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第23話 彼女はこれから非日常をすごす

 あれから、三週間が経った。


 私は無事テストで1位を取ることができた。


 テストが終わって、教室ではゆったりと過ごすことが多くなった気がする。


 今も、昼休みに窓の外を眺めているだけである。


「はあ……大変だったなあ……」


 だが、なぜだかあのひたすら勉強をしていた頃とは違い、悪い気分ではなかった。


「エルちゃん。お弁当食べに行こう!」


「うん」


 私はあまり友達はいない人間だったが、最近はよく一緒にいる友達ができた。このツインテールの子はサラという名前である。


「エルちゃん。すごいね。テストで1番って……。どんだけ勉強してんの?」


「まあ、帰ったら三時間くらいかな」


 言えない。あの頃は帰ってから徹夜していたなんて……。


「そうかあ。私も頑張らないとなあ」


「サラはどうだったの?」


「聞いちゃう?」


「うん」


「国語以外は赤点だったよー」


 おう。なかなかすごいことになっている。うちのテストって赤点20点未満じゃなかったっけ?


「まあ、これから頑張るよー」


「うん」


 私たちは持ってきた弁当を食べ始める。すると、突然サラがその話を振ってきた。


「そういえば、昨日エルちゃんが男の人と一緒に歩いていたって話があったね」


「ブフっ!」


 昨日、確かに私はカケルと一緒に本屋へ買い物に行っていた。


 そう……カケルと一緒に……。


「あれ!? もしかして、本当だった! 誰!? 彼氏?」


「違う! 断じてあり得ないから! あの男が彼氏なんて!」


 そっそそそそそうよ! なんで私がカケルと付き合わなくちゃいけないのよ!


「そうかー。違うのかー」


「そうよ……違うわ」


 私は意識をそらすために、お茶を飲む。


「んー? ねえねえ!? 何食べてるの?」


 ふう……。幸い、彼女の注意は別の人の弁当に向かったようだ。


「え!? すごいの入ってるね? なにこれ? ケチャップぶっ()()()やつ?」


 カケル!?


 あああああああああああああああああ! 


 とりあえず頭を冷やせ。


 あの男はオムツの変態。オーケー?


 オムツ、変態。オムツ、変態。オムツ、変態。オムツ、変態。オムツ、変態。オムツ、変態。オムツ、変態。オムツ、変態。オムツ、変態。オムツ、変態。オムツ、変態。オムツ、変態。


「ねえ。エルちゃん。あの子の弁当にオムレツ入ってるよ」


「えっ? オムツ? 食べるの?」


「急に何言い出してんの? エルちゃん」


# # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # #


 学校が終わり、帰りの道を歩いていく。


 なぜだかそこまで勉強してないのに疲れた。


「これも……あの男のせいだ……」


 カケルがあんなことを言わなければ……。


――俺はお前のそばにいてやる!――


「ああおおおおおおおおおおおおおううううううっ!」


 壁に頭を打ち付ける。それに驚いた猫が逃げていく。


「ああ……なんでこんなことに……」


「あれ? エルじゃねえか?」


「……はっ!」


 まさにその男がそこにいた。


「どうした? こんなところで頭ぶつけて……」


「……なんでもないわよ」


「そうか?」


 よりによってなんでこの男に出くわしちゃうの!?


「ちょうど俺もお前の家に行く途中だったんだよ」


「そうなの……。よく続けるわね。時給が安いバイトなのに……」


 なんやかんや言って、あの後もナタリアお姉様とウィリアムさんのおかげで家庭教師は続けてもらった。


「なんでそんなボランティアみたいなことしてんの?」


「そりゃあ……」


 あれっ……。なんか、こいつイケメンに見えてきて……。


「未来の妻に勉強を教えるのに……金なんかいらないだろ?」


「ああああああああああああああああああああああああああ!」


 再度、壁に頭をぶつける。


 なんか声もイケメンになっていた気が……。


「大丈夫か?」


「……か……」


「か?」


 私は勇気を振り絞り、その場を整えようとする。


「勘違いしないでよね! 別にあなたのことを認めたわけじゃないんだから」


 ……何を言っているんだろうか……私は……。


 私は自分で言っておきながら、恥ずかしくなってくる。


「お……おい。大丈夫か? 熱でもあんのか?」


 ピトっ


 その時、私の額にカケルの手が触れる。


「ああああああああああああああああああああああ!」


「え?」


 私の拳がカケルの腹にぶち当たる。カケルは数メートル先へ吹っ飛んでいき、地面に倒れ込む。


 さすがにやり過ぎた気がした。


「ちょっ。ごめんね。急に触れられて驚いて……」


 すると、カケルが起き上がる。


「……痛かったー」


「うう、うるさいわよ!? 触ってくる方が悪いんでしょ!」


「さっきまでの優しさ、どこ行った?」


 なんで? どうして素直になれないの!?


 もう……無理だ……。


「あれ? エル様に、カケルさん。どうしたんですか?」


「おう、クロト」


 ちょうど良いタイミングでやってきた。


「クロトおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


「えっ! どうしたんですか? エル様」


 これ以上、カケルと二人きりだと心臓が持たない。


「助けてよ! クロト! 本当にやばいの!」


「はい。そうですね」


 クロトはあまり表情を変えない。


「エル様? 私は前からエル様の異常に気づいていましたよ?」


「えっ。本当に? 」


「……てか、三週間ずっとこんな感じで気づかないわけ無いじゃないですか」


「じゃあどうしたらいいの!?」


「…………」


 クロトは私をじっと見つめている。


「まあ、そのうちなんとかなると思いますよ」


「そうなの?」


 なぜかクロトは後ろを向き、笑いをこらえている。こいつ、この状況を楽しんでやがる。


 すると、カケルが私の肩をつかんでくる。


「とりあえず、一回お医者さんに見てm」


「ああああああああああああああああああああああああっ!」


 触れた腕をつかみ放り投げる。カケルは地面に叩きつけられた。


「あああああ! カケル! しっかりして!」


 カケルは思いっきり白目を剥きながら気絶していた。


「エル様。とりあえず、この人は屋敷に運んでおきましょう」


「……そうね……」


 たぶんこの男のことだから、すぐに目覚めるし……。


 私は脚を、クロトは腕を持ちながら、運び始める。


 だが…………。


「あれっ? ……俺何やって」


 ドスンっ!


「いぎやあああああああああああああ!」


 急に目覚めたことによって、私は脚を落としてしまった。


「かかとがああああああああああああああああああああ」


 そんなことが続き、屋敷までの道のりは長かった。

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