第十六話 強くなりたい
フレイル村から拠点戻った後、アメリアに部屋で待機しているように伝えられ、俺は一番最初に目覚めた地下一階の突き当り左の部屋に入る。
ここが今日から俺の部屋になるらしい。
トイトピー村の家よりもかなり広く、設備も最先端で、いざ自分の部屋となると使い余す気がする。
ドアの近くに剣を立て掛け、広々とした空間の端っこに置かれているベッドに飛び込む。
「俺はまだ弱いな……」
どこか魔人という存在になったことで強くなった気がしていた。
突如現れた十傑に対して、アメリアと肩を並べて戦おうとしていた。
しかし、現実は三度アメリアに助けられ、何もできずに次元の違う魔人同士の戦いを安全圏から見つめていただけだった。
あの緊迫した激しい戦いの中でも、恐らくアメリアは俺に色々なことを教えようとしていた。
無力で邪魔にしかならない俺に、アメリアは何度も危険を伝えながら、一度も逃げろとは言わなかった。
ジュリアーノに突然攻撃を仕掛けた時も、俺が戦闘に巻き込まれそうになった瞬間だった。
まるで、この戦闘から学びなさい、とでも言うかのように。
「強くなりたい」
声に出すつもりはなかったが、つい口から零れ落ちた言葉。
「なれるよ」
誰も居ないはずの部屋から返事がして振り返ると、任務中と同じ服装のアメリアがドアを開いて立っていた。
「剣を持ってついてきて」
それだけ言うと直ぐにドアを閉めて廊下に消えた。
一度、アメリアのように強くなれるか、と質問したことがある。
その答えは魔人になったことだと思っていた。
魔力以外の攻撃を受け付けず、不老不死の存在になって強くなったと。
ただ、今日の戦いを見てわかった。
相手も同じく魔人なのだ。
俺はまだスタートラインに立ったに過ぎない。
数十メートルを一瞬で進むことなんてできないし、黒翼も使えなければ、グングニルや月影のような凄い武器も扱えない。
彼らと同じ舞台に立つならば。
今度こそ誰かを守りたいと願うならば。
魔王ギレオンを倒し、王国の思想を止めて、世界に平穏をもたらそうとするならば。
俺は強くならなけばならない。
愛剣を力強く握り、勢いよくドアを開ける。
廊下をゆっくりと歩くアメリアが俺に振り向き、柔らかく笑みを浮かべた。
「なれるよ。君なら強くなれる」
ローブを翻して前に向き直り、階段を下っていくアメリアの背中を追いかけて俺は廊下を走った。
第十六話を最後までお読みくださった皆様、ありがとうございます。
閑話休題ってやつです。
次回からまたアクションが始まります。
文字数このくらいでよかったら、毎日3話くらいできそう()




