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第18話 情報収集

「幼馴染ってどんなものかって?」


 翌日、ギルドで俺はウィルに聞いてみた。


「それ……僕に聞くかい?」


「まあ、お前しかわからなそうだからな」


 ウィルは苦い顔をしながら、グラスの水を飲む。やがて、その男は頭をポリポリかきながら話し出す。


「まあ……僕みたいに恋愛感情が()()()のは珍しい方だと思うよ」


()()()か……」


「そう。()()()だ」


 なんとなくそこを強調しながら言う。こいつにとってはマジで苦い思い出らしい。


「とにかく……普通は兄弟のような存在だと思うよ。昔から一緒にいるし、お互いのことがよくわかっているから。今でも、時々相談にのってもらっている時はあるよ」


「へえ。そういうもんか」


 長年世界を回ってきて、俺には産まれてからずっと一緒にいた人間などいるわけがなかった。だから、そういう関係は新鮮なように感じた。


「…………じゃあ幼馴染だったら、大抵のことはわかるのか?」


「まあ、わかるとは思うよ。さすがに最近になって変化したことや隠していることはわからないけどね」


 ……じゃあ、あのクロトというやつなら、何か知っているかもしれないな。


「カケルさん!」


 すると、そこにルルがやってきた。


「何をやっているんですか?」


「今、こいつに相談をしてもらったところだ」


 ルルは怪しそうに俺とウィルを見つめる。やがて、顔を上げ、ウィルを見下ろす。


「……この人にですか?」


「その蔑んだ表情もたまらないです!」


 相変わらず、ロリコンである。こいつは……。


「ところで、ルル?」


「なんですか? カケルさん」


「兄弟ってどう思う?」


「え?」


 ルルはこっちをじーっと見つめる。


「まあ、結構世話をしているんで、弟の行動原理がだいたいわかりますよ。だいたい『ホモウ』のフィギュアを見せてあげると言うことを聞いてくれたりですかね」


 なるほど。どうりで行動がワンパターンなやつの扱いがうまかった訳だ。


「…………」


「…………え?」


 俺がウィルを見ていると、あちらも俺に気づく。


 こいつとか、行動分かりやす過ぎだろ。


「兄弟なら、意外とわかっているものなのか……」


「そうとも限りませんよ」


「あ?」


 ルルはギルドの後ろの方を指差す。そこには魔王とチェナがいた。


「ねえ! チェナちゃん! 置いていかないでよ!」


「うっさい! お兄ちゃんのバカ! 張り付いてくんな!」


 魔王はチェナに張り付こうとする。だが、チェナはそれを拒み、魔王の顔を蹴り、離そうとしていた。


「あれは?」


「……年齢が上がると、わりと関わることが無くなっていくんですよ。だんだんと自立していきますし、同じ歳の人との方が接しやすい……なんてこともあるんです」


「……つまりあれは兄が例外と?」


「そういうことです」


 そろそろあのシスコン魔王は妹を解放してやった方がいいと思う。


 ……てか、魔王の威厳無さすぎじゃね?


 ウィルは俺に問いかけてきた。


「そういえば、今日もバイトかい?」


「ああ。午後からまた、エルの屋敷で働かなくちゃなあ」


「大変そうだね。何か手伝えることがあったら言ってもらえると嬉しいよ」


「ありがとうな。そんなお前にご褒美だ」


 俺は一枚の写真を手渡す。ウィルはさっきまでの爽やかさが無くなり、すぐにその写真を受け取った。


「……我が家の家宝にしておくよ」


「お前の家の家宝。それでいいのか?」


 その写真には、メイド服を着たルルの姿が写っていた。


# # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # #


「…………ふう」


 俺は屋敷の庭で、木の手入れをしていた。はしごに乗りながら、何かをするのは全然へっちゃらだ。


 すると、後ろの方から誰かの気配がした。


「…………クロトか……?」


「ええ」


 そこにはチョコレートやら飴やら甘そうな菓子を持ってきていた少年がいた。


「どうした? また何か俺に試すことでもあるのか?」


 冗談をまじえて、そいつに言葉を放つ。


「いえ。ただ昨日のことを謝りたいだけです。どうやら、あなたのことを勘違いしていたようなので……」


 それを聞くと、俺ははしごから降り、そいつの目の前に行く。そして、俺はクロトに問いかけた。


「お前は知っているのか? エルがどうしてあそこまで必死になっているのかを……」


「………………ちっ」


 そいつは軽く舌打ちをした。そのことについては、あまり良く思っていないようだ。


「……すみません。目の前で不愉快になる行動をしてしまって……」


「何かあるんだな」


「ええ……。ですが……」


 クロトはお菓子の中から一つ、チョコレートを手に取り、俺に渡す。そして、後ろへ振り向き、歩き出す。


「あなたは知らなくていいんですよ……」


 その言葉は俺のような部外者を拒絶しているように感じた。


「……そう簡単にはいかないか……」


 俺は再び木の手入れを始めた。


# # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # #


「…………」


 さすがに今日はエルも学校に行ったようだった。誰もいない部屋がそこにあった。


「……ずいぶんと散らかってるな」


 俺は辺りの勉強道具をまとめ始める。そして、本棚に注目した。


 ……ちゃんと整理はできていたんだな。


 軽く部屋の本を抜き取り、内容を確認する。それらはすべて魔法や勉強の本ばかりだった。


「…………どうしてあんなに頑張るんだ」


 ため息をつきながら、本を棚に戻す。その時だった。


「…………あ?」


 本が並ぶ奥に別の本が隠れていた。俺はその本も取り出し、中身を確認する。


「……これは……」

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