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可愛い弟妹、怖い父

 朝の訓練は簡単だ。

 訓練場を10周と筋トレの体力作りだけ。

 基本的な訓練だが小さい身体では、かなり疲れるし全てを終わらせるのに時間がかかる。

  

「ペースが落ちてる。ほら、いっちに!いっちに!」


 ペースが落ちると私の訓練担当のレオが指導する。

 若いが実力のある軍人のはずなのに、言い方が少しうざいのが玉に瑕だ。

 

 全てが終わる頃にはとっくに日が明けていた。


「よーし!朝の訓練は終わり、朝ごはん食べてから昨日の続きをするぞ。」


「は、い!ありが、とうございました!」


 ハァッハァッと肩で息をする私に無駄に爽やかに言い放ち、レオは朝食へ向かった。


 なんであの人は汗一つかかずにいられるんだ。

 理不尽を感じつつも部屋へ戻り、アマリアが用意してくれていた水と布で身を拭い、朝食のために身なりを整える。


 暫くすると、アマリアが朝食が出来たと呼びに来たので、いつもの様に食卓へ向かった。


 


 朝食は家族全員が揃う唯一の場である。まだ椅子に座れない様な乳児は別として、全員でとるのが決まりである。


「失礼いたします。」


 緻密な彫刻の施された扉を開けて貰い、食堂に入る。

 卓には既に四人の弟妹達がついていた。私が来たことを知り声をかけてくれる。


「おはようございます!お姉様!」


 その中の一人が席を立ち、抱きついてきた。

 すぐ下の妹であるビアンカだ。

 私と同じ赤い瞳に透き通るような銀髪の少女である。


「おはよう、ビアンカ。」


「ふふっ、お姉様。今日はとっても良い日なんですよ?」


「え?何かな?」


「何でしょうか?」


「え~、教えてくれないかな?」


「当ててみて下さい!」


 答えは知っているが考えるふりをする。

 昨日嬉しそうに何度も何度も言っていたので忘れる訳がない。


「あっ!思い出したぞー、ヴァレリの誕生日だ!」


「もう!意地悪!」


 ビアンカの双子であるヴァレリの名前を出して惚けると、ビアンカが頬を膨らませた。


「ふふっ、もちろんちゃんと覚えているさ。五歳の誕生日おめでとうビアンカ。おめでとうヴァレリ。」


 そう言うとビアンカは許してあげます、とギュッとしがみついた。

 ヴァレリは席についたまま嬉しそうにありがとうございます、あねうえ、と言っている。


「さぁ、もう席につこう。父上が来られるぞ。」


 皆が席についたところで父上が入って来られた。


 私と同じ夜色の長い髪、鋭い赤い目の壮年の人だ。

 美丈夫でありながら子供の目にも妖しい雰囲気の男である。

 常に周囲に威圧を放ち、先程まで賑やかであった食卓も父上が入る瞬間に静まりかえる。


「さぁ、食事を始めよう。」


 席につき、父上がそう言うと朝食の始まりである。

 食事中は父上が話かけた時にのみ会話をする。


「ソフィア、訓練はどうだ。」


「はい、父上。恙無く行っております。本日から槍の訓練に入ります。」


「ヴァレリ、お前も訓練に入る。ソフィアを見習い励むことだ。」


「はい、父上。畏まりました。」


 子供一人一人に声をかける。

 皆緊張した面持ちで答えていく。


 そうして食後の飲み物が済む頃に、父上が全員に語りかけてきた。


「私は本日より西方へ遠征に向かう。暫くは兄弟での朝食となる。ソフィア。」


「はい、父上。」


「この会はお前が取りまとめよ。」


「畏まりました。」


 それだけをいい、父上は退出した。

 扉が閉まった所で皆の緊張が解ける。


「はあぁぁ~、びっくりしました…。」


 声をかけられたヴァレリが息を吐く。

 お転婆なビアンカと違って大人しい、本を読むのが好きな子だ。

 食事を終えていた私はヴァレリに近づき頭をぽんぽんと撫でた。


「しっかりした受け答えだったぞ。よく頑張ったな。」


 ヴァレリは照れたように顔を俯けた。ビアンカと同じ銀髪がキラキラと光る。

 なんだか楽しくなってよーしよーし、と撫でていると、


「お姉様!ヴァーばかり狡いです!私にも!」


 ビアンカがもう片方の手を自分の頭に乗せようとする。

 両手で二人を撫でながら今日の予定を確認する。


「ビアンカとヴァレリはいつも通り午前の勉強だけかな?」


「「はい!」」


「エンリエッタにマウラも?」


 エンリエッタは金髪、マウラは赤髪に褐色肌の少女である。二人とも四歳で食卓に最近座るようになったばかりだ。


「はい!わたしたちもようじは午前中だけです。」


 まだたどたどしい口調でマウラが話す。エンリもこくこくと頷く。

 そうかそうかと二人を抱きしめて、四人に言う。


「私も今日は予定を早めに切り上げようと思う。今日はここにいない子を含めて、皆で二人の誕生日のお祝いをしよう。」


 私の言葉に四人がキャーっと歓声をあげる。

 そんな弟妹を見て、とても暖かな気持ちになるのを感じた。

きょうだいまとめ


~いた子~

ソフィア 長女(6才)

ヴァレリ 長男(5才)

ビアンカ 二女(5才)

エンリエッタ 三女(4才)

マウラ  四女(4才)


~いなかった子~

ネスト  次男(2才)

ギタ   五女(1才)

オリアナ 六女(8ヶ月)


計8人きょうだい

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