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結局、
29.あの世のとある恋人の話
「海に鎮めた心は何処へ逝ったのか」
彼女の呟きの真意がわからず、首を傾げつつも答える。
「海に鎮めたなら、海?」
「その筈だったのにねぇ」
やれやれ、肩を竦めた彼女は突然僕に抱きついてきた。
「君が来たら、心もあの世逝きでしょ」
彼女の言う心が恋心だと気づいた僕は、彼女の背中に腕を回した。
30.告白のメロディ
昔から私は話すのが下手だった。自分の想いを伝えようとしても言葉に詰まる。
けれどその反動か、ピアノで自分の想いを伝えるのが得意だった。自分の気持ちとぴったり重なるメロディを奏でるのが好きだった。
『好きです』
伝えたい想いは、彼の心へ届いただろうか。
彼は私の恋歌を聞いて優しく微笑んだ。