プロローグ
私は今、森に来ている。
理由はここには魔力がたくさん集まっているからだ。
「……早く済ませないと……」
地面に私は魔方陣を描き始める。
「確か……ここをこう書いて、こうすれば……」
異世界から勇者を呼び寄せるのは初めてだ。
というか、誰もやったことがないので、参考になる魔方陣が描けないのだ。
だから、魔方陣の特徴を学び、自力で作らなければいけない。
「よし! できた!」
そこには勇者を呼び寄せる魔方陣が完成した。我ながら素晴らしい出来である。
「よーし! 行くわよ!」
魔方陣に魔力を注ぎ込む。そして、勇者が現れるイメージをする。
それは明るく輝きだし、魔力が集中しているのがわかる。
「っ!」
エネルギーが集中し異次元から強い光が漏れ、私はあまりの眩しさに目を閉じる。
「あああああああああああああああ!」
そして、一つの叫び声が聞こえてくる。その叫び声は近くなってくる。
その作業が終わると、私はゆっくりと目を開ける。そして、現れた人物に声をかける。
「あなたが……勇者様で」
そこにはオムツしか履いていない男の姿があった。
「は?」
私は状況がつかめなかった。なぜ、こんな変態が目の前に……。
「…………」
「…………」
お互い黙って向かい合っていた。
「…………おい」
ビュウウン!
「あっ! おい待てゴラアア!」
私は逃げた。当たり前である。
あんな変態を目の前にして逃げない方がおかしい。もしも逃げなければ、私の初めてが奪われてしまう。
「っ!」
しかし、走り続けて自分がまずい状況に陥ってしまったのに気づく。
道に迷ったのだ。
「ええ? どっちに行けばいいんだっけ?」
私は方位磁針を取り出す。だが、あまりの魔力の多さにそれは役に立たなかった。
「何よ! 使えないじゃないのよ」
「へえ。この世界は魔力が磁力に作用するのか……」
「そうよ! もうなんでこんな世界なの! ……って、ええ!」
いつの間にか、その変態が後ろに来ていた。
「いやあああああああああああああああああ!」
私は驚いてその場に座り込んでしまった。そして、目の前のオムツにも驚いて必死に後ろにさがる。
さがった先の木にぶつかり、私は口をアワアワと震わせるしかなかった。
「なあ。青色の髪のお前。この世界に俺を呼んだのはお前か?
「えっ?」
「そうなんだよな……」
「あ……うん」
冷静に考えてみると……この人は私に呼び出されただけなのである。
つまり、もとはといえば、私が悪いのだ……。
「あの……すみませんでした。……私……勝手に呼び出しちゃって……」
「……ああ。そのことはもういい。まあ、この世界に慣れるのも大変だけど……別にそんなに問題は無いか……」
すると、男は目の前に座った。
明らかに目の前にオムツの男がいる時点でやばい状況なのだが、なぜか落ち着いていた。
「あの…………」
「あ? どした?」
私はその人に質問してみる。
「あなたが勇者で間違い無いですか?」
「いや……違うよ」
あっ。違うんだ……。
男はあることを言う。
「あの魔方陣は未来の結婚相手を呼び寄せるものだったからな」
「そうだったんですか…………は?」
今……なんて言った?
「未来の……結婚相手……?」
「うん。つまり、お前は俺の嫁になる……OK?」
誰が? ……この変態の?
「あ……ああ………………」
「えっ? おい大丈夫か!?」
あまりのショックに私は倒れてしまった。どうして、いつもこう運が無いのだろうか。