第九話 英雄ギレオンの死
魔物によるトイトピー村襲撃の跡、調査と後処理を担当しているヴァレンシア王国兵の観察。それがアメリアと俺が隊長に課せられた任務らしい。
ヴァレンシア王国は直轄領の他に、十年前の戦争で勝利して得た広大な領土を自治領して管理しており、トイトピー村もその一つだった。
町や村としてほとんど自由に活動できるが、あくまで主権は王国にある。村の危機に救援を得ようと王国へ使者を送るのも、自治領である村が滅びた後、王国が調査団を送るのも、この関係故のことだ。
俺を引っ張って空を飛ぶアメリア曰く、トイトピー村だけではなく、王国自治領の小さい村が魔物に襲われる事案が最近多発しているらしい。トイトピー村も含めて四件、今後も同じようなことが続く見込みだ。
村を襲った魔物は派遣された王国兵によって倒されるのだが、その対応があまりにも早いことを王国にスパイとして送り込んでいるホワイトレべリオンのメンバーから聞いた隊長は一つの疑惑が頭に浮かんだ。今回の事件は、ヴァレンシア王国が絡んでいるのではないかと。
ヴァレンシア王国によって区分された範囲内の村、街で一週間に一度代表者による近況報告と地区内の取り決めに関する会議が義務付けられ、会議の内容は地区内で一番大きい自治領に駐屯している王国軍によって本国に伝えられる。
無断で欠席した場合はその代表者の自治領に欠席理由の確認の使者が送られ、欠席理由が認められなければ相応の罰償が、その自治領に何か起こっていた場合は会議の内容と共に一日後、王国に報告される。
この仕組みによって王国は自治領の維持を行っているのだが、それは同時に最長で八日間も自治領の状況が伝わらないということだ。
それなのに、村を襲撃した魔物は事件発生から一日以内に掃討されている。
駐屯している王国軍が地区内をいくら熱心にパトロールしても、そんな早業はできない。
「王国は前から魔物を兵として戦争に送る黒い計画が噂されているわ。全ての始まりは十年前。当時、世界を二分して対立していたヴァレンシア王国とバジャリアード王国の大戦。通称、十年戦争。十傑と呼ばれる英雄の活躍でヴァレンシア王国が勝利し、永遠の繁栄と栄光を手にした戦い」
目的地が近いのか、徐々にスピードを緩めるアメリアから聞きなじみのある単語がでる。
俺の父さんと共に十年戦争に従軍したタロとフートが怪我をしながらも村に帰り、俺たちに十傑の話を何度も聞かせてくれたから知っている。
タロは王国一の弓使いで、一度狙われた敵は一矢で脳天を貫かれるという恐ろしい制度を誇る女性、クレアの部隊に従軍。
フートは鉄製の拳鍔のみで敵陣に殴り込み、相手の攻撃を躱しては殴り、弾いては殴り、傷を負っても気にせず殴り続けて敵を撲殺する戦闘狂の男、バッカスの部隊に従軍した。
どちらも十傑に名を連ね、他にもこの二人と同等かそれ以上の強さの人が八人もいるらしい。
二人から聞いたクレアとバッカスの話はどれも信じられないような強さで、盛って話していると思いながらも、密かにあこがれていた存在だ。
「大量の戦死者が生まれ、同時に大量の魔力も放出されたわ。そこで誕生したのが最初の魔人、魔王ギレオン。十傑の一人、そしてその中でも桁違いの強さを誇る二人のうちの一人よ」
「ギレオンが十傑の一人?」
頭上のアメリアが前を向いたまま頷く。
「数々の戦いを勝利に導いてきた英雄は無自覚ながら魔力開放の経験も何度も積み上げてきた。そこに数十万の死体から溢れ出る魔力。魔人になる条件は完璧に整っていたわ」
「でも、俺が聞いた話では十傑は誰も死んでません。ましてや英雄の中で最強の人が死ぬなんてことは無いんじゃ……」
戦争を勝利に導いた英雄十人は返り血で全身真っ赤に染まりながらも十年戦争を生き残り、王国から十傑という栄誉の称号を与えられた。
これがタロとフートから幾度と聞かされた十年戦争の話しのオチだ。
アメリアは今度は首を横に振る。
「ギレオンは十年戦争中に殺されたわ。もっとも信頼していた十傑最強の双璧を成す男、ウィルストン・マイヤーによって」
第九話を最後までお読みくださった皆様、ありがとうございます。
今回の話、何か気づきませんでした?
そう、圧倒的短さ。圧倒的な短さなのです。
文字数にして、なんと二千文字弱しかありません。
今まで平均5000字の一話だけ3000字強というスタイルでやっていたのが、ここにきてこの短さ。
序盤は説明があるのでどうしても長くなりましたが、今後はこのくらいの、と言っても2000字強くらいの文字数で投稿していきます。
物語がポンポンと進むので、楽しんで貰えるとうれしいです。




