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Third Discover


 こんにちは、利苗です。


 ……。


 はぁ。


 こんにちは、利苗です。

 久しぶりに更新となりました。

 もう二度と交信なんてしたくないと、そう思っていた私ですが、また更新することになってしまいました。おっと、交信とは、電波な感じになってしまいましたね。


 はぁ……。

 

 頭の良い皆さまならもうお気づきかも分かりませんが、先日、件のコキプリと、また遭遇しました。

 

 何度も申し上げるようで恐れ入りますが、私は虫が大嫌いです。割り箸が上手く割れないことの次くらいに嫌いです。

 家の中に虫がいると知るだけで総毛立つほどです。



 それは、ある夜のことでした。 

 一日の終わり、もうあとは歯を磨いて寝るだけだ、とうきうきで歯ブラシを取りに行き、帰ってくるときにそれは起こりました。


「何かいる……?」


 すりガラスを通して、私は何か直観めいたものを感じていました。

 ご存じの通り、私はコキプリの存在を感知することに長けています。親友が非業の死を遂げた時でも、今は亡き師匠との約束でも、捕まったヒロインを助けるときでもありません。


 コキプリの存在を感知するために、私は契約しました。

 制約と誓約、私の特殊能力はコキプリにしか発揮できない代わりに、常人を超えた超直観、シックスセンスを使うことができるのです。


 すりがらすの扉を開ける前に、コキプリが私の眼前に現れるイメージが脳裏を過りました。

 ただ、それはただのイメージです。


「ビックリした……」

 

 突然降り立ったイメージに内心驚きながら、私は扉を開けました。


「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!」


 私の視線の先に、それはいました。

 とてつもないサイズのコキプリが、壁についていたのです。


 前回のコキプリとの遭遇の際、彼我の距離はわずか数十センチだったため、悲鳴とも叫びともとらえられる声でしたが、今回は距離がありました。悲鳴は短く小さなものでした。

 私はすぐさま扉を閉め、泣いてその場に座り込みました。


「泣くんじゃない! 泣いても事態は何も解決しない! 今を解決するためにお前が行動しろ! お前の行動が今後の行方を左右するんだよ!」


 そう誰かに言われた気がしました。

 嘘ですすみません、泣いてないですしうずくまってもいません。


 とにかくこれは大惨事だ、と思い家中のコキプリズンと虫取り網を持ってき、部屋へと入りました。

 コキプリは、一歩も動いていませんでした。まるで私の行動そのものに意味がないかのように、せせら笑っているようにすら見えました。


 私は壁の近くにコキプリズンを大量に設置し、虫取り網を伸ばせる限界まで伸ばしました。


 それにしても、どうしてコキプリは出てきたのか。

 コキプリズンには一匹もコキプリはかかっていませんでした。

 それどころか、部屋をくまなく掃除しても、やはりコキプリの住処になりそうなところはありませんでした。一体コキプリはどこからやってきているのか。


 とにもかくにも、私は眼前のコキプリと対峙しました。


 それにしても……。


 大きい。


 サイズが、異常に大きいのです。

 前回のコキプリがコキプリチャイルドだとすれば、今回のコキプリは女王。まさしくコキプリの頂点、マザーコキプリだったのです。

 その大きさたるや、すさまじいものがありました。外国に行ったとしてもあのサイズはそうそう見劣りするものでもないでしょう。


『こんなコキプリが出るような部屋にいられるか! 私は自分の部屋に帰らせてもらう!』


 焦った私は、セルファーでそう呟きました。


 さすがに、相手が悪すぎました。

 私はコキプリを前に、一歩も動けなくなってしまいました。


「相手が悪すぎる……」


 私は虫取り網を手に、ただただ固まっていました。


「暑い……」


 なんだか、部屋が異様に暑く感じます。

 空調を二度下げました。私の肢体を、大粒の汗が流れていきます。

 額の汗を、首元の汗を、ぬぐいました。


「暑い……」


 これは一体何の暑さでしょう。

 戦いの熱気でしょうか、あるいはコキプリ自身が出しているオーラのようなものなのでしょうか。

 コキプリの特殊能力に気圧された私は、ひるんでいました。

 虫取り網を最大限に伸ばし、およそコキプリの反撃が届かない範疇からコキプリを捕まえようとしているのですが、


「……」


 怖いのです。本当に、怖いのです。虫取り網で取れなかったときどうしよう。

 網の隙間を抜けてこちらに飛んで来たらどうしよう。

 落ちてそのまますごい勢いでこちらに逃げてきたらどうしよう。

 そんな想像が、私の脳裏を流れてやまないのです。


 元来、私は大変に憶病な生き物です。

 そんな私が一歩も動けないのも、理解できます。


 結局何をすることもできず手をこまねいていたら、不意にコキプリが動きました。

 壁を、動いて、いるのです。


 こんな恐怖がありますか?

 

 コキプリは壁を動き回り、端の方にたどり着きました。


「これからどうしよう……」


 万策尽きたその時です。

 コキプリは、隣の部屋へと行きました。


「…………!?」


 驚愕でした。

 締め切った扉の隙間を抜けて、隣の部屋に行ったのです。


 前回も言いましたが、私の家は異常にものが多いです。

 小説を書くこと以外に、イラストを描いたりゲーム実況をしたり、動画を撮ったり、カメラで写真撮影をしたりもしています。

 多趣味なのです。

 ここで私の場合は趣味ではなく手段なのですが、そんなことはどうでもいいのです。

 とにもかくにも、モノが多いのです。

 そして一部屋は完全に倉庫にしていました。

 扉をすり抜け、コキプリはその倉庫部屋に入っていきました。


「はぁ……はぁ……」


 私が息が切れました。

 驚愕でした。

 そこ入れるの!? と思いました。


 道理で気付かないはずです。そもそも倉庫には一切食料の類がないのですから、コキプリは外からやってきてこの家に入っていたのです。

 外から入ってくるものに対策のしようはありません。

 ここではその外をメルヘン王国としましょう。

 コキプリは、メルヘン王国からやってきていたのです。


 とにもかくにも、恐怖は去りました。

 私は扉の隙間、メルヘン王国からの来襲を拒否するため柵を作りました。もうそれ以上私にできることはありませんでした。


 信じられない大きさのコキプリが家に棲んでいるのは分かっているのに、何をすることもできません。

 私はあのサイズのコキプリがいることを分かっておきながら、こうすることしかできなかったのです。


『信じられない、嘘でしょ、そこ入れるの、というところに入って行ったんですよ。なろう転生物で主人公が現代知識チートしたときの驚きと同じ驚きですよ』


 安心した私は、また呟きました。

 コキプリは、常にあなたとともにいる。


 そう、今これを読んでいるあなたの後ろの壁にも……。





『常にコキプリに怯えながら生きる暮らしは楽しいか?』










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