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逃げ出さない覚悟を。
63.涙と銃弾
「彼がスパイならば殺せ」
殺し屋としてその依頼を受けたのが半年前。
「綺麗な瞳だね」
標的は、クサい台詞ばかり吐くお人好しだった。
「僕は君の味方だよ」
そう言う彼は、依頼主にとっては敵だった。
眠る彼を前に銃を握り締める。目から零れた露が彼の額に落ちて――銃弾は、彼ではなく私の額を貫いた。
64.怒ったのは、君のことが大好きだから
「一人暮らししようかな」
告げた瞬間、彼の顔が強張った。
「反対」
声色も不機嫌なものになる。
「金かかるし、体調崩したら大変だし」
そんなに私は頼りなく思われているのか、少々悲しくなった。けど
「それに、実家出るなら俺と一緒になれば良いじゃん」
それを聞いて、悲しさは嬉しさに早変わりした。




