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道を戻ってきたり
21.鬼の理解者
「鬼にだって良い奴いると思うんだよね」
彼女は唐突に言った。
「鬼だとしても、まずは相手を知ることから始めなきゃいけないと思うの」
節分の日に、初めて彼女に話しかけられた。
クラスで1番人気者の彼女と、クラスで1番惨めな僕。彼女は僕の初めての理解者だった。
彼女のおかげで僕は、人間になれた。
22.嫌いになりたいのに嫌いになれない
少し前に部署移動した先輩と久々に会った。
元彼の知り合いでもある彼は「あいつと連絡とってるの?」と、私にとってはタブーの質問をしてくる。
「取ってないですよ」
「俺は最近電話したよ」
それがなんだ。聞きたくない。
「元気でしたか」
「うん」
それを聞いて安堵してしまった自分が、心底嫌になった。