! 早く服を作っちゃいましょ」


 カケルの言葉をかき消し、出会った彼を誘導する。


「じゃあ、ここで脱げばいいのかい?」


「うんうん! とっとと済ませちゃおう!」


 男の人が上の服を脱ぎ出したその時だった。


「何をやっているの?」


 ……ッ!


 教会の入り口に見習いの幼い少女がいた。


 まずい。ここでこんな状況を見られたら、私がこの人の裸を見たいと誤解されてしまう。(※誤解ではない)


「お兄ちゃん。お姉ちゃん。いったい何をしているの?」


 それを聞かれた時、カケルが急に下を向き、泣き出す。


「ヒック……ヒック……。俺は……やめとけって言ったのに……」


「カケル! 何やってるの!?」


 少女は純粋な瞳でこちらを見ている。そんな中、私はカケルの行動が読めなかった。


 貴様! いったい何のつもりだ!


 その時、カケルの目がチラリとこちらを見る。


――クククッ。俺が変態と思われたことを……今度はお前が感じるんだな……。ぐへへへへっ!――


 このゲス野郎! 私にも変態のレッテルを張り付けるつもりか!


「お姉ちゃん? どういうこと?」


「いや! これは違うの!」


 必死に言い訳をしようとするが、なかなか言葉がまとまらない。


 その時、イケメンの彼が前に出る。そして、少女に笑顔をむけながら声をかける。


「この人に服を作ってもらっているところなんですよ」


「そうなのー?」


 なんだ……。この人……。まさか私を庇って……。


 そして、その彼が少女の手を取り、言う。


「だから……あなたも一緒に脱ぎませんか?」


「……………」


 数秒の沈黙が辺りを覆う。


「「は?」」


 私とカケルが声を合わせる。


 今……この人は何て言った?


「その慎ましやかな胸。腰から尻にかけるライン。はあっはあっ。すべてが最高だ!」


 彼は半分イキかけた笑顔で少女を見つめながら、それを言う。


「いやあああああああああああああああああああ!」


「ぐべぼっ!」


 少女は魔法を使い、彼を弾き飛ばす。そして、その男は長椅子にぶつかり倒れ込む。


「いやあああああああ。どうして変態ばっかりなのおおおお!」


 少女は叫びながら、どこかへ走り去っていく。


 …………。


 …………え?


 カケルが私の肩に手を置く。


「…………男は……ちゃんと選べよ……」


 その言葉に言い返すことはできなかった。


「あはあっ。幼女の魔法を受けれるなんて、僕は幸せだ!」


 ああ……そういうことか……。


 この人はロリコンなのである。



**************************



「いやあ。見苦しい姿をお見せしてしまいました。僕はウィルです。よろしくお願いします」


「…………はあ」


 こうやって話してみると普通の人だ。


「実は僕は幼女がとても好きなんです。なかなか、欲を抑えられなくて……」


 じゅるり……


「失敬……」


 そう言って、口にハンカチを押し当てる。


 うわあ……。正直これには引く。


「僕が幼女を好きになったきっかけは……約3年前のこと……」


「え? 回想するの? 嫌だよ?」


 私の言葉を無視し、ウィルは話し出す。


「その時、僕は一つ年上に幼なじみがいました。その子はとても美人で、よく僕に接してくれました。自然と僕もその人に引かれていきました」


 なんやかんや言って、私はこの人の話が気になった。


「それで、3年前勇気を振り絞って告白をしたのです。それは僕の初恋でした。まあ……もちろん振られてしまって現在にいたるのですが……うう……」


 彼は肩を震わせながら、泣いていた。きっと振られた理由が壮絶な物だったのだろう。


「その子は…………」


「…………」


「……スカートをめくってパンツを脱ぐと、何か生えていたんです」


「…………は?」


「あああああああああ!」


 ウィルは床に向かって叫んだ。


「それから僕は年上の……正確に言うと16歳以上の女性の仕草が、男の物に見える現象が発生してしまったんですうううううわああああああああああああああああ!」


「へ……へええ。まあ落ち着いて。きっと立ち直れるって」


 その話を聞いた時、横からカケルが近づいてくる。そして、ある言葉を放つ。


「……感動した」


「は?」


 今のどこに感動する点があった?


 カケルは涙を流し、ウィルの前で座り込む。


「俺さ……百回目あたりの世界で……男が皆女装をする世界に行ったことがあるんだよ。だからさあ、お前の気持ちすごくわかるよお」


「くううっ。カケル君!」


 二人の男が抱きつく。そして、互いに泣き叫ぶ。


「ふああんああああああんああああああああ!」


「うあああああうああああああううういいい!」


 え? 何この状況。乗れない私が悪いの?


 てか、このイケメンがロリコンで顔ぐしゃぐしゃにしながら泣いている時点で私もすごいショック受けてるんだけど……。


「でもよお。ウィル」


「ん? どうしたんだい? カケル君」


「幼女に服を脱げ……これは犯罪だ」


「……そうだね。そこは自重しておくよ」


 ……昨日同じことしてたけどね……。その男……。

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