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第27話 『開幕』

 どういう状況だよ。これ……。


 男女が四人ずつ向かい合って座っている。まあ、正確に言うと、男女比は5対3なのだが……。


「なんであんたはそっちにいるんだ? コラードさん」


「ははっ。コラちゃんでいいよ。カケル君」


「え? ああ……はい」


 なぜか男であるコラちゃんは女側の席に座っていた。


「で……なんでこのメンバーなんだ」


 魔王やクロトがいる男どももなかなかすごいメンツなのだが、女性陣はさらにすごい方々が集まっていた。


「いやあ、コラちゃんの頼みだから断れませんでしたよ。師匠」


 一人はあの自分から変なことに突っ込んでいくドM女王様。


「まあ……そろそろちょうどいい機会ですしね。たまにはこういうのに参加しないと……」


 そして、一見普通に見えるが、頭の中が女の子ばっかりのシスターさんだったり……。


「…………」


 最後はまだ会ったことが無い赤い髪の女だった。見た目からして、なんか強そうなんだよなあ。


 すると、運ばれてきた飲み物のグラスを持ち、コラちゃんが仕切り始める。


「それじゃあ、今日は楽しんでいこう!」


「おお!」


 グラスで乾杯をする。


「ちょっと待ってください!」


 すると、店員の一人がこちらに来る。


「なぜ皆さん私のバイト先で合コンを始めているんですか!」


 ルルはそんな質問を投げつけてきた。俺はそれに答える。


「なんでって……まあ、ルルがいた方が気楽でいいかと……」


「そういうものですか? ……まあ、あまり問題を起こさないでもらえると助かります。特にカケルさんは気をつけてください」


 なぜ俺が特に注意されたのかはわからないが……。


「ああ。気をつけるよ。まあ、頑張りたまえ」


「……なんかすごい上から目線な態度ですが……まあ、いいでしょう。本当に問題起こさないでくださいよ? カケルさん、暴走したらやばいから……」


 ルルは店の方へ戻っていく。


 さっそく俺たちは会話を始めた。


「じゃあ、まずは自己紹介から始めようかな。ボクはコラード。趣味は女装と、それで男どもを惑わすことでーす」


 ……さらっと恐ろしいこと言ったな。


「……化粧……力……怖い……」


「……ウィル?」


 思い出してしまったのか、プルプル震えている。大丈夫か? こいつ。


「じゃあ次はマリアかな」


「えっ。私?」


 マリアは席を立ち、話し始める。


「えっと……マリアです。……そうですね。最近はまっていることは、調教プレ……じゃなくて、ペットと同じ動きをすることです」


「なにそれ!? 面白そうだね!」


「そうかなあ」


 コラちゃんがフォローをしたから良いものの、若干まずい趣味を言おうとしなかったか?


 次第にコラちゃんとマリアの仲の良さに疑問が沸いてきた。


「なあ……」


「……? なんだいカケル君」


「あんたらってどんな関係なんだ?」


 その少女のような少年はニヤニヤ笑いながら答える。


「そうだねえ。恋人未満親友以上って感じかな?」


「え! いつからそんな関係になったっけ!?」


 隣のマリアは突然の発言に驚いている。割りと身長が高い彼女の頭をコラちゃんは撫でる。


「冗談だよ。ただの同じ学校の元同級生さ。そっちのステファニーちゃんも同じだよ。三人とも、27歳だよ」


「…………」


 赤い髪の人はどうやらステファニーという名前らしい。


「でも、レイラさんは二歳年上の先輩なんだ」


 そのことを言うと、急にレイラさんは頭を抱える。


「……もう29なのよ。そろそろ相手を見つけなくちゃいけないのに……」


 どうやら、彼女自身はそうとう悩んでいるそうだ。そんな様子の彼女を置いて、コラちゃんは会を進める。意外とサッパリしてるな、この人。


「じゃあ次はステファニーちゃんがいいかな」


「…………ちっ」


 彼女は急に舌打ちをし、こちらの男たちをにらみつける。だが、決して何か言うわけではなかった。なんだ? この人。


 すると、コラちゃんがこっそりこちらにあることを言う。


「ステファニーちゃんはね。大の男嫌いなの」


「そうなんすか」


 なんだかこの人もどこか変わってるなあ。


「……ああ……あああ」


 あれ? なんかウィルだけじゃなくクロトも震えてるぞ。


 なぜか、ステファニーはクロトをにらんでいる。


「おい」


「ひっ」


 ステファニーはクロトに向かって声を出す。あまりの威圧にいつも度胸のあるクロトでさえ、怯えていた。


「……エルとナタリアは……元気にしてんのか?」


「……え? ……ああ。はい」


 クロトもその質問はまったく予想がしていなかったようで、びっくりしていた。


 すると、他の皆に向かって話し始める。


「オレの妹のエルが世話になったな。オレはステファニー。あの家の姉妹の四女だ」


「……え?」


 エルの家の……四女?


 つまり、五女のナタリアさんより権力が上なのでは?


「今日は男を見つけるためにここに来た。以上!」


 その人はその席に座る。


 てか、この人の家系って貴族だよな。そんな人が一般の合コンに参加できるものなのだろうか。


 この世界の身分制度緩すぎじゃね?


 とはいえ、なんだか目付きが悪いだけで、根は優しそうな人な気がする。ぶっちゃけ、このメンバーの中で一番マトモだと思う。


「じゃあ次はレイラさんかな?」


 ……ブツブツ……ブツブツ。


 どうやら、年齢の件をまだ引きずっているらしい。


「そうだねえ。後回しにして、カケル君に自己紹介してもらおうかな」


「俺?」


 唐突に任されたので、慌ててしまった。だが、なんとなく俺の特徴を述べる。


「え……っと、カケルっス。いろんな世界を転生したり、転移したりして旅してきました。……まあ、結構いろんなことができるんで、困ったら頼ってください」


 なんとも普通な自己紹介だった。さすがに前の世界の趣味であるオムツ選びは今回は言わない。


「へえ。いろんな世界をねえ。例えばどんな世界をまわってきんだい?」


 正気に戻ったウィルはこちらにそんな質問をしてくる。


「そうだな。……ミジンコになった時もあったぞ」


「ミジンコかあ。楽しかったかい?」


「…………」


「…………え?」


 俺は例としてミジンコになった時のことを言ったのを後悔した。


「…………すぐに踏み潰されました」


「…………え?」


「……内臓が出る感覚ってなんかいいよね」


「カケル君!? なんか顔が死んでるよ!?」


 他の動物に転生したこともあったが、ミジンコの時が一番早く死んだ気がする。


「じゃ……じゃあ何か他に楽しかった世界って無いのかい?」


「……そうだなあ。前に話した男が皆、女装する世界とかどうだ?」


 その話題を出すと、コラちゃんが身を乗り出して聞き始める。


「なにそれ! 楽しそう!」


 俺はその世界について話し始める。


「なんか女装するのがその世界の文化だったんだよなあ。時に、おじさんが女装してたこともあ……」


 しばらく無言の空気が続いた。


「…………え?」


「…………」


「どうしたの? カケル君」


 俺はその世界のトラウマを思い出す。


「そういえば……俺、その世界で変なおじさんに付きまとわれて、大変なことになったんだった」


「大丈夫!? カケル君、目が震えてるよ! どんだけ怖かったの!?」


 ウィルは話を明るくしようと、別の話題にする。


「そうだ! そこの魔王君と戦った時、カケル君すごかったよね! なんか、敵を圧倒してたって言うか……」


「……ああ。あの時は結構大変だったんだよ。今までの記憶を脳に無理やりぶちこんだから、苦しかったし……」


「でもすごいよね。4000年の記憶があれば、神様みたいになれるんでしょ。僕だったら憧れちゃうよ」


「……そうか?」


「うん! すごいよ!」


「……本当に?」


「うん!」


 それを聞くと俺は嬉しくなってきた。こんな俺でも、皆の役に立ててたなんて……。


 すると、ルルが料理を運んでくる。


「ご注文のスープでーす。……あれ? もしかして、キング・オブ・ザ・DTの話をしていたんですか?」


 ……D……T?


「……ちょっ。ルルちゃん。今はカケル君の調子を取り戻させてあげて!」


「あっ。すみません。無意識にカケルさんの前で言ってしまいました」


「彼、結構今ナーバスな感じだから……」


 ああ……そうだった。俺……4000年生きてるけど、一回も女の子とエッチなことしたこと無いんだよな……。


「あれ? カケル君? 大丈夫? 顔白くなってるよ!」


「……あ……あひゃひゃひゃっ」


「カケル君!? しっかりして! カケル君!?」


 童貞って……なんだろうなあ。

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