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第十七話 修行開始



「まずはギルバート君に謝らないといけないわね。今回の任務、本当は戦闘するつもりは全くなかったの。まさか今回の件がギレオン絡みだとは思わなかった。少しでも革命軍の活動に慣れてもらおうとして、隊長に無理言って君を任務に連れて行ったのが間違いだったわ。ごめんなさい、危険にさらすつもりはなかったの」


「俺の方こそごめんなさい……。俺がもっと強ければ任務を続けられてたかもしれないのに、足手まといにしかならなかったです」


 長い階段を下りながら、背中越しに語るアメリアが首を横に振る。


「任務のことは心配しないで。むしろ王国絡みだと思っていた今回の件が、ギレオンも一枚噛んでいることがわかった。失敗どころか大成功よ。さっき隊長にそのことを伝えたら、考え直すって言って部屋に籠っちゃった」


 フレイム村から拠点に帰還した後、アメリアが俺を待機させたのは任務の成果を隊長に報告するためだったらしい。

 そんなに待つ時間が長くなかったのは、隊長が直ぐに計画修正に入ったからだろう。

 おかげで俺の恥ずかしい独り言がアメリアに聞かれてしまったわけなのだが。


「それと、足手まといってことも気にしすぎよ。あのレベルの相手に何もできないのはしょうがないわ。君はまだ黒翼や魔装武器を使えない」


「俺が強くなるためには、それを使えるようにならなきゃ始まらないってことですよね」


「正解。だから強くなるためには、まず魔人の戦闘の基礎を学ばなきゃならない」


 アメリカの背中を追って長い階段を下りた先に、一階と同じくらいの長さの廊下と左右三つずつ、合計六つのドアが現れる。

 この階より下に続く階段は無かった。

 つまり、ここがアメリアの話していた六階の訓練場という場所だ。


 アメリアは手前右側のドアに入っていき、俺も続いてその部屋に入ると、真っ白な何もない空間が広がっていた。

 入口のドアが面する壁にはいくつかの武器が掛けられているが、それには目もくれずにアメリアは部屋の奥に歩いていく。


「さっき任務の成果を報告した時、私は隊長から新しい任務を命令されたわ。内容はギルバート君を強くしろ」

 

「それが任務なんですか……?」


 壁際まで歩いてから振り向いて俺と対面する形となったアメリアが頷く。


「立派な任務よ。ギルバート君はもう革命軍ホワイトレべリオンの一員の魔人。今後、敵と戦う戦力に

なる必要があるわ」

 

 アメリアが背中に装備した鞘から長刀――魔装武器月影を抜刀して両手で構える。

 鋭く光る剣先が俺の眉間を真っ直ぐ捉えている。


「習うより慣れよ、ってね。戦いを通してわからないこと、知りたいことがあったら素直に聞くこと。これから数日、数週間、もしかしたら数か月。君が十分に強くなるまで、アメリアお姉さんとみっちり実践練習よ。覚悟しなさい」


 薄く微笑みながら、右目を閉じてパッチリとウインクを決めたアメリアは腰を低く落とし、右足を下げ、突進して斬りかかる構えを取る。

 フレイム村の対ジュリアーノ戦でアメリアが何度も繰り出した動き。

 もう既に実践練習は始まっているらしい。

 既にアメリアの顔は任務中と同じ真剣な表情に切り替わっている。


 相手は十傑ジュリアーノをも倒してのけた魔人アメリア。

 俺より遥かに強く、適わない相手なのはわかっている。

 だからと言って最初から勝つのを諦める理由にはならない。

 

 二度とフレイム村での不甲斐なさと無力さを感じないように。

 誰かを脅威から守れるだけの力を手に入れるために。

 魔物によって人間を滅ぼそうとする魔王ギレオンの野望を阻止するために。


 この修行を通して俺は強くなる。


 覚悟を決めて、アメリアとの闘いに全神経を集中させる。

 愛剣を両手で前に構え、迎え撃つ体勢を取る。

 深く息を吸い、吐き出して呼吸を整え――


「いきます!」


 気合を入れる意味もあった攻撃宣言と共に、十メートル先にいたアメリアが文字通り一瞬で俺の前に現れた。


第十七話を最後までお読みくださった皆様、ありがとうございます。


ギルバートの修行編スタートです。

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