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諦めきれない
3.欲しいと思った時にはもう遅い
昔はただ鬱陶しいだけだったのに、最近になって何故か子どもが可愛く見えるようになってきた。
ちっちゃな身体を精一杯動かしてはしゃぐ姿に、自分にはない眩しさを感じる。
「子ども、欲しいかもなぁ」
独りごちたその声は空気中に溶けてゆく。
昨年子宮を失ってしまった私に、その資格はないというのに。
4.これからよろしく、大人の私
着慣れない振袖に身を包み、冷え渡った外の世界に足を踏み出す。いつもと同じ朝の筈が、何でか別のものに見えてきた。
「成人おめでとう」
久々に会う友と共に、懐かしい人からお祝いの言葉を貰う。待ち焦がれたその日は、私の2つ目の誕生日のように感じられた。
大人になった私の人生の、始まりである。